マスクして耳あることを思い出す
予備校のはめ殺し窓も冬に入る
ホチキスの芯からまっている九月
初冬の吹き抜けに聴くカンカータ
小さな球にうようよする微生物 意識を発見して喜んだりする
亡き君に「拝復」添えて秋の虹
小春日のアンサンブルの中にいる
ビル街の底月光に息継ぎす
なめらかに秒針すすむ初時雨
寝巻きより君の香減ってゆく九月
遠雷 排他的な笑い
寒卵テレビはニュース吐き続け
重力に永久に溺れて蝶も人も
流れ星この村に皆生まれ死ぬ
我生きる君のいる空高きまま
静脈は手にあおあおと寒卵
少し開く金魚のえらに真の闇
花あやめ避けて杖つく おばあちゃん
春の宵木々は山へと変わりゆく
仏壇に知らぬ遺影があって夏至
父祖父の老いを見ぬふり夏蜜柑
行く春に食器重なる音一つ
親戚が犇めく墓前蝉時雨
かかと上げ願いの糸を結ぶ子等
柔肌に溶けゆく雪よ嫁ぐ君
龍が描く雲間の夕焼け三等車
色鬼をする子等抜かし大花火
草いきれ父が喪服の重いこと
春闇に溶け切れぬ吾の呼気吸気
送り火は骨焼けるかに鳴いている
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