集合住宅のエレベーターでも
言っていいんだ
おやすみなさい

メサコン以外の愛し方知らない

火花からひばなへ
うつるたましいの
ほたるの舌に似たあさみどり

青春の死因
を
語る窓にいて
ぼうくうごうの昏がりが来る

溶化してゆく
くるしみを脱ぎ捨てて
きみはピーターパンのりんぷん

くろねこの瞳は
海にちかしくて
寄れば孤月を鳴らしたりする

羽を捥ぐ
骨
のうごきを見つめれば
此世の森に揺れる野葡萄

終電にきみ
を
見送り帰る日の
ひょうりゅうびんのような星空

供述を終えて七階まで上がる

病室からみえる東京タワー
三日月だけが見舞いにくる

人間がいない眩しいテラリウム

緑青の硬貨水底から祈る

わらび餅真面目を下手と笑われて

眼球の水をたぷたぷ秋祭り

オリオンのひかりの届く
ここも未来

鶏頭の槍揃うなら月命日

栗ひとつ自己完結と言う重さ

夜がまた来る鶏頭の肉厚な夢

水仙の匂いをかき消すように猫

ラッキーアイテムは
白のスカート
雨の日に、
自転車を跨いで

錆びた手すりに頬をのせると
空から
絆創膏のにおいがする

蛍光が切れてひとつの輪となった
灯を捨てに行く日の驟雨

この辺にポチを埋めたの
あの秋に
いま銀桂の花を降らせて

冬銀河マカロニグラタンが焼ける

友人の通う大学金木犀

聴診器はずし雪ふる音を聴く

新月は
英語もちゃんとnew moon
ひとりのために米を買い足す

逃げ帰る東京という街明る
燃え移りにくい火が灯されて

湖をいちまいの氷で閉じて
冬は仏頂面の曽祖父

水を飲む牡鹿のように文字を産む
万年筆は秋の静謐

はつなつの光を畳むように折る
紙飛行機は鳥のレプリカ

翼なきものを手招く
秋の踊り場は光の梯子だらけで

初嵐じょんがら節の中ホール

平坦なベッドタウンの白い息
ひとりじゃないと朝霧のかげ

銀杏散る二十歳の俺の居たベンチ

ふくらんだ風船だけが知る微熱

怖くないふりをやめたら
チョコレートみたいに
夜が
少しほどけた

朝が来るたび孔雀が喉につまる

二つの水門
月光の
鋏

提灯の火に誘われて
クレープは
トーチのように食べられてゆく

胎内はやさしい世界春の波

建物の影の凹凸
チョコレートフォンデュの空を
始発でくぐる

クレイジーゴナクレイジー
猫背の歯ブラシ

十月の錠剤苦くなってゆく

しゃっくりがおさまったので
帰ります

けんけんにぱのない世界蚯蚓鳴く

寝違えるくらい夢みないしすすき

缶蹴りのために
飲み干すビールです

パンジーを植えてダイヤの薬指

たんぽぽの事で裁かないで下さい

散らかった夏の夜空がいつまでも
甘美なPTSDを撫でる

水仙と睡蓮を言い間違える
　ひとり暮らしをしたいと思う

パーキングエリアの風に
ないはずの
旧姓を思い出しそうになる

ぎんいろの帰路のまんなか
秋茱萸のはずみに
何を忘れたのだろう

シュプレヒコール
水楢は記憶のかたち

妹の花命日に鳴らす鈴

梨捥いで空は自由にさせておく

あ風の動く匂いだ立冬の

めかり時かっこの中にまたかっこ

橋のつく駅の連続いわし雲

後ろに流れ瑠璃色秋のしゃぼん玉

月の窓辺のサフランの花から水音

ヴァイオリン
泣く
真葛原の
孫娘

河口へ近づく
予言は
憎しみない葦原

これ何と
蛇皮ひっぱる姪っ子に
堤中納言物語聞かせようかな

自己実現を追いかけながら
ドラッグストアで
水(二本まで無料)
汲む未来だ

夜を司書は古い奇書について語り
頷きながら椿は泥へ

木曜日みたくうっすらきらわれる

ルイボスティー香れるままの
くちびるで
少女の囁くようなフルート

歩幅の違いを埋めるように

同じ温度の肉まんおそろい

洗いたての猫の和毛にうすあかり
銀河をたたむ十月のゆび

吾亦紅
風のかたちをなお探し

りんどうの紫ふれる指がまだ母語

とうもろこしを
両手で持とうとすること

休戦の十月薔薇の雨かおる

眼球にそらを映して水の秋

船かえる　港の倉庫に蔦もみじ

ダンボールの匂いあしたは月曜日

冷えた鍵穴にさし込む冷えた鍵

みんなしてゆらゆらと
頭をゆらし
秋の風をごちそうさま

浅いところも
ここほれわんわん！

だれもみなおなじ方向
むいて泣く
映画館ではひとしく、無力

ポスターに悪戯の練り消し
政治家の鼻くそ酸性雨に溶ける

私たちがけものの名前だったころ
葡萄に夜が満ちていたころ

トラックを避ける蝶々
誰かが乗った後のブランコ
忘れ物を取りに行く廊下

大丈夫じゃないって、言って

ミルクティー
金色の呼吸

この町の過去を未来を知るような
給水塔の遠いまなざし

小一の時の良子先生が
戦争は絶対だめって
言ってたんだけどなあ

秋の陽をまとふ
　琥珀にあるジュラ紀

不手際で僕の肖像が二箇所に
　掲載された卒業アルバム

ティーパックをよじれた糸が回し
て　指に伝わるあの世の感じ

水槽の中の土曜日秋曇り

朝日射す透明骨格標本の秋

あきさめは
ぎんいろにうたい
はなびらは
ぎんいろにふるえ

むせかえるひかりのくらさ帰り花

ポタージュになればすべてが
同じ色になってしまう事の静けさ

残光の睫毛に
やどる静謐が
こぼれるときに秋は深まる

鳥籠の内側にいる心地して
朝霧に藤みだらに匂う

血を焼けば夕日の粒ができあがる

この世よりうつくしい場所
知らなくて
グレープフルーツ横に切る夜

遺跡をゆく
浴室でしか
触らないところのほうが
多い身体で

何もないスノウドームに
いるようで
まだ
あたたかい骨をひろえば

悲しいを吐きだす象を飼っていて
動物園は夕暮れのなか

ぞんざいに撒き散らしても光る波
シーグラスから声が聴こえる

曇天は鋏を研いでしまうから
あなたと上手くしゃべれなくなる

骨にねじうずめて
地球圏外生命体の心地
少し

庭先のよわい散弾銃

木洩れ日の螺旋階段駆け上り
われ相聞歌製造マシーン

敬老の日の金網のうすみどり

悲しみの末裔のようなサイダーの
泡ふつふつと飲み干して秋

祈るしかできない母も母なりに
餃子をたくさん包んでいます

してしまう後悔を避ける方法を
ときどき探しに行く地下倉庫

永遠のような形をしてリボン
悲しくないものなんていらない

生卵つややかに落ちとっぷりと
北半球を包んでく秋

遺影にはこれを使えと言ってある

猛スピードで前を横切った
メジロたちに告ぐ
私で肝試しするのはやめなさい

祖母が毎朝
正確に眉墨を引く姿が
誇らしかった

河口から海へと変わる境目が
怖い私はまだ生きている

あめんぼと
あめふらしだけ
連れてゆく

大腿に残る熱帯夜

(その他)の中で生きる

方舟を燃やした鶉買いのおとこ

エノラ・ゲイ百合は内奥より歪む

すき　夢も
むーみんだにのいんせきも

残された梨のひと切れ譲りあう
きみもわたしも長子だったね

人類はもうこれ以上発展を
してはいけないような気がする

ぬりつぶす家族の誕生日
母の宝くじは今日も当たらない

青春の死因
を
語る窓にいて
ぼうくうごうの昏がりが来る

終電にきみ
を
見送り帰る日の
ひょうりゅうびんのような星空

病室からみえる東京タワー
三日月だけが見舞いにくる

水仙の匂いをかき消すように猫

この辺にポチを埋めたの
あの秋に
いま銀桂の花を降らせて

生理用品の装飾のような
父の励まし

冬銀河マカロニグラタンが焼ける

食べかけのクッキーもらう十二月

聴診器はずし雪ふる音を聴く

鬼やんま親ガチャという蕁麻疹

深呼吸たとえば光りたいときに

軒先の欠けた茶碗に浮かぶ秋

夏の語彙みたいに波を脱ぎ捨てる
テトラポットは海の読点　

路地の片影
麦藁帽子が空に舞う
ベビーカーを押す白い女がひとり

おしぼりが熱くなります流れ星

理科室の黒い机に書きつけた
秘密の上のフナを切り裂く

針のない時計だったと気づくころ
等しく訪れる夕焼けよ

珊瑚礁を守るみたいに目を閉じて
あなたは波を綺麗に剥がす

怖くないふりをやめたら
チョコレートみたいに
夜が
少しほどけた

標本にされないように着るドレス

名のつかぬものばかり分かる
肌寒い風吹きだした休日前夜

建物の影の凹凸
チョコレートフォンデュの空を
始発でくぐる

十月の錠剤苦くなってゆく

愛してるで終わる電話の数秒の
耳にさざなみ　鼓膜一人分

たんぽぽの事で裁かないで下さい

略されて
コーンスープになってしまった

水仙と睡蓮を言い間違える
　ひとり暮らしをしたいと思う

ソネットの
十五行目に透明な
縊死

秋の宵
パセリぽぽぽと散らばせて

ピルのアラーム
秋気は頬にぬるすぎて

草原の冷蔵庫へ帰る

うっとりと躑躅に迫る
夕闇へ
音なくいれかわる双生児

唇をしかくにすぼめところてん

スローロリスの
この世が見えているほうの
眼を見つめればする水の匂い

橋のつく駅の連続いわし雲

月の窓辺のサフランの花から水音

オッドアイの羊と交換したあなた
だから鞄のなかでおやすみ

長かった黄金期　あなたのことが
好き　薄明の海を泳いで

おひさまの香り夜にコピーする
コインランドリー

スノードーム、
内側から都会の夜景

洗いたての猫の和毛にうすあかり
銀河をたたむ十月のゆび

ひそやかに
首しめられて
　　　　　柿の色

眼球にそらを映して水の秋

　霧つつむ　母の未使用冷蔵庫

ダンボールの匂いあしたは月曜日

飴玉を噛んで爆弾処理班です

舌を噛むくちづけ　月の底の夏　
風にからだを明け渡したい

映画館では誰もがあまりに
「人生」していた
ふりむくと青信号

いつかしようね、の約束
果たされなかったそれらの墓場は
どこかきれいで

自転車の銀杏踏みつぶし下校

小さな頃に戻ったみたいな
冷たく鋭い冬の朝

私たちがけものの名前だったころ
葡萄に夜が満ちていたころ

心の砂浜で
言葉の貝殻を
拾う
詩人
ひとり

幼稚園とは遠いとこに住んでる
せんせいは今日、祭りに来ない

両腕をひろげてきみは鳥でなく
水平線になってしまった

むせかえるひかりのくらさ帰り花

姿勢だけ整えておく秋時雨

ポタージュになればすべてが
同じ色になってしまう事の静けさ

砕かれた骨に身寄りはない　雪

賽の河原で副業をはじめます

この世よりうつくしい場所
知らなくて
グレープフルーツ横に切る夜

薫風の丘であなたはリトマス紙
笑ったり黙ったりしてほしい

ほしになる
ときの
ひかりは種になり
きんようびには
くだものをかう

何もないスノウドームに
いるようで
まだ
あたたかい骨をひろえば

悲しいを吐きだす象を飼っていて
動物園は夕暮れのなか

こうちゃんの家の風呂には壁中に
ポケモンパンのシール貼られて

せわしなく
テレホンカードは戻されて
冷えたガラスの向こうの吹雪

深呼吸しても、
した気にならなくて
リップクリーム味のコーヒー

ガザの子が話題となった芋煮会

敬老の日の金網のうすみどり

更新はありませんと告げられて
飲まずに捨てる冷めたコーヒー

ゆるすって言うたび割れる
無花果が
私のからだの中にないこと

永遠のような形をしてリボン
悲しくないものなんていらない

少子化が心配なのよと佐藤さんは
鯛のめだまをやさしくほぐす

カルピスとミルキー初恋の
味はどれだろ降車ボタンを探す

色彩を青に十だけ近づける
生者は

　　　　　　　　　　　遠い
　ほど美しい

天使です自分探しをしています

エノラ・ゲイ百合は内奥より歪む

いちごのような私
　　　　　　いちごのような自殺

水に濡れ滲んだ文字をなでてみる
きみがぼくから遠ざかる音

覚悟だけ先に行かせて追いかける

ほらみて脱ぎ散らかした靴
私ちっとも変わってないよ
母さん

火花からひばなへ
うつるたましいの
ほたるの舌に似たあさみどり

くろねこの瞳は
海にちかしくて
寄れば孤月を鳴らしたりする

羽を捥ぐ
骨
のうごきを見つめれば
此世の森に揺れる野葡萄

犯罪をしようとしたらこれだもん

見るからに心因性のカタツムリ

しっかりと架空の鱧を持てあます

真っ二つ化石になれば気持ちよく

蓑虫の短い夢と身近な死

栗ひとつ自己完結と言う重さ

星飛んで鱓(うつぼ)の殖える汽
水域

夜がまた来る鶏頭の肉厚な夢

こおろぎのピノキオに渡す理義字
表

　　　　　*寒露末候　蟋蟀在戸

全天を脳のかたちに持ちながら
プラネタリウムが二点を繋ぐ

Ｔシャツをめくって
おなかに入れてみる
ビーチボール、ほんの出来心で

約束はみんな未来のことだけど
そこからは切なさが勝つ距離

新月は
英語もちゃんとnew moon
ひとりのために米を買い足す

折り鶴のはらに吹き込むみかん味
炬燵で誓える範囲のことを

マイカーが必須の職にベビーカー
押して行き即採用される

祝日の人間的な自転車屋

伸びずともながいうどんを食べな
がら寿命が尽きたあとの話だ

水を飲む牡鹿のように文字を産む
万年筆は秋の静謐

ちょいフけた
くるぶしぐらいトガるハハ

十六夜に河童歩きの母を追う　

赤い羽自己的利他の親和性

夢で聞くと
声が野太いまんじゅしゃげ

珊瑚礁を守るみたいに目を閉じて
あなたは波を綺麗に剥がす

名のつかぬものばかり分かる
肌寒い風吹きだした休日前夜

中性になれないことをおもう秋
横隔膜をのばして眠る

ふらここの記憶の髪を切り落とす

けんけんにぱのない世界蚯蚓鳴く

犬と鳥
共に遊ぶか
石と棒
追っては逃げて
稲藁の上

感情以後の冥王星がどんぶらこ

居待月
家具のなかでは椅子がすき

草原の冷蔵庫へ帰る

満月におさまるような月じゃない

顔なんか塗ればいいでしょ秋風を

梨捥いで空は自由にさせておく

唇をしかくにすぼめところてん

梨まっぷたつ
断面の
月の色

夜を司書は古い奇書について語り
頷きながら椿は泥へ

なぎさ通りの
渚は
かなにひらかれて
バスのおっとりしたニーリング

吾亦紅
風のかたちをなお探し

とうもろこしを
両手で持とうとすること

愛なじる林檎だけがうさぎになる

鉢割れのざくろは燃えて踊る納屋

しりとりのいつでも自殺できる
こと

アノニマス
常盤松なら
しぐれ酒

人の世の
落つる牡丹は
誰がために
こんなところで
死んでたまるか

押せばくぼむ肌よ心よ妻の秋

ここいらをクルリンとす

なあ君の狂気は林檎の蜜のところ
ええ貴方の愛は松の葉の先端

ひたひたとポスト見にゆく
きっとない葉書
いちまいあるかもしれず

私が響かなかったのは
貴方が私を弾けなかったから

火打石うって星生む子熊の手

満ち潮で流れてくるのしらたまが
海中汁粉はふところの海

暗闇は光より速い

心には、まぶたがない

ティーパックをよじれた糸が回し
て　指に伝わるあの世の感じ

残光の睫毛に
やどる静謐が
こぼれるときに秋は深まる

木簡の香りをガラスで閉じている
文字が手首を切り込むように

前も後ろもわたしたちが
勝手に決めたものだな
　簪を当てながら

次の戰爭には、
戰勝國は
ひとつとしてないだらう。

観念のひとつひとつを八重葎

完璧な制度としてのキムチ鍋

ほしになる
ときの
ひかりは種になり
きんようびには
くだものをかう

秋深し子象は口に鼻入れて 

赤蜻蛉いつぱいですと伴走者

敬老の日の金網のうすみどり

呼んでないのに来る
正解は蚊に似てて
手で払う　ほら喧嘩の続き！

祈るしかできない母も母なりに
餃子をたくさん包んでいます

熟柿喰う　人種の壁は皮一枚

ゆるすって言うたび割れる
無花果が
私のからだの中にないこと

恐ろしい見出しに指が触れるとき
枯れていく裏庭のフクシア

コンビニの灯が灯台に見える村

軍歌なら未だ廃盤にはならず