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口腔で壊した飴が創ひらく
流る血汐は冷涼爽快

犬に優しくしたら天国に行ける
ママのいいつけ通りに
そっと撫でる妄想してる

刻まれた皺の間に隠れ込む
デフ・レパアド聞きし日の父

薄黄色の点字ブロック踏む度に
私の背からもげ落ちる羽根

漆黒のアスファルトに溶けた
アイスクリン
踏んづけた子犬が２回鳴いた

安っぽいカレーが纏い付く舌の
震えで編み出す世界呪詛

寄りかかってきた小さな餓鬼の
頭の温さに泣く弱冷房車

できたての腫瘍をさすり乍ら飲む
グレイプジュースは果汁２０％

鍋の濁った曖昧な味噌汁を
捨てるときの傷を
あなたに舐めとってほしい

父の炊く軟くてにがい白飯に
慣れた口腔に入れこむ初夏

タバコの先から出るひと筋の煙
揺れて崩れた
それだけの一日

チョコ味のドロップをすぐ舐めて
ゴミ箱に吐き捨てた
私の全てが若かった時代

電気スタンドのかたわら
ひとりでに咲くユーウツを
目に秘めたまま我身罷りき

私のものではない音楽
私のものではない映画
私のものではない貴方

あのひとの
からだとこえとまなざしを
フィルムに焼き付け
生き延びる夜

私の心をしばるための荷物

手のひらで潰した蝿の血と憾み
消毒液で消し去る文月

私以外の全てがおそろしくて
ただ泣きながらサイダーを飲む

熱射光射すベンチの上で
片翼の蠅が歩き回りぬ

やさしい稽古

全き人の回復を待つ

肩の斜め右二センチ方向に痛み有
溜息で吹き飛ぶスーパーのチラシ

昨日の夜タバコ吸ったのは
夢だったっけ

全てを投げうち一秒の
その一瞬に逃げるその先で
未だ鳴り続ける心臓を聴く

君と僕で
頭のアンテナを折る
７月の夜

哲学者と猫　

コーヒーフロートの
アイスクリンに塗れた氷を齧る
横で猫が丸々

夕刻の何処かに佇む栗の花放つ
匂いを目を細め嗅ぐ

自転車で進みゆく街

公園に佇む男達の吐く副流煙を
吸った鳩は
数歩とたとた歩いた後
消え去った