どこまでが 君であるかをたしかめて ボアブルゾンの背中にふれる
冬の風 ときんときんに尖りつつ 町ゆく人のあたまを撫でる
後輩が 部活をやめた日の朝は 校舎の窓がしんとつめたい
春になるまでの きれいな沈黙として かみさまが雪を置く朝
沈黙はたしかな首肯 ざらめ雪だけが 世界に反射していた
胸椎を ばつんと手折るようにして 冬がわたしを抱き締めてくる
ぶらんこへ 集う園児を仕切る子の 天地を分かつような顔して
ぎんいろの 背をつぎつぎと光らせて さかながはこぶ朱色のてがみ
植物の蔓を するりと下りてくる ように あなたの鎖骨をたどる
ざらめ雪みたいな 舌をうごかして 猫はミルクのましろを舐める
スクリーンショット のような手軽さで 友はすき、って言葉をくばる
さびしくて咲いてしまった 朝顔のように 背伸びをひとり、している
わるぐちを言われた 胸のまんなかで アロマオイルがぽつんと落ちる
ドレミファの み、まで覚えたいもうとの 両手に飴をつつませる午後
あぜ道を たんたか踏んで目指すのは だれも知らないひまわり畑
びい玉をきつく握って はじめての 保育園へと向かうおとうと
わふふ、って 笑うじいじの側にいて 春の陽射しにひたすくるぶし
真夜中の炬燵をめくり 異世界につながりそうな 闇を見ている
図書室に潜れば 砂にかくされた 気づきのような一冊がある
切りたての髪を なんども撫でていく 風のいっぽんいっぽんが青
非正規の友はうつむく ネクタイを しゅるりと蛇のようにほどいて
水切りの二人がはじく冬銀河
美術部のきみは りんごの手触りを 世界でいちばんきれいに話す
希望っていう字を なぞるたびにある 若葉みたいにきらめく払い
嫌なことだけを 避けては通れない えのころ草の もじょもじょちぎる
蝋梅の匂いが 風に混じり来て 今日は母校に行ってみようか
昆虫のいろを わたしに説くきみの やわらかそうな髪にはつゆき
過去形で ばあばが恋を語りだす ちょっとすっぱい蜜柑をむいて
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