しずくのレンズで覗く 濁った恵方の空
弱火だからって安心してたら じっくり焦げていくんだよ 目玉焼きも私も
満月を 真っ赤に染めたい お年頃
冬の演奏会 担当楽器は霜ばしら
夜更かしの 口実でまわす 洗濯機
わたしたち 排水溝で繋がってるね
乾かしそびれた髪 いま 琥珀糖になる
あの人の マフラーになりたい 帰り道
憂鬱の煮こごりのような朝
助手席で 愚痴に頷く 親孝行
向こうが会いにきたのか こちらが会いに行ったのか そよ風のような懐かしさ
雲を操れる朝 マグカップに 嫉妬する
黄色いスカート 緑のズボン 鼻をつく匂い コマ送りの秋
サロンのトイレ 一番近所の異国
無秩序に増えてくスプーン 朝の喧騒
子が駆ける 秋風になって みたいとばかりに
思い出と 時代の終わりに こぼれる涙
祝杯の グラスに溶かす 麻酔薬
夕暮れの路傍を照らす彼岸花 淋しいわたし どこへ誘う
コンロの火 白濁の水 今日を生きる
気怠さに 拍車をかける 切りすぎた爪
色を塗り忘れた 文末の「ね」
夢は去り やり方忘れた 愛想笑い
リビングの 床に溶けてく 午前二時
雷鳴が 目覚まし代わりの 昼下がり
好きだよと ささやくあなた セミ男
もういいや… 本音は剥がして取り繕って それはまるでテセウスの船
寝る間際 心に墨を落とされて 今宵 身体に何したためる
もういいかい? もういいよ! 隠しきれない満面の笑み
ときめきが 冷凍保存 できればいいのに
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