雪に飽く 人里を包んで 山は 匿名の絵画
架空の詩人、死のしとね 坂の上の 鮮やかな夜
日常を処方する
薄墨の原野 河川敷の小屋に 閉じ込められた ジョウビタキ
のらくらと 上下の夜久野 去る夜汽車 今日が暮れても 明日が起きても
融けかけの 田の雪に 枯れた稲穂が ちょこんと並んでいる
野の花を ゆびおり数える 手の甲に 今年の夏の にがい重さ
1986年の嵐 地中海にまどろむ ちいさな猫の夢
すこし多めに切り抜いた きみの朝焼け 短く生きる
とむらいの 茶煙たゆたう 秋の空
巨きなひとの ため息が 透きとおって 山峡の暮らしを包んだ
夾竹桃の茂みに 隠れているほうが 本物です
まよなか洗う 月灯り とうかんかくの 角砂糖
失恋の 痛みの軽さ 百日紅
詩にすれば いつでも思い出せるから 海に沈んだ 星を束ねて
悪いところを撫ぜてみて 空想上のわたしのしっぽ
新緑は模写する 安野光雅の風景画を
小糠雨の午后 古い井戸の記憶
夢のなかの 片翼の 彼女は時々 羽ばたきをした
甲羅も水槽も庭も 抜け出して 小さな亀は春風を見た
小鹿の尾は白く 草の芽は短く 善悪は 便宜上の意味しか持たない
うるうび あたらしい 万年筆
広い空なら 割れた卵と 同じくらいの意味
形骸化したカミサマの 細く滑らかな産道
庭中の雨粒を収めて 維摩居士の 玉眼が光る
扉は薄く開いていて 真夜中の雨を思惟する
他に行く所も無いし は誰のもの
古の甍に宿る 鷹の鈴 茶室の裏の 白いキャンバス
メタファーを交換して 喪われた 月を見ていた
言葉あふれているから ひとり
詩
俳句
川柳
短歌
アフォリズム
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完全一致