美しく死ねるのもまた特権と 思う無惨に轢かれている虫
逆上がりできた一人の公園で 迷子の町内放送を聴く
古戦場跡に子どもの傘がある 小さいおてての地蔵を守って
もう三月後には ドナドナされている カモが可愛い 青い田園
あの高い尾根から徒歩圏内の地で 黄色い星が降ったら教えて
打ち上げた花火が消える少し前 匂う空気の乾いた冷め方
空を見て「綺麗」と言った唇で 他の子にまで手を掛けないで
枯れ果てた荒野を行くの ユニクロの 緑のボーダーTシャツを着て
カンタンな方でいいよと気を遣う 学級委員の髙見澤くん
趣味特技 ほんとのことは書けないで 浮かぶ答えは「写経」の二文字
雨の漏る貧乏高校体育館 水の染みはもう消せないハートに
曇りから雨に変わるの聖五月 その瞬間に香る芍薬
劣情に塗れたあんたの見た夢で 名画の胸はどうなってたの?
つばくらめ 荒野に 目医者は開いてるか
白玉に練り込んだ抹茶粉が 薄緑になるのを見守る昼
瞼閉じ なにかがおもいだせなくて 優しい雲を眺めて眠る
英単語帳の使用感で競った夏 学年一位の青木は未使用
方舟に乗って世界の果てへ行き それでもきっとおにぎり食べたい
マーブルに焼けたケーキは妹の 一言で呪いの紋様になる
地下一階 閉架書庫にて 死んでいた ヤモリを水辺の石に載せとく
君になら罵倒されても構わない そんな思いを小瓶に詰めとく
都会から来た子が買った 富士の水 夏の濡れた岩の味がした
ばら撒いたはずの 思い出 ゆっくりと 五月雨式に蘇ってる
他愛ないお喋りだけが好きだった 風呂の隙間に風が鳴るとき
こうすれば空が明るく見えますよ 青い絵の具を爆弾に混ぜ
浅い夢だから忘れないと誓う きみが作ったすみれの指環に
砲撃を受けた街でのインタビュー 私はお米が上手く炊けない
越して来て 地方ニュースを 見て笑い 風呂に浮かべる小さなあひる
自炊をさせる気のない極狭の キッチン台でネギ刻む夜
午後七時 本初子午線飛び越えて LINEで送る自慢たらしく
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