春を待つ 毛虫のように丸まって なんでおんなに生まれたんだろ
ラーメンを啜る わたしの目に映る 油まみれのこの世とわたし
押し寄せる闇を やさしいものとして 抱きしめている自販機の白
靴下をひっくり返し ねむる子の頬に しずかな月光がある
理科室の無音に座る ひらがなの カーブぐらいの愛がほしくて
まちじゅうを 歩き煙草で行く人の こむら返りを祈りつつ寝る
若さとはあぶくのようで からっぽの優先席に おしりを乗せる
ローファーの潰れたかかと 花びらはいつも 螺旋をたどって落ちる
算数をがんばる君のそばにいて 冬の陽射しがまるまっている
すっぽんが ぐんと右手を伸ばすとき 生物室の窓はあかるい
ばいばい、と手を振り返し 塾に行く 友の背中の翼を見てる
臍のした辺りに きみの詩があって やがて溢れる海として抱く
すり下ろす林檎のような やさしさで 祖母はゆっくり狂っていった
青い鳥から じゅんばんに取り出して 胸のこまかな棘を食わせる
ふたしかな輪廻を泳ぎ なんどでも やさしい母の子にしてほしい
思い出を ブーケのように抱えたら 前が見えなくなってしまった
みずからの海を 胎児に分け与え 叔母のからだは揺りかごとなる
狙ってない時が いちばんおもしろい 母と並んで青汁を飲む
夕焼けに満ちる教室 頬杖を崩して君は眠ってしまう
空蝉は青い夜空の果てにある 祈りをそっと抱えるかたち
おはようを交わしてついた食卓に 並ぶわたしが掘ったじゃがいも
売られゆく仔豚の目をし いもうとは漢字テストを そろそろと出す
アルバムの上に のすっと乗っかって 猫は未来の方を見ている
すこしだけ丸まっている 母の背にふれて パートのいちにちを聴く
雑踏に駆け出すぼくら 置き傘を少年兵のように掲げて
十代のおわりを少し かんがえていたら 愛鳥だけがやさしい
おたがいの舌も 確かじゃない夜に 雨が止むまで抱き合っている
もう ぼくを 覚えていない祖母だから 今日みた夢のはなしからする
サバンナの王が眺める 朝焼けのようなたまごを ごはんにのせる
本柚子の香を ほのぼのと立てながら 母がほおばるわたしの夜食
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