ああ夜よ りんりんと降るこの雨よ 残響のように泣かないでくれ
永遠に来ないあしたを待っている さみしいごっこをしているぼくら
くしゃくしゃと洗うレタスの 音で朝
進路指導室ですんすん聞く説教
噴水が急にとまって 僕たちは視線の先を定められない
あたらしく買った冷蔵庫のひかり まぶしい朝の越して来た街
目を閉じて春を感じる 約束は助走をとったことばの弾力
世界のどこかで戦争がはじまって それでも僕は月曜がきらい
ぷるぷるとゆれる木洩れ日 噂ではあなたが住んでいる街は春
惜しみなく過ぎる毎日 子どもらは 悲しいときは躊躇せず泣く
トラックの荷台まるごと 薔薇だった 雨の首都高速の土曜日
そしてまた結局、春がやってきて すべてを持っていくんだろうな
みずうみの底にある図書館に行く ひかる言葉の天使が住む場所
遮断機が降りる電車が通過する まばゆいくらい不機嫌な空
てのひらのくぼみにのせた 明るさで 夜からこぼれたたましいを照らす
街路樹に群れるムクドリ きっと今 僕の知らない街で泣く君
影のない言葉を話す人がいて 夜を一枚剥がしたような
もう誰もいないリビング 孤独とは コーヒーカップに注がれる夜
おひさまが混じった土に忍び寄る 春のスパイに出くわした午後
ひとひとり座れるだけの悲しみを 抱えてすわる人のいるバス
はみ出してしまった青が ぎこちなく黄色に混ざるみたいな 告白
雨の日のバス停留所 好きな歌のサビだけ何度も 口ずさむ朝
不登校の君が貸出し欄にいる ガルシア・マルクス 「百年の孤独」
下校時に流れるG線上のアリアに 僕たちは歌詞をつけてた
糸へんにどんな字書けば 美しくなるとあなたは 思うでしょうか
ふうわりと君の育てた花が咲く 届かなかった手紙みたいに
割り算の寂しさに気づく女子高生
書き順を間違えている冬の海
たましいの破れ目に もう一枚の布をあてながら 生きている
壮絶な過去を抱えて眠ってる 図書館の隅の歴史コーナー
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