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昨夜の雨は知らないが
チューリップ一輪
かたばみに跪いてゐる

よそのかきねの
さざんかが
ぱっくり咲いて
おそってくるよ

猫は歩く
ふむすふむす
知らないくせに
ふむすふむす

いつも同じの
マルバツゲーム
今日の答えは
バツだった

来世なら
チョークの線の
一粒子がいい

かすんだ春の
ゴレムの街に
天ぷらさみしく
匂ひます

明るく
陰陰たる
錆たちこめる春が来た

糧買うように四百マス買う

窓を打つ雨の
中中中に
中中中に
桃の花の開く音を
探す

手を延べたら光る
追うほど遠ざかる
少しずつなら届く
満足したら枯れる
春

恋をしたのか
舟に乗り
行ってしまった如月よ

今日もこぞって
明日もそろって
これじゃ懇ろ面従
情報戦

遊園地は眠る
まっくらな水路
動かない船
人形に静寂
恐ろしく眠る

父親柄のマトリョシカ
開ければ玩具と針千本

風にあおられ
かったらぱたら
枯れ菊かえろと
卒塔婆がゆれる

腹の底の錨を
酸で丸くして
それでもやっぱり
吐き出せないのです

春だというに
粉雪よ
ダグザの娘は
目を開けぬまま

三拍子のアンシャンテ、
こんにちは、
サリュ、またね。

ふりつむゆきよ、
しあわせですか。
とけゆくゆきよ、
さみしいですか。

延びる日暮れの
寂しさよ
西へ歩こう
紺に染まろう

人間みんな欠けあわせ

銅の国が
銀の国になった
王女は
恋が恐くなった

向こう
やけて褪せた雲は
思ひ出したい人の
明治の海

縁石の陰の雪の子あはれ

かなしみにくれたもみぢ葉が
太陽色の
絵の具を落としていきました

タイルの道も
くれなゐです
冷たい雨の
やさしさです

青みを増す芝
てんてんたどり
いつの間にやら
ひとまわり

大きな冬は
夜凪になって
小さなとんぼを
枯れ枝にした

不器用に
とん、か、じょん
白秋うたう輪転機

混線の瞬きで、
冷たかった、
青かった、
あれは、
言葉だった。