キリンでも飼うつもりなの三月を こんな明るい吹き抜けにして
鳥籠のオウムは雨の降る夜に 昔の地球の夢を見てる
春風のアンダースロー受け止めて 生まれる前の草原にいる
父の骨を磨くような朗読を 春の手前で終わらせたひと
またひとつ書店が消えて海風は 鳥の名前を知らずに運ぶ
冬の日のエコー写真はぼんやりと クリアファイルに挟まれた海
星の死は宇宙にとってビー玉を お尻で踏んだくらいの痛み
駅前に灯がともるまでうつ伏せた 鏡が夜を買い占めている
空が剥がれるように降る雪の日に わたしが母を産む夢を見る
光らない灯台よりも無防備な 洗髪台で伸びる首筋
暴力がぎらぎら透ける青空は すべてゴッホの筆の真似事
ほらこれが鍾乳洞のぬめりだと 切手の裏を舐める舌先
気が狂うまで瞬いた星々が ピアスを埋めた砂漠へ向かう
水星の昼夜の温度差を解き サドルの雪を払う左手
空き瓶を洗うあいだに透明な 句読点へと雪は近付く
土砂降りで逃げ込む 野うさぎの穴は 養護教諭の美しい耳
鏡割る強さで首を振り下ろす キリンは風に溺れたいのか
冬中の眠りを剥いで起き上がり 炎の色を確かめている
賞状の鳳凰枠の金箔が べたべた光り地中に潜る
怪物になりそうだった夕暮れを 綺麗に畳むための前屈
ミニチュアの太陽系を包み込む レインコートを燃やした匂い
死んだ蝶の羽を蟻が引き摺って 秋風は鍵束を鳴らした
歯ブラシを岸に残して 死に顔と寝顔を隔てる川を泳ぐ
幽霊の肖像画を描いてたころ 冥王星は惑星だった
悔しさで噛んだ舌から健やかな 血の味がして紅葉を踏んだ
ほっといた口パクの伝言ゲーム 月の裏側まで続いてた
夕焼けになり切れなくて路地裏で ぎゅっと絵の具のチューブを絞る
さみしさを抱き留められず 根腐れをどこか望んだ冬の水やり
金木犀が燃え盛り 横顔を知らない人の日記を読んだ
初期衝動の形した曼珠沙華 隠喩の色をしているくせに
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