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グノーシスは未だ倫理とならない
まま野焼は火事とならないままに
焼けていた

朝キャバのそばは夜桜散っておら
ず植樹されたその内側からの動詞
を写生する

知られているということを知られ
ている季語のうちに記憶のいきれ
を一瞬覚え

病院にいるような音楽の聞こえ方

折り目のついたあえかな声あって
薄衣がしだいに剥がれていく短日

広告の賀状破ってうたた寝する

冷たい手舐めて全く言う事なし

十二月尽きてずっと寂しい

暖かい空気がロフトには溜まる

なぜいま裸になったのかわからな
いという瞬間だらけの毎日に幸福
の鳥鳴く

兵士が銃を持つようにおれが川と
ひとつになってわかった昨日のき
みの大半

処暑処女懐胎のつわりを思ったり

秋の宵飛行機が雲よりも上

双曲線の国々の夜店にぽつぽつと
火がついては滲むような全能感

蠅捕器がおじゃんになり人が捕え
られるとそこにやはり帝国ができ

餌をやるとき指の間を舌でなぞら
れびっくりしにっこりした後きみ
を一瞥した

きみの触発は逃水を掬うように

ぴゆるんとミルキーだった春の水

風船の傷きみと開きあうとき嬉々

春終るあさっての約束だけで

唾飲んで春の汗目の前が揺れ

男の背の墨あたらしい試験の後

春うごく神秘より単に愛のままに

余寒愛おしい風呂待つ時間の短い

愛くるしいその顔いま暖房が点く

咳をして逃げていき殉じない

転校をくりかえしても猫の恋

ざらめが星屑のようだときみが言
い冬銀河

旋律的短音階冬が逝くときに

不埒かも法を思えば白い息