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背表紙をゆっくりとなぞる
指先と背表紙にさす
ひかりしがらみ

レシートを捨てるとこから
１円を拾って
最も短い昼だ

人だから大体のことは想像の
回廊をゆくグレイハウンド

電線の焼ける匂いに
はっとする
上には空を模した上だけ

洋梨のかたちを受ける
手のかたちを、
これも習作だから忘れる

レジ袋もらって帰る
忘れられない
痛みを忘れるまでが遠足

偏愛は、わかっているよ
玉虫のからだの
はるかな不思議のように

ピークはまだこれからのこと
猫ならば
秋のさやかに喉を鳴らして

物語なら最終盤の海で見た
顔を忘れる海のあなたの

風吹けば風のかたちに沿うように
人の仕草のひとつひとつは

体験はかけがえのない
ものとして、
地べたに座って話す経験

ビートニク
どうしてどうして僕たちは
連帯することを諦めたのだろう

オール後の朝のホームで説明は
うまくいかない　しゃべり続けた

どうしてもあなたの海辺から遠く
山あいにあるサーフ・ショップだ

初歩的な都市観やがて降りだして
注意報となり警報となる

咲いてから花だとわかる夕さりに
ボーカロイドの間違える歌詞

人のこと轢いてしまった体験が
明け方の金星の燦々

畔道を歩けばやがて
痒くなる足首をかく
星の子として

たくさんの向日葵が咲く　
たいせつにされることには
限などなくて

遠汽笛　雪が視界をなめらかに
すれば視界に進める気がした

電柱の傾いている街だから
忘れるためには時間じゃなくて

さっきまで歩いてた道を
ふりかえる
地図ではわからない高低差

夜になる理由のわからないままに
夢のみぎわに棲んでいる鹿

目をとじる　
あけたら雨は止んでいて、
切られた髪にも重みがあった

無視してる、
呼んでるにしてはか細い
冬の湿地に聞こえる声を

いまできた宇宙のように
髪の束
ほどけるうちに
滅びる星も

離陸する速度になれば浮きあがる
風になったら教えてほしい

学期末、きみのあらゆる感情を
収録してある図鑑を眺める

北向きの窓から注ぐ明るさを
シロツメクサのように信じた

躊躇わず字牌を切れば寒々と
ロンの声にも流れる季節