群衆を抜け秋風が影を生む
春風にトロンボーンを組み立てる
月冴える版画に梟の羽のびゆく
仲直りせず初雪を赤い靴
初空をつかもうとする肩車
子供らの声に起こされ雪明り
寿司というものあるらしく 蟹せつせつと思いつめる
乳液を手に温める星月夜
処方箋に雪ふりつもる精神科
言葉を失うサックスを吹くために
ぬるい水に赤い花びらが沈む
煎餅の箱をたゆませ独楽回る
水かつて玻璃象のこえ水の国
初雪は鯨の寝言筆掠れる
枯芝をトランペットの鳴る方へ
アボカドを種に沿い切る雪時雨
血痕は拭かれて黒く冬の駅
海に来て秋思の君がうんと言う
初雪 (初恋の温もりほどの モルモット)
カーテンは帆だ月光に膨らんで
鏡張りの部屋 戸を押せば万緑
雪のこえ開いたままの解剖図
靴のまま遠泳のこと話す
オリオン刷り終えプリンター停止
精神科のしろばらすこしきいろ
太陽の国に生まれて核を持つ
戦前の太鼓が街中に響く
親戚という奇妙な箱に初笑
巻貝に聴く 未生の 吾子の こえ
寒晴の少女コントラバス背負う
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