長押しで震えて消せる? この虚しさも
自転車の拍手喝采 置いてけぼりの 夏の夕暮れ
閉ざされた病院 ここにいるよ と ひかる みどりの水槽
空にした本棚 途方にくれて 雨音を聞く
ご機嫌な鼻歌 今日の料理の隠し味
カフェの窓際 束の間の観察者
階下で聞くいびき 切り落とした爪への執着
死ぬ際はこんな景色がいい と思った。桜の木の下での午睡。
洗濯機の水溜りに おはぎを泳がせたい彼岸
散らかった部屋 せっかちな時計 思考を諦める脳
触れないで わたしいま ルマンドよりも脆いから
ぶら下がる シャンデリア風な照明と 君への恋心
しずくのレンズで覗く 濁った恵方の空
弱火だからって安心してたら じっくり焦げていくんだよ 目玉焼きも私も
満月を 真っ赤に染めたい お年頃
冬の演奏会 担当楽器は霜ばしら
夜更かしの 口実でまわす 洗濯機
わたしたち 排水溝で繋がってるね
乾かしそびれた髪 いま 琥珀糖になる
あの人の マフラーになりたい 帰り道
憂鬱の煮こごりのような朝
助手席で 愚痴に頷く 親孝行
向こうが会いにきたのか こちらが会いに行ったのか そよ風のような懐かしさ
雲を操れる朝 マグカップに 嫉妬する
黄色いスカート 緑のズボン 鼻をつく匂い コマ送りの秋
サロンのトイレ 一番近所の異国
無秩序に増えてくスプーン 朝の喧騒
子が駆ける 秋風になって みたいとばかりに
思い出と 時代の終わりに こぼれる涙
祝杯の グラスに溶かす 麻酔薬
詩
俳句
川柳
短歌
アフォリズム
全種類
完全一致