八月の日差しに焼かれて無い方の 腕のカーブは子をいだくため
夜九時に光り輝く人がいて 犬への愛だと気づく八月
美しい青春だったことにして 連絡網だけ残すアルバム
盆明ける 鯨が魚でないように きみも人ではないんだったね
まん丸でのろまな牛になりそうな 茄子ばかりが売れてゆく午後
漣を独りで聴くのが怖いから なんでもはい、と応えています
微睡みの中で金魚は泳ぎ出し 時報と共に死んでしまった
鮮やかなカルトの村のなまたまご
今ゴジラ和光のビルを壊したぜ 待ってうどんがすぐ茹だるから
夏用の薄い喪服はすぐ乾き ひかたに揺れて次を待つのさ
さよならの四文字 予測変換を 使わずに打つ確実に打つ
「の」が並ぶ ロールケーキの整列を 眺めるような夏でありたい
この指に、 ほくろと共存できるよな、 優しい真珠を選んでください
あのやんちゃ坊主は クラスの避雷針
特売のたまごの殻のそばかすと 心を通わせたくて雷雨
美しい骨を遺して死にたくて 花の香りのミルクを選ぶ
ピアニカの ドレミのシール剥がされて こどもは少女になろうとしている
信じ合うことが自然と出来ていた 放課後二人のじゃんけん戦争
眠るほど暇なところに五月雨を、 集めてほしい僕のためだけ
「先生」と呼ばれて 返事をするときの 時給900円のうそつき
眠れない夜に齧った白桃の 罪が漂う六畳の部屋
オパールの遊色効果が映し出す 曖昧なまま終わらせる愛
ティッシュ越し潰した虫の感触が 指紋を侵してゆくような午後
履歴書の広い余白にうちの犬、 犬でも貼っておきたいけれど
抱きしめて私の型が取れるほど
佳作にも 選ばれなかった書き初めが 飾られ続ける床の間の夏
流されるハンドソープの残香で 鬼籍の叔母をふと思い出す
魂の眠るところはどこですか 案外目のよな気がしませんか
魅せられて事務所で見かけた その文字の 癖を深夜に真似てから寝る
溶け出した スープの泡をくっつけて ハートにするのがぼくのよあそび
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