善意でも悪意でもなく日が沈む
覚悟とは波ひとつない湖面 ではなく 流れ続けている川面
仕事って楽しまないとダメですか 楽しくないけど真面目ですぼく
まだ誰も知らないはずなのに 人は永遠という言葉をつかう
お姫様みたいな顔で待っていて 来世 うなじで溶けてゆく雪
音読みで誤魔化していた感情が 訓読みされて暴かれる夜
父さんが新聞紙で作ってくれた 兜が誇らしかったあの頃
紫陽花が紫陽花であるように今 わたしは誰かの支持体でいる
青白く光るワイシャツ 顔のない父が ただいまを言わなくなった
ぽむぽむと花開く紫陽花通り いもうとがわたしの手を離す
人形の目に針を刺す 子どもらの 目の輝きに似た朝が来る
雨の日は耳をすませる 公園の遊具から血の香りがしてる
押しボタン式信号は押されない さよならまでの長いお話
不をつけて妥協しながら 生きている 可能、幸せ、 愉快、平等、
ひかりにも厚みがあって 本名を名乗らなければならない 世界
百人を好きと嫌いに分けていく 嫌いが好きの九倍になる
重心を前世の夜に置きながら 一から十を逆に数える
何枚も重ねたお皿を手に持って 純文学をあきらめている
冷蔵庫の中でも腐るものがある カーテンコールが鳴り止まなくて
下書きのような声で母を呼ぶ あの日のあこがれが発芽する
会社でも家でも味方なのは夜
骨壷を揺らせばカタコトとなって 少しやわらぐわたしのいのち
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