ざらついた別れを食べて 舌先にひとつ 花束を与えてしまう
青色の サニーレタスが羽ばたいて わたしの生命にとどくまで
向日葵を剥がす いちまい、いちまいの 視界を覆ってゆく後夜祭
誰よりも照らしてほしい夜があり 月に向かって一駅あるく
のしかかる太陽が街をさらって 公園 まぼろしの蝉時雨
好きじゃないものから順に 真夜中へ進む ミックスナッツの儀式
内側のほうからちゃんと 無花果になるために 灯すテーブル・ランプ
ひとにぎりの夜でも アコーディオンみたくのびて、 両手でおせば鳴ります
炭酸の息づかい しゅらしゅらと鳴って 私ごと浮かせてほしかった
這うように便箋の上を泳ぐだろう 熱を隠したブルーテトラは
継ぎ足した色に名前をつけながら あなたのための庭は涼しい
どこでも行ける どこにも行けない 新宿の車窓 私を手放す速度
逢うためにのぼってくだる 都会でも今年うまれてしぬ蝉時雨
酷暑日を切り分けていく心地して これは涼しいほうの赤色
おさなごの道は満開 歩くたび 花にあらたな名前がついて
レモネード頼んだ子から大人びて みんなあだなで呼べなくなった
聞こえないふりをしている 丹念にガラスを磨いてつくる境界
伏せただけ睫毛が落ちた渓谷に あの犬もいる いずれ私も
竹とんぼ 飛ばして落ちる 数秒のあいだ 私は空洞だった
月をしまうための 毛布を編むための 毛糸のための 羊を数える
口約束はしない あなたのすきな音を並べて 朝が来たと伝えて
半月のような西瓜を切り分ける ふいの夜風によく似た味の
川面からのびる電灯 ぎるぎると 吾のいのちを煽り続ける
なんでもない日に クラッカーを鳴らすとき 私のいのちはわずかに浮いて
プリズムパワー せめて光に包まれて もう選べない車窓のブルー
でもそれは、と ゆるく続いていく毒で 溶けきっているグラスの氷
軽い傘買ったのに 持って来なかった 彗星 きみの星まで遠い
雨予報 降られず家に着いたとき わたしに残るかみさまの部分
ポケットがたくさんほしい しあわせは 歪なかたちに砕いていくこと
生まれたての卵白逃げる ぬらりらと そんなに怖い思いをしたの
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