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天を見るソリスト
からっぽのホワイエ
旅立ちの日に

不安に涙を混ぜて捏ねて
すると

後悔しか残らないのだった

生臭い唇
針山のごとき顎
もう君は詩を解さない

運命ではなかった
音楽が止まった
椅子はどこだ
バック・オーライ
危ないよ

こわいと泣いて
いやだと逃げて
わすれて眠る
こどものように

宴の解散　余韻で鳴る耳
チクタク時計　知らない匂い　

永久凍土のマンモスの
悲しみが溶ける日がくるか

カラカラの
知ったかぶりの後悔を
透明の袋に

カラカラと

いっそひとおもいに
息が凍るほど
音が飛ぶほど
長く短い瞬間に

風に乗る朝７時のチャイム
あの子髪切ったんだ
私はまだ今日の価値を知らない

震える手と痺れる耳
星の減った夜空に
なんの用事だったっけ

音は
揺れるものに乗り
集まって光って
なくなります

別れてからあの曲聴いた？
五感を持ってかれるあの
さて今年ももう終わりです

深海とは
圧と恐怖と
息子の話で
できている

伸び放題のアイビー
咲き乱れる蜘蛛の巣
ため息で根が太くなる

懐かしい友人のふりをしたなにか
の
ドリンクバーのグラスに毒を入れ
る

吸うとヒュー
吐くとゴロゴロ
つっかえた言葉に処方箋

足が速い子の世界
ピアノを弾く子の世界
親のない子の
明日のない子の

世界が狭いからだ
まずは頭の中から出て
猫背と浅い呼吸を直して
靴を選べ

相性占いとか
同じものを好きだったりとかで
あんなに世界が
騒がしい日々よ

泥の匂いと
くまんばち
赤ちゃんかなへび
素麺を買い置く

あの人なにしてるかな
検索履歴を消す
忘れたい

ブローチにされた
不憫なカマキリは
不思議を持ち寄る
子たちの平穏を願う

研ぎ澄ます足の裏
冬の霜柱
夏のカタツムリ

つまりは積もり
つもりのつまり
恐ろしいほど風が強いので
今日は家にいます

コーヒーが飲めない
音量に厳しくて
常夜灯で眠れない
君はひとりを気にしない

晴れると庭のあちこちに
傘が咲いていた
私のそれは錆びる
母のようになれない

蚊取り線香と
甘い醤油の匂い
いま
祖母に
会いたい

こわいこわい　当たり前が変わる
覚えたものが変わる　
宇宙の仕組みさえ

消してしまった文字たちが
昇るか　落ちて踏まれるか
煙のように　消えるのか