博物館で三ツ矢サイダーを 飲んだ後とても未完成な息をはく
ひまわりが父の背丈になっていて 水をあげたら抱きしめてきた
なんですぐ花の話をするの、って 言われてずうっと泣けなかった日
もう何も言うことなくて海のほう ばかり見ていた 海ではなく
これ以上降られてもってくらい雨 今日の生き様が出汁にとられる
落ちそうで落ちない花びらの逡巡 スカート丈に少しくすぐる
ライターが映し出すわずかな海に 進路希望の用紙を放った
生きたくて生きているみたいな顔 でオレンジジュース渡してくれる
雨っすね 雨くらい降る星にいて あなたは雨をじっと見ている
先生は何かを言って教室を 砂にしてから授業はじめる
この人に何かを思われるくらい なら 箸を汚く持ち替える日々
意味ありますかと生徒に訊かれて る 意味の代わりに笑顔を見せる
救うとき同時に何かを見捨てると 知れば二月の風鈴が鳴る
停まるたび人はどんどん降りて いって取り残される 終点がない
告白ももんじゃをひっくり返す のも上手な君の泣き顔が見たい
打ち寄せるって波にしか使わない けど君の身体が打ち寄せてくる
俯けばこぼれる君の 痛くない 痛くないのに痛い弾丸
ねえ先輩若気の至りやりましょう そんなんだから嫌われるんだよ
振り切って渡った横断歩道には 桜が降っていて斜め読みする
書き留めたらそれっきりもう 思い出としてのかなしみ 君は、かなしみ
月曜が月曜であることの方が 大切だったころの紫陽花
たりない、と花弁みたいに笑う 君がふっとくずした体育座り
ともだちになりきれなくて触れる とき指にわずかにつける生唾
見渡してそれが海だとわかるまで てのひらの羽根みたいなふるえ
影に降る花を踏んだら影踏みが はじまって泡立つ夏の声
毒親を題材にした漫画には 俺をもじった主人公がいる
弟の宿題が散乱してる弟の部屋 なまあたたかい
水泳の授業のあとの国語では クラスのひとが少しあたらしい
交わされた言葉のひとつひとつが もうくぐもって割れそうな傘の中
あなたへの言葉を選ぶ瞬間の 木々のこすれるような心臓
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