シャボンだま 視力は二度と戻らない
水仙に触れるいつかのわたしたち
まわりみちまわりみちして薺食む
吸い込んでしまうおおきな冬の蝶
梨を切る一週間が滲んでく
どういたしましてと言えず秋の浜
静脈も動脈も信じられない 夢の深くで木犀揺する
寝静まる家で布団をかけ直し ひとひらひとひら枯れてゆくのは
雨音のするビル群はどこまでも 鮮明 両手を振って歩いた
かたちふち取ろうと耳を傾けて この身薄まり残る秒針
夏の夜に沈める長髪 次々と 友は社会に歩み出してく
夏風は拳をひらき撫であげる おとなしい子の肩甲骨を
先生の伸び伸びとした朗読を聞く 海中で見上げながら聴く
折り紙のような青葉にかこまれて 新築はさらさらさらと立ち
潮風がくぼんで過ぎて痙攣の ように木が揺れ るりいろのひる
春雨はとぎれとぎれにあきらかに うしろの森が近づいている
羊毛を思わす春の背に乗って あねからもらうまるいあまなつ
じっとする烏がよぎる 夕焼けがのびる脇から体温計ぬく
がいこつのような人らが歩いてく さくらの花は膨らみつづけ
真夜中に皿がジャキっと揺れ動く せかいをほぐす猫の曲線
ひとみから さくらのはなびらながしつつ えほんをとじる ただいま私
重たい水を 投げつけられているようだ ハチ公前でかかとを感じて
飛行機に乗ってるときの心臓が あおむらさきだかちんこちんだ
入道雲に 吸い込まれてしまいそうな 教室にいた 赤いうわばき
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