雲と その影の流れの等しさを追って 天地の歯車がかむ
群青のエコー写真にいて男子
素描では紙の白さで描き出した グラスの縁を唇が知る
あやうい胸を抑えるように、 潮風をうけて頁が膨らんだのを
鳴り出せば減速し出すオルゴール あの冬きみは帰省をやめた
ぼんやりと浜を鳥影 砂時計
越境を終えた翼のようにして 青い器におくカトラリー
花びらの川面は 春の寝姿をかたどり、 浅くオールを入れる
カルデラ湖 持ち上げた湯呑みの下に
余談めくフルーツナイフ戸棚から
やじろべえまわす午睡の周波数
受け売りの感情を曳く 筆圧は なぞりがきドリルをさまよって
指先が 鍵盤を離れそうでいま離れる、 遠く月面がある
つまずいて ふと出した手は空を切り 広がる手押し相撲の花野
翅だった、あなたの晒す掌が。 春の待合室からずっと
ドアを這う月あかり 見たことがある、 短編に脱走兵がいる
白上げて桜前線通過します 海峡越えていくところです
飛んでいく綿毛を掴む 手を開く また飛んでいく こんなにもただ
私より桜に近い 早咲きのあなたに見せる ぐりこの歩幅
手の試論 銃の形の左手を 右手に隠していた葱畑
コピー機に散らばる桜 その陰を写すために踏む 給紙の手順
感情に掛かる梯子を降りながら 下の名で呼び合うようになる
淡雪と錯視する午後、 擦り切れたフィルムを壁に うすく映して
失明を宣告された写真家が 風を最後の被写体にする
春生まれ、その両手から注がれて 製氷皿はうすく色づく
天秤を傾けた蝶 その皿へ広がる花野 さらに傾く
匿名の波 それぞれ浅瀬を歩む 影法師の領土を守りつつ
鍵盤の蓋を閉じかけてはひらく ようにまどろむ睡蓮の人
海へゆくメロディーロードの 緩やかなカーブへ トロンボーンの夕陽
聞き分けの悪いそよ風 風見鶏、 いつまでそうしているつもりだよ
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