タクシーが3台続けて 止まらぬ夜にふと 透明人間になりたい
過去問題集をなぞっているよう サラリーマンの三十二年目
夕焼けの向こうから聞こえる 迷子の老人の名前と特徴と年齢
吊り橋の途中で君は振り返り 隠した事実を小声で告げる
熱出して踏み絵のように 聞かれている けさは何度か今は何度か
誰もが満開を待つ チューリップの花壇を蜂が偵察
水道が凍って初めてわかる 水の重さとしなやかさ
隣人が何をする人か知らず 迷子の老人のアナウンス響く
霞の向こうに消えていく 竹馬の子が 鬼にさらわれるまでの傍観
こぼした涙がシートに染みて 老舗の映画館がまた閉じる
腐葉土のようにたまる不満を 朝抱えタイムカードを強く押す
就職情報誌を開いて来世の仕事を 探しほくそ笑んでいる午後
冬空でばったり会った友人 と銀河の旅を語り合う
人よりも高いところの空気吸う 麒麟は知ってる地上の愚か
ラジオから飛び込む雑音みたいに 聞きにくい上司の挨拶
叫んでも許されるくらい 広がった秋夕焼けに叫んでる
あの年に流行った曲を全部聴く つらく楽しい結婚記念日
夜中じゅうトイレに灯り つけておき孤独じゃないと 言い聞かせてみる
寒いとき被ればホッとするような パーカーのフードみたいな君
懐かしく故郷のこと思い出す 少しこぼした灯油の香り
雑草を枯葉剤で枯らすのを やめた日少し子供にかえる
自治会の掃除でもらう手袋が 少しお洒落で得をした朝
マイナンバーカードに 保険証がつき 私という名五グラム重い
飛んでいく蒲公英の種追いかけて 待ち合わせ場所なかなか着かず
気に入った鉛筆の芯5ミリ減る 何を書いたか芯は知ってる
北風に全力込めてペダル踏む 五感を揺らす地球の自転
ホチキスの針がなくなる瞬間の 空振りみたい君のバイバイ
読みかけの詩集がふいに 気になるね資格試験の前日の夜
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