バイクの音すとんと止んで寒桜
「次は終点」 皆いっせいに着膨れる
ビル街の青さが雨に溶け 私を描く
こんぺいとう 水に溶かせば虹の匂い
靴音はやがてモノクロ画の寒夜
手の影を生む栞を抜くために
生臭い空洞として星を見る
ヘルメット古代貝めくビル街冬
獣の血捨てられ秋の水の底
秒針は ちいさな 闇を 剥がす
歯の間の粒胡椒噛む鰤起し
虹を見た眼か 卵割れるを見た眼か
りんごの皮細く剥きつつ自死の話
にんにく切る 日々の残光切るように
雪の声シェパードの耳動く
枯山のシンバル 水として駆ける
牛の目の海光滅びやませ来る
月光浴びてうなじは白桃めく
初雪 死者を声から忘れる
賢治さん積み木遊びをやめられず
空で運指する 舞台袖は母体の暗さ
枯山中 赤いポストが立っていて 永遠を得た心臓である
ピアノさぼった僕を 殴る母 ねぎのにおいがした
万緑に鏡風邪の私が一人増えて
地下室の羽化する兄へ放る葡萄
壁剝がす月の形見の古代貝
夜の水族館 海月はピアノの音に溶ける
たこ焼のソースの残る皿や秋
砂漠の頭蓋骨に永久機関の記憶
君の青図に線を書き足す時計草
詩
俳句
川柳
短歌
アフォリズム
全種類