全員で水たまりにはまる ジャンプした分 空が高い
校庭の隅の木漏れ日だけ集めて ウスバカゲロウの翅をつくる
遺失物係の椅子の夏蜜柑
束ねると春は孔雀のかたちして あきれるほどに染まる夕暮れ
背泳ぎで見た空の青さに 溺れてしまいそうなプールの時間
流転するあなたの言葉カタツムリ
視聴覚室のひかりは無機質で 失くしたものを思い出させる
生温い春風みたいにおろおろと 箪笥の奥に転がる硬貨
変わらないものだけノートに 書き出してみろと叫んだ教師の 孤独
黒板がひかりを浴びて 文字たちが みるみる世界に顔をだす春
リビングで日向ぼっこをする君が ひかりでつくる影絵のうさぎ
美しいものばかり見て生きられず 町一番の餃子を食べる
夜空から見れば地上は明るくて 死なない程度に生きてる僕ら
内職のダンボール箱で埋まる部屋 母は何度も正の字を書く
二日目のカレーに生卵を割る 午後は驟雨に打たれて歩く
パラシュート人間はもう 戻らない
かなしみを触覚にして走らせる バックミラーをはみ出る夕日
トルソーを抱えて歩く 立ち止まる交差点では丁寧に置く
旧姓を名乗る雨にも濡れている さくらはさくらわたしはわたし
照明の代わりに蜜柑を置く夜半
輪廻転生を子に教えるときは いつもモンシロチョウがヒロイン
叱られて地下室にいる 今頃は きっと美しい夕焼けの空
この坂を上れば届きそうな月
春の野に支えきれない花が咲く
三つ折りのお札の顔が父に似る
かたちあるものみな滅ぶ てのひらの 雪とかぼくのてのひらだとか
額縁を外されて知る 僕の目の 薄暗がりの春のほころび
コンビニで明日の朝のパンを買う そのあとネットでミサイルを買う
寒空に月を待たせる夜行バス
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