過去の作品検索

きみは東に
わたしは西に
青馬を遣りあう
線状降水帯に

マリオが赤いシャツを全部
干すような晴れ
きみはわたしを外へ連れ出す

烈々と西日
あなたの王国を
刺す日を想うことはまだある

夏至へ向かうあなたの
なんて、
なんて鰭

愛された金魚は
九九を唱えられる

時間旅行
終えて
トマトが熟れていた

麒麟座が視えたら
いもうとをやめる

旅なれた君が
時々つらかった
祈るように割る海塩ウエハース

パテだけのサンドウィッチを
天国でも
寝台列車でも
思い出す

好きだったひとが
時代とずれてゆく
薬菓はあまく仄暗い菓子

雪柳
きちんと睡るオートマタ

舌のピアスちかちか鳴って
本当に
それを彗星だと思ってた

冬の歌は嘘が多いね
きみと寝ると
こわれたガラス掃く夢をみる

正座して
五月を待った
やわらかな緑の虎に
生まれ変わる日を

ひたひたと
琥珀は育つ
あなたから心を吸って
吸い終わるまで

どこへでもゆけるよ
はるの
けんけんぱ

清潔なソフトクリーム
舐めたこと
あなたが
ずっと緑地であること

青鬼灯まだ夢で泣くことがある

架空のねこを
夏の一日連れ歩き
ちゃんと
冷凍庫でねむらせる

インディゴの瞬間
わたしの千年で
あなたの心臓を買うつもり

わたしにはわたしの宗教
あなたにはあなたの宗教
羽毛のように

桃に刃を滑らせるとき
思い出す男の子がいる
影絵のような

海亀にうまれたような午睡のあと

まぶたを縫う金糸を抜いて
この次の風は
ひらいた眼で受ける

絶望をするように
盲信するように
切手の糊にふれる舌先

息がしたい　海への
切符を買うように
鳶色の毛布を脱ぐように

ひだまりのけものになって
きみを待つ
転生の終わりに
天気雨

髪も手もいつも濡れてた
火の鳥の
転生前夜みたく密かに

忠犬かどうかは
死んだあとに決まる
盲いるほどに青く正しく

あなたの創る姉妹のうちの
さみしげな方に
手渡すチェルシーの箱