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まつ毛など真っ白になった
犬なれど息子がくれば
赤ちゃん帰りだ

いないいない
だれもいない
わたしすらいない、ばあ

遅れてやってきた秋
まだいる蚊に刺される

たかだかわたしの人生
終われば終わる

人間に疲れた夜は
ことさら丹念に
ブラッシングして
犬にも嫌われた

八月は乱暴に連れ去られました

六月からずっと戻り鰹がいる
もう季語とかにならない

炎暑でも毛皮を脱がず暮らす犬

子に言われ短歌雑誌を買ってくる
批評はいいからお前もつくれよ

地震が来るかもと騒がしい中
食べたいものを食べておく

味噌おでんも悪くないと
思えるようにこなれてきた

月並みなことではあるが
息子と酒を酌み交わす幸福

新じゃがの小芋の唐揚が
すまし顔で売られている
デパ地下とすまし顔で買う人

星座になれない星が
不幸とは限らない

七月七日
降っても晴れても
あなたに逢えない

君にはともだちがいるけれど
君の犬のともだちは君だけだ

甘い卵焼きの
しょっぱい苦い思い出

羽ぐらい軽い
わたしの人権

辛口なことしか
いえないわたしは
卵焼きにうんと
砂糖をいれてやる

親ガチャ外れたって騒ぐ子に
お父さんに言いなさいと
責任転嫁

自分さがし永遠に迷子

川端のアーケードのある地点に
ラーメン屋が四軒観測された
雨降りの博多

根無草だけどなにかに縛られて

夫婦、子二人、犬一匹　
方舟の乗組員は
犬以外みんな傷ついている　

飛行機とホテルの料金
調べつつ
どこでもドアの実用化を待つ

家庭科２だったわたしが
ご飯を作り裁縫をし
ピアスまで作るまで三十年

雨のにおい
わかる、アスファルトだと
特によくわかる

なすすべはない

ファミレスは
おとなまでもを
幼児化し
やりたいほうだい
散らかしていく

誕生日平日のまま過ぎ去って
句読点すらつかずにおわる

死にたいと思いながら
卵や魚や他の命を食べている