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いつ咲く花ですか、薔薇は
聞かれて答えれば
夏の終わりの音が聞こえる

サクリファイスじみて
時雨を振り解く

星空の本を読む
水道費さえ払えぬ夜に

ものごとに
いつか終わりが来るように
棘をはずして持つ秋の薔薇

傷ついた言葉を反芻する虫時雨

硬くなった心臓に
鋼の音が満ちるとき
鈴虫溢れるほどの救命

薄給のペールトーン
ブラウスの穴から溢れる
歯車だけをよしとして

寒紅と呼ぶには明るすぎる夢

脊髄が水晶になる虚栄のみ

雷雨の中でまだ固い桃を剥く
愛さない理由だけをおしえる

朝顔の開く速度で諦めを知る

亡き人をいたむ心のガラス窓
雨粒は丸　　　待つとおり雨

深海魚理解者のいない盆祭り

祈るように暮らす
もらったすももを
傷がつかないよう
そっと洗っている

答えの一切でない祈りに
この夏最後の朝顔ひらく

聞こえないふりして耐える
サンカヨウ
雨ゆっくりと透き通るため

百日紅業火のように咲く
なんでもできるから孤独

花のように爪が剥がれて
焦燥入り混じる顔で歳を
理由にする君に笑いかけ

人は溢れることのない湖
思う存分に他者を愛する
朝眩しげに咲くカラス瓜

陽炎の追いかける闇
劣等の表彰台に腰掛けて

内側を切り拓いても
誰にも会えない初雪

波の音の中に言葉を探すとき
詩とは息継ぎのようだと思う

美という字ばかりが並ぶ美術館

泣きたくなるほど夏の星

青葉闇虚言を吐けば
一つが大きくなる木陰

痛みが身体の輪郭を
つまびらかにする
泰山木強引にひらく

当事者にはもう届かない
キャッチボールを波とする

薔薇の花を湯上げする
剣のような痛みの中を
何度も生きてゆかなくては

階段を登る足が
絡まって動けなくなる
浜昼顔の群生の
上で踊っていたかった

馬鈴薯の芽を丁寧に削りとる
生きてく理由もさほどないのに