稲の波 うたた寝の窓 色閉じる
線香の前は静かに飛ぶ小蝿
電車待つ 版画の線の秋しぐれ
白亜紀を縮小したらうちの鳥
解脱して豆腐屋の笛聞く小春
骨壷の底にありそう粉薬
蚊を打ってやけに響いて夏の暮れ
殺虫灯 足元献花のなずな咲く
タワレコの袋を提げた都会の子 「でか太」という花火の私
クレーンが神の手のよう 首都の空
赤子の額 パラボラほどの広さ
白刃取り 包丁挟む桃の尻
掻き分けても陽炎立つ錆トタン 柳の影が退いて久しく
朝焼けに溺れる山に目もくれず 尿意に駆られ降りる階段
足浸す 星座が混ざる夏の水
向日葵の煙幕揺らぐ 終戦日
肋骨の隙間に隠した狐火が 逃げて寝冷えの朝祭り明け
小津映画 知るはずのない走馬灯
零時半ディスコが漏れる 鹿鳴館
自販機の灯りがこわい 夕みぞれ
老犬と駆けっこしても アスファルト縞縞できず 長く生きてよ
炎天下お洒落ニットの鼻に汗
人絶えて夜春慰める料金所
コメットのひれが転がす 原子核
旧友の息砂混じるテープ剥ぐ
夕風に鳩の鼻歌 夏滲む
雲に静脈 知らぬまま微積分
遠ざかる縁と線路のトポロジー
長靴が落ちた陽だまり糸を引く
居眠りの国語を離れ夕立は 鼻毛引き抜く漱石に降り
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