手の届く高さに宇宙樹の腐り

ひにん。
って、赤えびみたい
生きたくて、
急に浅瀬を後ろ跳びする

おっぱいに酢をふりかけて
おっぱいが酸っぱい

（何を信じればいい？）

舷窓の強化硝子に守られて
留守にした子宮を思い出す

兄嫁の自転車借りて走る故郷

俺は光よりも速く産道を泳いで
サリンの朝から逃げてきたんだ

半熟のくしゃみのような射精感
のような爆撃（まだ続けるの？）

デイモンの左胸には
デイモンのバッジ
あなたも悪魔なんだよ

犯す気でいる刑法を読む　じっと

ふわふわのペニスにつめた
わたが飛ぶ
（あ、おれも飛ぶ）

台風が来る

父親が私をあなたと呼ぶ度に
桃をサラダに入れるなどした

ふかふかになった林檎を砂糖煮に
したあと祖母は怖いと言った

信じるとは、
想像力を働かせないこと
揺れるイオンの３階

持っている指輪を全部はめてみる
夜を奇妙にやり過ごしている

詩はいつもひとりで生まれてきた
ような顔をするから油断できない

でも無職やからと友は会うたびに
言う会うたびに言う　ねぇ桜

うっすらとした死にたさを打ち明
けてもらった夜にはじける荷物

冷たさをどうして青と思うのか
高額当せんのせんはひらがな

間違った話を訂正せずにいる
着衣水泳みたいな生き方

鈴虫を静かに潰すようにして
きみは美大をやめると言った

斧を振るねばつく斧を振る

月光に開くピアノの翼

りんごの皮細く剥きつつ自死の話

人は風に朽ちゆく
時々柘榴をかじって

抗うつ剤の白さ眠くて白鳥来

雨に冷えゆく拡声器

地下室の羽化する兄へ放る葡萄

こんぺいとう
水に溶かせば虹の匂い

手の影を生む栞を抜くために

ピアノさぼった僕を
殴る母
ねぎのにおいがした

水掻きは持ってない
けど、泳げるよ
夕日が降るちょっと前のまちを

ひとつ、欲しい
君をつくる為の部品を
君が持て余しているなら

母さんは、可愛かったら見る
僕を。

けんけんぱで動ける場所が
チョークで彩った僕たちの
世界だった

熱のある母さんのため買ってきた
ばにらあいすをゆるりとすくう

豆を投げパパを返せと
泣いていた

幼いままじゃなくて、よかった。

いわしぐも五つの頃はやさしくて

春が来る訳じゃない
散るばんなの

蝉がなき　本がつぶれ
雪がきえてしまって

オリオンへ向かって獣の足跡

大人は大変そう、と
ゾウが鳴く
子供も大変だよ
蟻を靴で擦り潰したり、とか

雨、とだけ返信が来て
胸底の
小さな街に雨が降りだす

まだ誰も彼もが
生きているような気のする
午後の葉桜の前

戦前と
いつか呼ばれるかもしれぬ日々に
アイスクリーム買い足す

光には光の言葉
木洩れ日が聞きとれなくて
人は幸せ

両腕が交差するとき
鍵盤の上にわずかに月は傾く

ひらがなでしゃべれば
ばらばら散らばって
嘘ってゼリービーンズみたい

白砂糖に舌は痺れてそののちを
淡くさびしくなる羊雲

二人ごと燃やしてほしい
手すりから身を乗り出せば
夕日が近い

月の橋わたれば影がすべりゆく
運転席のしずかな肩を

バックミラーを抜け出したくて
少しずつ
冬夜の後部座席に沈む

悲しみが染み付いている家にある
ペットボトルのボウリング場

戦前もあと何回か来るんだろう
今日も学食の米は硬い

どちらでもないので
いじめはありません

神様はあんま前髪作んない

この街でピースするのは久しぶり

家系図の二回戦には進みたい
欲を言えばいつかの決勝に

ご自由に持ち帰っては捨てている

枯れ葉さえ踏まずに歩く優しさが
いつかあなたを踏み潰すかも

平日の
わたしはひとり
これも雪？

爆発の中ほどまでお進みください
君が始めた戦いだろう

遺伝子の海辺
いなくなったあと
寂しくないようしおりを投げる

天国じゃみんな、名前を忘れてて
さいごのごはんの献立で呼ぶ

脈絡もないよ脈もないんだし
葬式できみの脈をたどった

割れそうで
わたくしすごく幸せで
まだきみの前ですこし踊りたい

こもれびに
殺されるようなしあわせを 
冬の図書室で噛みしめて泣く

比喩のため
つれてゆかれるカメレオン

秒針の
かち と かち のくうげきで
からだがたまに浮きそうになる

夏は夜
カスタードまぜくるときにしか
みせないきみのやわな加虐性

ドリーム・キャッチャー 
祈るひとびとの隙間からの、
ひかりの骨格

しゃけフレーク 振り終えて
さくらは瞼のうらで 
つぎの春まで

何度目の春風を咬む
鮫の歯のように職員室は変わって

ずくずくだよ、パジャマ
わたしが言うはずの言葉を
花に奪われてから

制服に翼かくして
校庭の記憶を辿れば
いつも俯瞰図

ボロネーゼ食べさせあって
学友の白昼堂々つくるふしだら

過去形で未来を問われ
もう叶わない夢があることだけ
わかる

フエラムネ鳴らすかたちで
口づけをするから走ってこいよ
純心

中古書のラインマーカー掠れゆき
最後の落雷はひかりだけ

保冷剤首に巻きつけ駅までは
ショートケーキのつもりで歩く

Summerの筆記体は簡単
きみの気がすむまで
波を書き足せばいい

新刊を帯のまま貸す
こんなにも
誰かを信じる朝が来ること

名作はあなたと観ずとも名作で
海はあなたが泣いたから海

僕たちの時価総額が落ちていく
優しい先輩ばかりの国で

月までの距離を教えて
Alexaに問えば
「心中をお考えですか？」

Wi-Fiは
防空壕にもありますか
有事といえど歯車なので

信号が変わるのを待つ僕たちの
待つこと以外は異なる人生

売春の春とか梅毒の梅とか
時々季語を無駄使いして

少子化を止めたい街で、
ひび割れた唇たちをもてあそぶ雪

黙祷さえ、倍速にした月曜日

雲一つないとあなたが笑うから
そっと視野から外した筋雲

君にだけ壊れるくらい課税して
さよなら僕の総理大臣

ペットロスで全部説明できている

天気雨の一粒呑めば
さやさやと
光の風鈴めくのどちんこ

バスの窓は
きゅるきゅると鳴く
仔イルカの記憶を
手放せないでいるの

子音ばっかり
産めないひとの背を抱けば
「はと」も解けて
「あお」と棲むまち

月球の光の子どもを受け入れる
君のやさしい鼻母音のなか

浴槽のなかで栓を抜いたから
浴槽のなかで座礁を始めるわたし

シリカゲル
朝凪のなか揺らめいて
夏に仕えることになってる

振りかぶる瞬間
君は海になり
バレーボールの月を捉える

目が見えなくても
光を撫でられる
体がなくても
風を想える

ぽーんぷゆ
めってめけいてめけもれば
うたは
あなたによまれているよ

五月の絵馬に鈴鳴っていて嬉しい

鬱血させてみる六月のくすりゆび

七月の神が難産　湯を沸かす

原っぱを走る端から八月さ

踊るとき鳴る床九月なのでしょう

十月の天使につむじ踏まれたわ

夢くらい十一月の長い犬

ストローにもうない十二月を吸う

一月の羊一頭ずつ食べる

二階から目薬二月からやる気

桜の実都に水路の広がって

段ボールつぶした匂い春の夜

シーグラス打ちつけられていて
春星

夏が来て星に価値ある星に住む

麦茶飲む
チェキが写真を吐くあいだ

ラムネのむ
神がよすがとなるように

小鳥くる
ハンバーガーショップのあかり

ヘアオイルに髪は包まれ冬林檎

敬礼をしてよ等しく凍蝶へ

冴返るティーカップに爪あたる音

自治会の会長による獅子舞を
見るという時間の使い方

おとなしく蛍の下につきましょう

具の遠いおにぎりの具に辿りつく

梟のおともだちならしょうがない

アリバイがあった花から帰らせる

鼓笛隊だから両手で食べる雪

焦っても肺がみどりになるだけよ

両ひざにルビをふりたくなる寒さ

わたくしが木魚であれば埒は明く

胎内にいちまい濡れるあぶらあげ

雪が降る
楷書のように

雪の原血液型を教えあう

冬菫怒ってくれる人が好き

耳朶の産毛のように石鹸玉

連絡通路の壁が真っ白春の風邪

蝶の昼さりさりさりと砂時計

吊るし雛から川の音してきてる

春光の中に鏡が一つ足りない

叫ぶ呼気飲み込んだから蝸牛

猫背なら動かせるかも秋の虹

転校をくりかえしても猫の恋

ざらめが星屑のようだときみが言
い冬銀河

甘たるい逢瀬のあとの木は裸

十二月二人と縁を切って朝

波の華きみの指輪を埋めて踏む

冬の水じつは濁っていたら良い

冬ざれか手を見るだけにして帰る

皿一つだけ洗っている冬の暮

女のみ肌を失う冬の星

雪中花ほど暗くない繁華街

よざくらの発光
じょじょに淡くなり
きみの眼窩のみずぎわを　押す

ほんだなの奥
から
ばにらの匂いの
月　をとりだす

ばんそうこう
剥がしきれずに夜光虫
など
をあなたと見ていたいだけ

かなしみは
いつも
ほほえみながら来る

しちゅーぱんの
ように
籠もったやさしさで
祖母のちいさな背を拭いている

にゃふ、にゃふと
ふたつ咳き込む友の手に
あぶらつやめくゲルニカの模写

すいれんの閉じる
に併せ
ねむる祖母の
まぶたに溜まる月光のあお

自傷行為
として
こおりを噛むときの
日焼けしてゆくセーラーの襟

じだんだを
すすきのように受け流す
母の　ほっきょくぐまのまなざし

ねこだけの惑星があり沈丁花