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芸術がめんどくさくなった秋

私は大成しない
やっと貴方の作ったものを
普通に見られる

書いてみた遺書を
紙飛行機にして飛ばす
その行き先を
なんとなく見る

一橋に鳴いたセミ
最後に
手を挙げた

胸の手触りを整えて
また明日
あなたと二人
手を握る

今は膝を抱えている
私を祝うろうそくの火
が消えて

うっとうしい貴方
嘘のように風を残して
また他の星へ行ったのね

撤去されたすべり台
一つだけ残った手すりと
その奥の空

つう、と流れる星捕まえて

くゆる未来へ
せめて
花を添えて

愛
電車で小さく踊る父親

溶けて流れろ
アイデンティティ
たまに信じるし信じない

この世界に何を想う
この世界に何を想う
ああ
電燈よりも近い月

宝箱ばかり大事にしてきた愛

回る
貴方と
回る
世界が終わらないように

浸かりながら、栓を抜く
湯と流れて
かさを減らして

物言わぬリビングは
灯りだけが雄弁に
私は、三十歳になった

君は言った
プラシーボ効果なんだ、って
夜が薫った

瞳のつぶらな灯りが消えて
やっと人生を愛せたよ

人生は戦いだ
勝負じゃないけどね

避暑避暑避暑
もっと本読んでおけば
良かったなあ
視線にやられたホームレスの

湯
揺蕩う唄の中で
吸収される瞳の中で

ひとりという宇宙

放課後が奏でる
能天気なトーン
勝手に連れていかないで

ふんわりした夜空に
きびしい亀裂が走るよ
甘っちょろの僕のせいで

人のいない電車
がたたん　ごととん
がたたん　ごととん
がたたん　ごととん

世界を欠伸したら
吐息は白鳥　空に向かって翔んだ

誰もいない公園
掌の黒い渦
大きな木の下に座る
そう私も
誰かの夢

踏まれて絶えた虫を
羨ましいと思う瞬間。

砕けた夜の狭間
ぬるりと私ああああああ