二月って甘露煮みたい 結露した車の窓につたう指先
友達の首から下とか下着とか 知っているけど知らない顔で
犬だった 頬に畳の痕をつけ 青い草原 ああ、水だった
きみの体内は銀河で満ちていて その星すべてきみの味方だ
自殺した人たちが見るNHK
海兵として死んだ祖父の戒名に 刻まれた「海」がこちらを見る
寒いからあたたかいこと知れまし た 半紙がちりと燃える夕べで
いとおしい猫がどんどん痩せてゆ く なでてもなでても痩せてゆく
実は私のあばら骨の一本は 昨年死んだ犬のものです
ああ、母は傷つきやすい人だった のかもしれない、この本棚は
ほほえんで手を振り別れ、 イヤホンを挿して戻る自分のA面
泣きたいよ、 6年前の江ノ島で、 眼鏡を曇らせた砂浜で
店長が話す相対性理論 おもてで誰かの鍵が落ちる
幼稚園だけにあります、 あかあおき みどりむらさきだいだいみどり
爪を切る天使
きみは体内でクラゲを飼っていて くもりの日には見せてくれたね
君の首すじの糖度を測ったら お墓と海とおんなじだった
夕闇の校庭で泣き叫んでた あいつの中で混ざるオレンジ
トラックが鳴らす巨大な鳴き声に さみしいひふのひとが群がる
毎日のささやかな絶望とかに 君の指紋がついてうれしい
コンタクトレンズについた指紋 まで見えるほどに近づいたひかり
君が着るTシャツの穴に飛び込み その川べりで魚を釣ろう
白い首が浮き出る学生服が 春の海辺で手錠を外す
君の名はクッキーアンドクリーム のとなりにとてもふさわしいこと
墓石に「v」だけ刻まれるきっと ペーストしたかったはずの何か
祖父のらくらくフォンの1番は まだ誰も消し方を知らない祖母
もう二度と動かない足首に天使 がねむる、安心したかおで
先に死んだら遺灰を撒く約束 を思い出して昼の歯みがき
生肉となった牛の目、ビー玉で あったらみどりだったのだろう
あの人に感傷なんてありません あるのはエビチリとか船です
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