旋回している 影の禽 摘んではいけない 花ですか
雨のリズムで 地下の画廊へ 芳名帳には 花の名を
ゆめの つぼみ もうすぐにがい 糖衣錠
雪の切符で 乗車する 発語から 言霊まで
遠ざかる舟 とけてゆく岸 雨音の うすい麻酔に
海の色は 抱卵の鬱 風切羽が おちている
薄氷の耳 陽光に透け 未知の楽章を 川は一途に
無念を継いで 征くときの 前傾 草いきれ
祖ら遠く 地霊の息に うるおう草を たてがみに
草陰の 裂果 遠ざかるほど 湿る髪
いきさつも 結氷した 瞳孔に 月
氷柱のしずく 光の蜜をたくわえて いまわの冬の くちびるに
繊月の舟 吹きよせられて 詩集のうすがみの さざなみ
花のうつわは 花のなみだに みたされて 黄泉の団欒
触角に露 夜ごと 架けかえられる 草の橋
光の束が 野辺にほぐれて 名もない花の 音楽の時間
片陰に 影を捧げて もう洗わないパレット
転調は 転生 あとがきは あわゆき
翅脈のような 霜の窓 白鍵を沈めきれない 小指
白い頁から 白い頁へ 余光のような いのりをあるく
調弦の混沌より 颯爽と 星を統べる 銀のタクト
凍る語尾 掌にひとひらの 雪の痕
トイピアノの ド 順番待ちの 雪
声なき言葉が 往来する 映写機の ふるえる光量
湖底の古城を 遊色の魚はめぐり 幽かにさやぐ 星の瓔珞
月白の ワンピースを着て 追いつけそうな 野風の電車
そらの水飲み場 ならんで ふざけて 飛沫く光
色硝子の反射 戻らない人の 席 宴はつづく
蔓の迷いを 見上げている 遊び疲れた 幼獣のまま
はじめまして 悲話を焚く けむりのような 雪の日に
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