唇の間やわらかくまんじゆさげ
行く秋の二人席空席のまま
林檎持ち上げる林檎の重さぶん
黍嵐あたま掠める複葉機
目をそらすことさえさせてくれな くて丁寧に脱がされて花びら
ここからは部屋ここからは冷蔵庫
明日へ行くために 布団にパッキングされた わたしが帰ってこない
砂のない箱庭のいちめんの青
ドア横の脱毛広告夏の草
網戸から入り込む網状の夜
五月雨の円周率の千桁目
夏隣シングルレバーくいと青
春時雨こっそり開けるボトルガム
落下する決心をして一通の 切片となれ 促音の雨
春風はガサ入れドアをこじ開けて 飛んでいく特売の令状
体内へ移されていくマグカップ味 のミネラルウォーター垂直
アスタリスクになりかけている *** あなたから見たわたしとの日日
さようならあらかじめ言う 出会いたくなかった 出会いたかった人たち
かつてそれだったものたちわたし から見えないわたしの顔・頭・首
手から手へ口から口へ透明な 檻から生まれる透明な檻
私立三角定規製造工場で 座る三角定規の穴穴
決定的な夜がわたしを清潔な ピンでわたしが位置づけられる
いつからか私たちではなくなった わたしたちもう、こんな時間だ
あなたから見れば たくさんいるうちのひとりで わたしは人々の々
ふりだしにもどる あなたに会う前にもどる 私がわたしだった日に
文字や絵のかたちに 夜はあらわれていく 筆先に削り出されて
遠浅のみずうみ 布団の外に出た足から 夜に浸されていく
存在が証明された大小の わたしが受取口から出てくる
踏ん張った末に虚構は垂直に わたしを通り抜けてぽとおん
ここここの先揺れますので 個個個個の皆様手すりに お摑まりください
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