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打てばすぐ形の変わる性質なんだ
ほら、冬なのにメンソール
吸ってる

終電のない川沿いを飛ばせば
ションベン臭えおっさんにも
リリィ！

ドア開けて、って先輩のが近くな
いですか　じゃあ窓閉めてくださ
いよ

ツールドってなに？フランスは
わかるけど　明日の正午までに
知りたい

針山か灰皿なのかわからない
キンモクセイの色も知らない

ドアにいちばん近いのがチェロで
ばかでかいごきぶりが外で
死んでる

開かれた踏切を知ることのない
電車が飛び交っている　晩夏

すべての嘘に対する抗議として
俺は核弾頭を三つ持ってる

尖っていないケーキがいいそれが
バームクーヘンと呼ばれるのを
知らない内は

「戦争は、好き？」「戦争は嫌い
だよ。でも焼け落ちた街に住み
たい」

一瓶のナルドを入れた香油壺
機械でも天使でもなく

海兵（マリーン）が、セックスを
する為だけにある、食堂の、天国
の夢

あれは俺が点けた電気　あっちは
勝手に点いていつまでも
光ってる電気

わたくしの没後七十周記念展
のテーマを落としちゃったの

赤信号で渡るか迷った時間だけ
犬になろうよ涼しいうちに

歓声　開くシャッター　開く
シャッターって変だね　って子供
の声だ

夕陽に目を焼かれながら百階建て
ビルを飛び降りているスピード

悩んでるように見えても選択は
決まってるんだと大蛇が顎を

火星一の賞金稼ぎ音に聞く
「七本足のジョー」の話だ

三つ葉の種植えてないまま親子丼
作って食べたら今日になってた

どうしても殺したい子がいる人は
水脈という名前を付けて

永遠の眠りが死だと不死鳥に
告げればただの鸚哥になるよ

シュルレアリスム短歌を書くなら
ば「これは三十一音ではない」

開けば開くほど遠くなっていく
焦点の合わないたくさんの目

痒みにもたくさんの種類があり
マグダラのマリアが零す涙

昇っていく女が一人描かれた
絵本だ　僕の頭にあるのは

薬のような名前をしたオレンジが
抱える大量のビタミンB1

温水に変わったときに風呂場から
少しだけ減る音エネルギー

太陽が涙を乾かす音ばかりきこえ
ちまっておかしくなるぜ

泣いている天使を見た。すべての
黒がオレンジの筈だった夜の事。