ねえ神様どうしてこんなに泥状の お祈りだけがのこるのでしょうか
だいすきよきみが ひとであるかぎり
ぺしゃんこに潰してしまった きみがまだ今でもポケットの 奥にあること
光ってよ 豆電球が見える距離で ひとりごとだけ揺れてる 「みっけ」
会いたいと 打ち込むたびに飛んでいく 真白い鳩のちいさくなく声
満月が 首都高速の金網に スライスされて零れる四月
シーソーでぼくら 正しさを確認しようよ
階段を一段飛ばせば 踊り場のプリズムきらり 夏は近いぜ
やさしさを 取りこぼさぬよう スコップで砂場に水を運び続ける
不器用な風のふりしていまいくね
落ちかけのぼたんみたいな信号機
たったひとり 投げ出され空中分解する 死にたくなるってそういうことか
レールにて ちょこんと正座するぼくの スーツケースは一際かわいい
忘れ形見 のふりをしている プラの櫛
四畳半 白百合を敷き詰めてみる
見せかけの春は砕けて琥珀糖
つみほろ星 いちばんあの世に近い熱
汽水域 あなたにひととき、会える場所
永遠の代わりに ほつれゆくマフラー
蛍光灯ほろりほろりと泣いている
169センチ62キログラム 実物大の孤独
体温をぺりりと剥くわ春のゆび
蝶として生まれた光があるという
「信号機、 揺らいではだめ 揺らいではだめ」
砂浜もくしゅりくしゅりと 泣くのでしょう 夜に マッチで火を放つ時
不知火は モールス信号らしいのです 一千年ほど・点滅中・です
博物館 ぬるん、と揺らいだ骨の影 もうないはずのくじらの瞳
さくらを頬張る鬼に抱きつく
シャーレにてぼぉと 震えるぼくの星
どうしても内から零せぬ泥があり 針を通すかケモノは ぼくらは
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