失ったぶんだけからだが
砂になる
明日の天気も知らないままに

凪ぐまでをアザレアの芽
に
寄り添われ
深くふるえる肺のみずうみ

摘みたての四つ葉
を
見せに来るきみの
つむじに宿るじゅんぱくの花芽

毎日が無職になった次の朝

花韮が散ればそういうことだから

この夜をポインセチアに書き直す

　　　万霊節

十一月は死者の月
納骨堂(クリプト)の壁に
修道士が影絵を映す

三角巾に染み込んだ、
檸檬のにおい
私の密やかな縫い目

複雑なゆびを絡めて曼珠沙華
君がほんとに好きなのはだれ

紙パックのコーンスープを
鍋にそそぐ
音だけがする世界で暮らす

林檎剥く海を触れてきた風も

どう殴ったって和音が鳴るだけの
躁が家族に買わせたピアノ

母語だけで繋がる冬のはじまりに
花の匂いを花で喩えて

履き潰すバレエシューズを
本物の光の繭として胸に抱く

朝霧が消えて役目を終える時
病室の窓に手垢を残す

耳の奥に
冬のたまごがうまれた

冬の浮力

　　　　鬱
　　　　　　雨

銀色の枕でねむる

June bride

北欧の森のどこかにリスたちが
埋めてわすれたいくつかの恋

手にとった桃の産毛があなたより
すこし濃いから笑ってしまう

手遊びのように蜻蛉の交尾する

梨のみず持て余しつつ
ゆっくりと
星の発酵してゆく暮らし

もっと青い果てがある、
と囁かれ
朧夜のくじらが眼をひらく

ギョーザには
羽根があるのに
十一月

冬の月ひたひたひたと寝に帰る

受験生リップクリーム引いて待つ

万人に死とは平凡銀杏散る

ナポリタン噎せる憂国忌のまぢか

冬の朝
あなたの母語の音階で
少しふくらむわたしの名前

たくさんの言わないことで
満ちていた
　立冬の日の月は低くて

聖典の模倣のような冬の夜の
すべてが可燃性だったこと

髪の香の向うのひとに貸すカフカ

のんきなトーテムポール
歩く歩く
空を見上げる
あるくあるく

金木犀耳はひかりのかたちなす

就寝前、可愛くなりたいと思った
レンチンするみたいに眠る

名前の分からない花を、
小瓶に生けた。
今日からよろしくね。

冬麗にメリーゴーランドの鏡

街路樹の剪定されたあかるさを
わたしもうつくしいと思うけど

出国ゲート超えて私は人になる
それまでは桃色のおとうふ

花の青臭さばかり嗅いでいる

初冬の水路にずっと空がある

鏡面を保ちつつ湧く水の様に
怒らないけど許さないから

水かきの無い手
宇宙に戻る体温
少しずつ忘れることが

どうして必要だったか

きっとぼく十年先もこのままで
満員電車の中に一人で

独特な感性持ち合わせないので
前世はたぶん椋鳥らへん

ね
ねむいね
　むいね

公園の宇宙船から来た子ぐま

なつかしい空き瓶、
ひかりさす角度、
ことばにしたらはかない
じかん

少しずつ削られた生活ゆえの棘

花カンナ晴れているから黙りたい

この町はほとんどしかくでできて
いて遠心力でふくらむカーブ

政治家のポスター居並ぶ国道を
夜勤に間に合うように走った

倍以上子規より生きて吊し柿

寒林は風林にして鵯が鳴く

たちあがりやすいフードを
ととのえる

恋がきている　二日月がみえる

銃を前に銅板の母語読まされる

血が水に溶け出すように
青空に
祖母の煙が薄まってゆく

ふれるたび河口の鍵は酸化して
わたしに指紋があるのが憎い

ちりちりと等速に降る初雪に
きづかず祖母は新聞をよむ

水晶のほどけるような悲しみに
まだ舷を離れない人

寂しさは
わずかに裂けた柘榴から
垂れている水
そういう苦悩

脱水症の短い夢にうなされて
ウツボが階段を垂れ下がる

雨駆ける犀一頭のちょうどその
しずかさできみは逝ってしまった

くりかえす
雪を
死を
いとぐるまは

受け皿にミルクをしいて
あなたにも
嘘がわかると雪はいいます

追いかけてくるスーパーのポリ袋
犬みたいですこしうれしい

骨二百六個を納め終えた日の
口座解約の朱肉あざやか

何でもないよ、と言う
少し濃いカルピス

古い方の名前で呼ばれる
にんげんの気配を
消して歩く日の
午後

凪ぐまでをアザレアの芽
に
寄り添われ
深くふるえる肺のみずうみ

摘みたての四つ葉
を
見せに来るきみの
つむじに宿るじゅんぱくの花芽

トルストイ
  さがし泳げば
図書室に満ちる和音のような真空

さよならとLINEの絵文字
秋夕焼け

終戦を告げて午前の進路室

五七五…
これより先は
有料の
お客様のみ
ご覧ください

紙パックのコーンスープを
鍋にそそぐ
音だけがする世界で暮らす

林檎剥く海を触れてきた風も

冬の虹クラリネットを指で支えて

秋までの花の名全て
胸に敷きつめて
優しい冬になりたい

履き潰すバレエシューズを
本物の光の繭として胸に抱く

耳の奥に
冬のたまごがうまれた

冬の浮力

　　　　鬱
　　　　　　雨

銀色の枕でねむる

June bride

回らないガスメーターに救護室
友が言うには東京も冬

掛声に湯揉の飛沫冬の星

スプーンの音まろやかに文化の日

自習室で真冬で片親パンあまい

秋と数字の媒体として立ちつくす
古本市に消えそうなひと

もっと青い果てがある、
と囁かれ
朧夜のくじらが眼をひらく

夕映えのベランダで洗濯バサミ
揺れて光って明日から冬

帰り花私を母が忘れてく

上手く取り出せないだけね
母さんの水底を
揺蕩いながら私は鮒になったのね

風に息吹きかけてみた秋の午後

冬の朝
あなたの母語の音階で
少しふくらむわたしの名前

躊躇いを
わかち合うとき
眼窩より
白詰草の野はひらかれて

開閉はくりかえされていて
蓮の花
聴診器かしてください

たくさんの言わないことで
満ちていた
　立冬の日の月は低くて

秋思とはバスの停留所ふたつぶん

ら・フランスひらがな熟す香冷く

聖典の模倣のような冬の夜の
すべてが可燃性だったこと

髪の香の向うのひとに貸すカフカ

以上でも以下でもなくて青葉闇

食前の納豆乾く 冬の星

就寝前、可愛くなりたいと思った
レンチンするみたいに眠る

空の錠剤
僕の生きた痕跡、

もみじ散る
踏切の音
手が冷えて

初冬の水路にずっと空がある

ときどきは
泡になってもいいですか
空っぽの箱ふえる寝室

なんとなく辛そうにしてみる
溶けかけの氷がおいしい

なだらかな
冬のあらわれ
思春期は
バニラアイスの稜線をもつ

たましいと身体の接ぎ目
肌はぬるく
来世は冬の朝になりたい

流星雨らでんの海の波立って

おおきめのうなぎが好きで
おおきめのうなぎになりたくない
ひとがすき

平熱と微熱の差分ほどですが
隣座っていいですか　好き

水晶のほどけるような悲しみに
まだ舷を離れない人

雨駆ける犀一頭のちょうどその
しずかさできみは逝ってしまった

くりかえす
雪を
死を
いとぐるまは

窓ガラス
わたし
を外に貼りつけて
夜が内側に滲みはじめる

受け皿にミルクをしいて
あなたにも
嘘がわかると雪はいいます

骨二百六個を納め終えた日の
口座解約の朱肉あざやか

ナスのトゲ刺して
「いたい」と呟いて
少女の声を
自給している

何でもないよ、と言う
少し濃いカルピス

今日聞いた声は
講義と動画だけ

古い方の名前で呼ばれる
にんげんの気配を
消して歩く日の
午後

客席を埋め雑食の大臼歯

死者の日*よ蓮根髑髏の素揚げ食
う

*Día de
　los Muertos

どう殴ったって和音が鳴るだけの
躁が家族に買わせたピアノ

きみはきっとおばけのときの生活
が恋しいんだろー、って吠える犬

老年を超越しても吹雪くのよ

健やかにミラーニューロン育つ秋

百年後あなたに返す骨いっぽん

スマホ這う
指と
落体追う
お眼眼

満員の 電車の中に押し込まれ
どの手すりにも 届かぬ不安

手にとった桃の産毛があなたより
すこし濃いから笑ってしまう

湯豆腐を崩さないよう掬いとる
崩れたとこがわたしの痛み

政治的中立ころりんと語る

今年の晴れも
あけびが嘲笑う
めしべを隠した青い私に

ギョーザには
羽根があるのに
十一月

松という即身仏よ朔の風

言葉より弱くて
心より強いもの

立冬の弱い散文止まらない

生まれてきては
それはそうなんだけど

のみこむまでに
のたうちまわる人もいて

大切な貴方と喧嘩はしたくない
それでお別れは嫌だから
だから

でも私は

言い草や仕草を摘んで
粥にした

風呂キャン DaY
鬱りたくなる
風みだ邪ィ🍬

出国ゲート超えて私は人になる
それまでは桃色のおとうふ

存在を赦されたいと思う日の
棒のアイスにでてくるアタリ

雄弁な者に背を向けて咲いてる
アザミ　子供は好きなだけ泣け

鏡面を保ちつつ湧く水の様に
怒らないけど許さないから

君の影、あくび、瞬き、ため息を
まだ名前のない単位で数える

できたばかりの傷のよう接吻は

爺ちゃんの
モノマネずっとしていない
爺ちゃんはもう死んでいるから

地層になる。君と歩いた雨の日の
不確かなままのなだらかな坂

来年の手帳カレンダーを母に
あげると私の未来も減る

惑星の蓄音機めく水仙花

水際で食い止めるから咲いてみて

祝日はひとえに昏れて手の淫ら

客席を埋め雑食の大臼歯

紙パックのコーンスープを
鍋にそそぐ
音だけがする世界で暮らす

冬の虹クラリネットを指で支えて

つま先を
不純に使いきることを
決めたのは桟橋のかえりみち

秋寒や翳るわたしの原子核

飛び立った鷺の波紋が届きくる
心の奥の石庭にまで

梨のみず持て余しつつ
ゆっくりと
星の発酵してゆく暮らし

寒くなるほど
うれしい腕を遠くまで
いずれは山葡萄の垂れるまで

弔砲を撃つよ寝耳は列になる

秋と数字の媒体として立ちつくす
古本市に消えそうなひと

松という即身仏よ朔の風

上手く取り出せないだけね
母さんの水底を
揺蕩いながら私は鮒になったのね

雲丹飲んでしずかに紺となる夜空

躊躇いを
わかち合うとき
眼窩より
白詰草の野はひらかれて

開閉はくりかえされていて
蓮の花
聴診器かしてください

火に寄れば燠に安定してからの
あなたへ一度敬語が混ざる

立冬の弱い散文止まらない

どぶろくつてぽつとんつて
おなかつてねむい

ミキサーを買った帰りの背筋の凩

テレビの中の紅葉に敬礼
まあ　お茶でも一服

降るように叱る叔父貴は
前世では
秋の銀杏のにおわないほう

言い草や仕草を摘んで
粥にした

山眠るかかとの靴下の薄さ

君はぼくがはじめてだから
いのちが
キウイの皮を放っておけば
できること。

塩と砂糖まちがったまま薬指

持ち寄った首の長さが揃った

はつふゆの後天的なペアシューズ

たましいと身体の接ぎ目
肌はぬるく
来世は冬の朝になりたい

風のない眠りに胸は重湯なの

花カンナ晴れているから黙りたい

振れば手は枝になり損なう万緑

ふれるたび河口の鍵は酸化して
わたしに指紋があるのが憎い

セーターの下に水蒸気を貯める
シャーベットにはブレーキがない

水際で食い止めるから咲いてみて

的を見て
季節が分かる
今は冬

うろこ雲揺れる万国博覧会
膝のすり傷まで愛おしい

一筆書きだけが熱なのかと思う

メロスの走った跡が
ノートに薄く残る午後

この夜をポインセチアに書き直す

紙パックのコーンスープを
鍋にそそぐ
音だけがする世界で暮らす

母語だけで繋がる冬のはじまりに
花の匂いを花で喩えて

目の前の仔羊がまたメエと鳴く
ぼくはあなたに嘘をつけない

ひまわりの再演

ここにいましたね

聞き返す金平糖を期待して

星空を注がれてから夢見がち

耳の奥に
冬のたまごがうまれた

冬の浮力

　　　　鬱
　　　　　　雨

わたしたち蝶蝶結びだったのね
ほどけていても離れられない

手にとった桃の産毛があなたより
すこし濃いから笑ってしまう

手遊びのように蜻蛉の交尾する

スプーンの音まろやかに文化の日

散らかして倅とつくる玉子酒

いくつかの記憶のありか金木犀

人工的でも
ジャスミンはジャスミンで、
恋は恋のかたちをしていた

秋思とはバスの停留所ふたつぶん

冬眠中毎日夢をみていたら

ら・フランスひらがな熟す香冷く

聖典の模倣のような冬の夜の
すべてが可燃性だったこと

髪の香の向うのひとに貸すカフカ

交差線
見せてよフランネルシャツの

以上でも以下でもなくて青葉闇

雨。
ぶったりしない。
君と歩けなくてかなしい。

金木犀耳はひかりのかたちなす

体合わせてもこぼれ落ちる
寂しさをこそ夫婦と呼びます
きっと

人生に爪を立てても痛いのは私
千手観音さま、五千本の指で
夜をくすぐって

冬増ゆ湯び先　ふゆゆゆゆ

初冬の水路にずっと空がある

水かきの無い手
宇宙に戻る体温
少しずつ忘れることが

どうして必要だったか

持ち寄った首の長さが揃った

できたばかりの傷のよう接吻は

桃缶を開けてとびちる桃の肉

公園の宇宙船から来た子ぐま

タイマーを壊してずっと春のまま

なだらかな
冬のあらわれ
思春期は
バニラアイスの稜線をもつ

花カンナ晴れているから黙りたい

倍以上子規より生きて吊し柿

まぼろしがまぼろしをうむ
湯葉冷める

ふれるたび河口の鍵は酸化して
わたしに指紋があるのが憎い

耳搔きで価値を削った空回り

地球儀のなかはめこめない謝肉祭

カタカナで呼ばれる故郷月天心

雨曜日のそらまめ君の肺をおもう

夏惜しみぼうっと滑り台に立つ

紅葉はカサカサと
葉の音がするのにイチョウは
ぎゅむりと云う謎

先生は箸休めではありません

パルテノン
　図書館の中
　　　山眠る

夢を見た
君がいた
目が覚めた
君を置いて来てしまった

オリオンの空が鼻腔を凍らせる

凪ぐまでをアザレアの芽
に
寄り添われ
深くふるえる肺のみずうみ

祝日はひとえに昏れて手の淫ら

花韮が散ればそういうことだから

客席を埋め雑食の大臼歯

死者の日*よ蓮根髑髏の素揚げ食
う

*Día de
　los Muertos

三角巾に染み込んだ、
檸檬のにおい
私の密やかな縫い目

あぶなくて削られた角
待ち合わせ場所をなくして
すれちがう私たち

林檎剥く海を触れてきた風も

どう殴ったって和音が鳴るだけの
躁が家族に買わせたピアノ

つま先を
不純に使いきることを
決めたのは桟橋のかえりみち

履き潰すバレエシューズを
本物の光の繭として胸に抱く

老年を超越しても吹雪くのよ

百年後あなたに返す骨いっぽん

耳の奥に
冬のたまごがうまれた

冬の浮力

　　　　鬱
　　　　　　雨

深呼吸を楽器として
沈黙さえも曲にする
身体は小さな音楽堂

飛び立った鷺の波紋が届きくる
心の奥の石庭にまで

梨のみず持て余しつつ
ゆっくりと
星の発酵してゆく暮らし

寒くなるほど
うれしい腕を遠くまで
いずれは山葡萄の垂れるまで

凍星が撫でる名の無い無精卵

スプーンの音まろやかに文化の日

秋と数字の媒体として立ちつくす
古本市に消えそうなひと

ギョーザには
羽根があるのに
十一月

冬の月ひたひたひたと寝に帰る

いくつかの記憶のありか金木犀

松という即身仏よ朔の風

万人に死とは平凡銀杏散る

上手く取り出せないだけね
母さんの水底を
揺蕩いながら私は鮒になったのね

雲丹飲んでしずかに紺となる夜空

冬の朝
あなたの母語の音階で
少しふくらむわたしの名前

躊躇いを
わかち合うとき
眼窩より
白詰草の野はひらかれて

ら・フランスひらがな熟す香冷く

「じょーきょーする」
　　柳葉魚を齧ってふという子

聖典の模倣のような冬の夜の
すべてが可燃性だったこと

髪の香の向うのひとに貸すカフカ

以上でも以下でもなくて青葉闇

言い草や仕草を摘んで
粥にした

冬麗にメリーゴーランドの鏡