鈍角でひかりを受ける 祖母の背をすべり 吐息に似る若葉風
六月の朝は水槽 彷徨えば あなたに出会えそうな気がする
柚子ゼリー鋭く欠けて 母へのみこぼしてしまう 痴れ事あまた
地球儀の仰いだっきり 海洋の翳に おさまりやすい左手
夏霧にさらし 泣きあと糖衣めく
藤の色をすみれの色で喩えては 一人称がゆらいでばかり
星空のように瞳は 傷ついて テディベアまだ 抱かれるかたち
うたうとはうったえること 丹田に ふるえつづける水鏡がある
ピーナッツ じゃずじゃず砕き はじかれた夏の濁音 踊らせている
鼻濁音うすく伸びゆくような朝 たまごは水の声でやぶれる
初夏の陽はすこししめって さよならのあった 別れのほうが少ない
夕焼ける ように 毛布をかけられて あなたに託したい街がある
再会のあなたの癖をなぞりゆき みるみる薫る藤棚のかげ
やわらかい諦めがあり 飛行機は ゆきを見つめて速度を落とす
搭乗のゲート しずかに連なって 朝陽に 風切り羽のやさしさ
りんどうを竜胆と書き 心根のうろこを ひらくごと 伸びを する
こすれてはふくらむ 春の便箋に ことばは小川の加速度をもつ
クッキーの角までふくれ花明かり
すり鉢に胡麻を ろりろり鳴らしつつ なべて童謡めく懐古談
横顔のきれいな人 を想うとき 胸をさまよう土星のひかり
めぐすりの光まぶしく すこしだけ 溺れてみたい春風がある
ほたるの灯 受け取るようにあなたから 借りる おみくじ代の百円
大笑いするとき 二頭の龍になり 互いにましろいベールをかける
放課後の窓辺にすわり 惑星の心地で すすめる未来のはなし
野苺のかたちの えくぼ持っていて きみは どこでも生き抜けそうだ
四部休符 みたいなきみの はねぐせが 春一番を抱きとめている
もちもちと 硝子に雪を描かれて バスは樹洞のしじまを運ぶ
これまでを紐解きながら 朗々と 鴛鴦茶めくふたりの夕べ
あきらめの笑みをしずめて あやちゃんの唇に シーグラスのてかり
ざわめきを遠くに覚え ぺんぎんのさみしさで行く 母校のろうか
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