今回の命じゃ会えないみたいだね 交わるばかりが運命じゃない
何も言わなくても良いよ ただ、 次の駅に着くまで横で寝ていて
ブレ切った鳥の写真を見て君は 「躍動感があるね」と笑う
太陽が「また明日ね」と 手を振りに来る西向きの 僕の部屋には
死にたいね できれば誰にも知られずに 風が吹き消す線香花火
春行きの切符のようで チューリップの球根一つ買う 十二月
卵割りますか命が出てきます 当たりは命が二個ありますよ
純粋な愛なんてものありますか 愛は混合物じゃないですか
許されていたのは僕の方だった 頬の産毛をさりさり撫でる
ファミレスの客待ち名簿に いつもとは違う名前を書く旅先で
天の川に宛名を書かずに封をした 手紙をそっと預けて帰る
もし今日の午後に ゴジラが来たとして 私は踏まれて死ぬのだろうね
ベランダに吊るしっぱなしの 洗濯バサミのように パチンと終わる
日が暮れるまでの少しの間だけ 父の背丈を越して歩いた
火をつける時に吸い込む なんてこと知らずに煙草を 口に咥えた
めでたしで終わらぬ話を 逆再生して夢だった事にしておく
人間の倍の数ある目が全部 こちらを見ているような気がする
煮詰めすぎた砂糖みたいな 悪夢なら獏の子は 笑ってくれるだろうか
今日もまた、 同じものばかり見ていたね 夕日が私の網膜を焼く
もしうっかり落としても 気付かないくらい 一番小さな星をください
この壁はずっと前から凹んでる 誰かの心の形のままで
曖昧に微笑んでおく 缶ビールなんかの肴に なってたまるか
いつまでも私の心を素手で 触れると思っている母さんは
切りすぎた爪に ヤスリをかけないで ザリぞり 胸の奥を探って
君と行く地獄にはきっと敵わない 大阪や千葉のテーマパークも
全部取り除いた つもりでいたけれど牛乳の膜は 口に残って
待ち針のまるい頭に日がともる
砂浜に指を一本差し込んで 気づけば地球の裏側にいる
洗い立て淡いブルーのセーターを 全部 ほどいて 毛糸に戻す
今日庭にイチゴの苗を植えたから 次の春まで生きねばならぬ
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