甘噛みをしらない
太陽は街のすみで死んでいる

銀河をすくった貝の内側に
誰かの記憶が光っている

会えない日だけ
に
またたく百合があり
蛍光ぺんのかすれをなぞる

さみどりに満ちた
廊下へ
おどりでる
みぎのつまさきから春になる

肺胞のひかりを
喉へせりあげて
みもざのようなきみのこくはく

ひばないろのほね、
の名前を
すこしずつ
おぼえるきみに倚りかかる午後

かげふみの終わりに
友がつかまえる
つくしのような地球のしっぽ

春の日の暮れてしばらく
鍵を挿す音の速さに父だと分かる

再起力*トングで掴む桜餅
　　　
　　　*resilience 

保冷剤、頬にあてて
わたしに至る前の
ゆきやなぎ

死ぬときは何時も一人だ
アンパンマン
だからごはんはふたりでたべる

「俺のため
あるんじゃないんだ天国は」
犬より安いシャンプーを買う

形式上
同意書にサインして
形式上
死なせてもいい人間となる

エイプリルフールから新年度

触角を巻くのに忙しい子は
朝ごはんを食べなくなった

自転車が雪の山からはみ出てる
ぜんぶ分かろうとしなくていいよ

あかねさす光のほろび予報士が
気象画面に雲をかぶせて

新緑のどの樹も空を指す剣

譜面台を持ってきて置く青嵐

指かるく吸うとわたしは
躑躅より海に似ている
裸足で来なさい

風汲めば木漏れ日が爆ぜ
冷ややかな汗が伝う肌
戦火を知らず

プリンセスロッド園児から保育士

この部屋で僕が泣く日も笑う日も
俯いているスタンドライト

六日目の朝には
みんな泣いちゃって
おまえが海を思いだすから

心臓の位置も知らずに
丸まった猫は一つの臓器のように

前世から予約していた夕焼けを
美術室まで受け取りに行く

仰向けで海の起源を想うとき
眼裏で揺れている吊り革

滝ざくら青空になるまで待つわ

不機嫌な鉛筆削り花の雨

地元には人魚を祀る駅がある

満開のさくらついばむ鵯の
フラワーシャワーに望むものとは

この街できっと知り合う客人を
もてなすために揃える食器

もと光る竹の子なんてなく夜更け

指切りを
　ほどくたび
虹が生まれる

春は僕の星を探している港

東北の夜の帳は
少しだけ知ってる夜の匂いと違う

小川には光の脈がながれゆく
君とは月の話ができない

春の月
パペット人形を抱きしめる

文明が終われば
月は海に落ち
泳ぎ　ちいさな波紋を残す

心臓はみんな緋色で山躑躅

にわとりのあしのつちいろ鼓草

答弁はポエムのようで初桜

皮の下が腐る桜に触れている

蒲公英の絮の半分欠けている

花陰にカレーは飯をまわりこむ

血管を褒められてから菜種梅雨

花びらの上
歩いていたら
いつから僕は
俯いていたか

じゃんけんが手段に蓬餅の粉

風船を割る間違ったやり方で

晩春の水が花瓶の形です

地下鉄のベンチに食べる桜餅

横たわるあなたの夜の河を思う
目が明るいと言われてからは

木蓮のつぼみふつくら雲ひとつ

啄木忌
こきゅこきゅこきゅ
と皿洗う

どうすることもできない
白アスパラ茹でる

木漏れ陽の中だけを翔ぶものの影

春の駅僕らパステルカラーめく

痩身のあなたと夢にすれ違う
祈りのように日傘を抱いて

飛ぶときに
耳のうしろを鳴る風よ
町いちめんに咲いている何か

スイートピーのくちびるのとこ、
いいですか

あなたから薬をもらう
白昼の
ヘリコプターがあんなに遠い

少年とケンサキイカの青い旅

猫は歩く
ふむすふむす
知らないくせに
ふむすふむす

水を飲むように桜を見ていたい

枯れてしまいましたねスミレ
レントゲンみたいに私を見てたね
スミレ

八重咲に憎悪はひらきゆくことを
花とは花の裂けゆく過程

花林糖あかるくくだく口元を
ときおりあふれ出てくる舌よ

花冷えの
エクレア
二つ

海月荘

春雨
名辞　時刻
くうくう
茴香油

皿揺れながら水を沈んで春の闇

　　月に夜を被せる

ピカピカの十円玉を握りしめ
弟たちのおやつを買いに

お絵かき帳の
結婚式の花嫁さんは二人
ママが二人いる子への憧れ

砂浜の夢を見ていた
還れない
家をおもってまぶたを伏せる

砂時計の砂が出るのと出ないのは
どちらが意思だろう　遠い相聞

スプーンの窪みに
舌を沿わせれば
いつか
かなしくなるためのひと

ふりーぢあ盲導犬が歩み寄る

花曇だあれもいない長廊下

からくりに似てからみあう霞草

はるってなんか
しにづらくってきまずい
なんかいぬがぽかぽかだし

横顔のきれいな人
を想うとき
胸をさまよう土星のひかり

すり鉢に胡麻を
ろりろり鳴らしつつ
なべて童謡めく懐古談

クッキーの角までふくれ花明かり

こすれてはふくらむ
春の便箋に
ことばは小川の加速度をもつ

りんどうを竜胆と書き
心根のうろこを
ひらくごと
伸びを
する

搭乗のゲート
しずかに連なって
朝陽に
風切り羽のやさしさ

越境を終えた翼のようにして
青い器におくカトラリー

ぼんやりと浜を鳥影　砂時計

鳴り出せば減速し出すオルゴール

あの冬きみは帰省をやめた

花冷えの日には街じゅうのねじを
右に回す仕事をしています

風光る日傘も正六角形の影

チョコミントを好きになって
たんぽぽの綿毛吹く

コーラの泡が消える頃
葉桜の匂いがした
子犬が足元に来た、

亀の沈黙を思わず
鯨の見る空の
まぶしさを思わず

草むらに寝転びたいのです、
で始まる手紙

黒山羊は手紙を食べたことにして
ひとりの夜に何度も開く

社外秘と捺された書類を胸に抱く
君にもらった恋文みたく

春の雨胸を濡らせばあたたかく

硬筆のインクにじんで紅梅咲く

いぬざくら貴種流離譚かもしれぬ

こみゅしょうの砦のマスク水芭蕉

あれが海、むこうが山
と　母にみせ
暮らすんだった
いぬ抱く初音

学生時代に暮らした町
変わらないのはお城と和菓子屋
四十年経っても凛として

絡まった糸は解けるか、
捨てられるか
さよなら母さん
さよなら父さん

ピウ・モッソ　
風を数える仕事には
風のしぐさの記述を含む

生クリームの付いたナイフ。
ピンク色のごみ収集車。
キッチンに花を飾る母。

林檎酒の気泡見ていて飽きていて

メロディにならない口笛が
ひとりぼっちの蓮になる

トープ色のひざかけに沈む
祈りは銀河の残り香をさらう

力加減がむずかしい
蝿のはねを透けるだけの
ひかりのなかでねむるとき

僕らの孤独を夜に焚べれば
月光はいっそうさざめく

ゴムボールとって戻って来た犬が
去勢したあとの笑顔を向ける

満員電車から放たれ
静かに丁寧に春巻を巻く

有袋類になりたがるわたしたち

くるぶしは光の溜まり場
遊園地はおもちゃ箱
そう、幸福とは腑に落ちるもの。

ぎゅっぎゅっと
思い出を飴細工して
銀色の包み紙を
ボッケに忍ばせる春の日

アスファルト　鉄が轟く音が止む
鳥が工場で子育てしてる

ひとびと、と口にするとき
燃え上がる星よ
わたしは冬の機関車

土曜日に生きていたいと思うかは
知らない　だけど水が届くよ

ねむってもねむっても夜
てのひらを
すべりおちてく葡萄のにおい

尖塔に
蔦
巻きのぼる
どこにでも行ける女の子や男の子

肋骨ばらばらになる
海原や木香薔薇を匂わせながら

やすみの日には
最寄駅がふたつある
パン屋のあるほう、
本屋のあるほう

iPhoneで
くぢらを飼つてゐる
今日は
かなしい夢をみてゐるみたい

異星人襲来春は仲頃に

今日もまた誰かの謝罪が
置き配の荷物みたいに
晒されている

雨に洗われた壺には敵わない

オルガンが錆びるまで
火の番をする

いつもより
一時間早く目が覚めた日の
アルデンテのパスタ
のような午後

ポワソンを毒と間違う花曇り

人混みの余韻をまとう朝の風　
帰って来ない昨日の祭り

擬宝珠のしろきこと涅槃はしらず

ヨーグルトをジャムで汚して
復職が成らないままの
暮らしが永い

八宝菜　鶉の卵を玉として

さみどりに満ちた
廊下へ
おどりでる
みぎのつまさきから春になる

ひばないろのほね、
の名前を
すこしずつ
おぼえるきみに倚りかかる午後

かげふみの終わりに
友がつかまえる
つくしのような地球のしっぽ

春の日の暮れてしばらく
鍵を挿す音の速さに父だと分かる

保冷剤、頬にあてて
わたしに至る前の
ゆきやなぎ

死ぬときは何時も一人だ
アンパンマン
だからごはんはふたりでたべる

背中から翼が生えて入学式

自転車が雪の山からはみ出てる
ぜんぶ分かろうとしなくていいよ

譜面台を持ってきて置く青嵐

育児家事時短勤務後育児家事

美しい橋です。
ランナーもみんな
すこしゆっくり走っています。

その橋をわたりきれない声たちが
光るぶんまで手をふりたいよ

盲信のためにあなたは生きていて
終わるまで編み物をしています

花曇り消火栓ならありますよ

遠足の日に足音を忘れる

この街できっと知り合う客人を
もてなすために揃える食器

もと光る竹の子なんてなく夜更け

東北の夜の帳は
少しだけ知ってる夜の匂いと違う

にわとりのあしのつちいろ鼓草

蒲公英の絮の半分欠けている

手術跡なぞれば春の虹ふたつ

花びらの上
歩いていたら
いつから僕は
俯いていたか

イヤホンの世界だけが潤っていて
あのころ僕はレモンの惑星

啄木忌
こきゅこきゅこきゅ
と皿洗う

本棚に檸檬が並ぶ古本屋

春の駅僕らパステルカラーめく

しずくから楽譜に変わるまでは虹

あたたかいままの椅子ごと
連れ去って、
わたしの四月を盗ってください

少年とケンサキイカの青い旅

花冷えの
エクレア
二つ

海月荘

花曇だあれもいない長廊下

横顔のきれいな人
を想うとき
胸をさまよう土星のひかり

クッキーの角までふくれ花明かり

やわらかい諦めがあり
飛行機は
ゆきを見つめて速度を落とす

花冷えの日には街じゅうのねじを
右に回す仕事をしています

黒山羊は手紙を食べたことにして
ひとりの夜に何度も開く

学生証切れたら道に水芭蕉

入学式 帰る親子に 逆らって
病院通う 花の坂道

力加減がむずかしい
蝿のはねを透けるだけの
ひかりのなかでねむるとき

ゴムボールとって戻って来た犬が
去勢したあとの笑顔を向ける

清潔なソフトクリーム
舐めたこと
あなたが
ずっと緑地であること

花冷えに私服で踊るバレリーナ

薔薇園の夜を歌っている紅茶

一度だけ君が使った
歯ブラシの水色
洗面台に海鳴り

はいれたら はいってきてね
上履きは
白さを増して少し重くなる

オルガンが錆びるまで
火の番をする

いつもより
一時間早く目が覚めた日の
アルデンテのパスタ
のような午後

ポワソンを毒と間違う花曇り

そう言われましても肺に白い百合

甘噛みをしらない
太陽は街のすみで死んでいる

あたたかい言葉をたべる
わたしは、人を産んだことがある

耳たぶ、にほしい
あなたの句読点

あざらしの手つきで拍手する
きみのしゅくふくは
純白のこもれび

さみどりに満ちた
廊下へ
おどりでる
みぎのつまさきから春になる

肺胞のひかりを
喉へせりあげて
みもざのようなきみのこくはく

かげふみの終わりに
友がつかまえる
つくしのような地球のしっぽ

梅林にあなたいつまでそんなふう

春の日の暮れてしばらく
鍵を挿す音の速さに父だと分かる

チューリップ、菜の花、
れんげ、桜の木、
赤子が吸いこみ春となるもの

去る君のパンティライン藤の花

はちみつに混じる空気のような嘘

黙示録語る未来を紙魚走る

紫の色声になりすみれ強迫症

ぶらんこを漕いでは付け足すデス
ノート

再起力*トングで掴む桜餅
　　　
　　　*resilience 

死ぬときは何時も一人だ
アンパンマン
だからごはんはふたりでたべる

しあわせを
知らない二人で信じてる
いつか血汐の出ないままごと

形式上
同意書にサインして
形式上
死なせてもいい人間となる

触角を巻くのに忙しい子は
朝ごはんを食べなくなった

あの山の瘡蓋は何だ
と聞くと
それを桜と呼ぶのだという

あかねさす光のほろび予報士が
気象画面に雲をかぶせて

新緑のどの樹も空を指す剣

指かるく吸うとわたしは
躑躅より海に似ている
裸足で来なさい

速いもの
みな見送って眠くなる
体温は抱き枕にもなる

ポリティカル・コレクトネス
なぜていく影を
なつけるみたく日傘でいたね

育児家事時短勤務後育児家事

溶けそうに重たく雪柳の白

美しい橋です。
ランナーもみんな
すこしゆっくり走っています。

死んでからビンゴ大会までの暇

くっついた磁石に生を感じてた
自分が男だったからだな

たとえば
たとえばたとえば
匙を落とした
痺れる手

その橋をわたりきれない声たちが
光るぶんまで手をふりたいよ

たくさんの国旗をはきだすように
してマジシャンはせせりを食べて
いる

盲信のためにあなたは生きていて
終わるまで編み物をしています

ことば未満の声を連れ足跡を
雪に残して飛び立った鳥

仰向けで海の起源を想うとき
眼裏で揺れている吊り革

炭酸のように予感が吹きこぼれ
あさっての夕焼けを組み敷く　

Tシャツの折皺
去年の私は
こんなふうだった

遠足の日に足音を忘れる

清潔と潔癖となり合う春は
白い指から逃れなければ

巫女たちが一心に読むバーコード

もと光る竹の子なんてなく夜更け

東北の夜の帳は
少しだけ知ってる夜の匂いと違う

小川には光の脈がながれゆく
君とは月の話ができない

春の月
パペット人形を抱きしめる

心臓はみんな緋色で山躑躅

わたしにはあなたに言わないこと
がありそれはわたしの花壇なので
した

花陰にカレーは飯をまわりこむ

洗剤の腹へこませて
ぽ　と出る
小さな泡の終わりまで見る

花冷えのシートマスクに目鼻口

手術跡なぞれば春の虹ふたつ

花びらの上
歩いていたら
いつから僕は
俯いていたか

風船を割る間違ったやり方で

地下鉄のベンチに食べる桜餅

遠目からお母さんに見える人
だんだん夢から覚める
夜桜

話せば長くなる胴体部

半ドアですよ、その走馬灯。

婚姻に押しのけられるシネラリア

木漏れ陽の中だけを翔ぶものの影

本棚に檸檬が並ぶ古本屋

疑って別れて菜の花がきれい

コンビニの夜勤のあとに眠るとき
どのアサガオも息を潜めて

ことごとく雲逃げてゆき
晴天は
文字を抜かれた遺書に似ていた

あなたから薬をもらう
白昼の
ヘリコプターがあんなに遠い

ドルペッグされて泣いてる
ヒロイズム

バラバラの蜥蜴だらけの
俺の辞書

水を飲むように桜を見ていたい

燕来る
進む　進む
寂しい

八重咲に憎悪はひらきゆくことを
花とは花の裂けゆく過程

花林糖あかるくくだく口元を
ときおりあふれ出てくる舌よ

皿揺れながら水を沈んで春の闇

　　月に夜を被せる

珈琲の湯気見上げれば剥き出しの
梁私のも見せてあげたい

スプーンの窪みに
舌を沿わせれば
いつか
かなしくなるためのひと

ふりーぢあ盲導犬が歩み寄る

ぬぎたてのパジャマみたいな

白湯をちょうだい

はるってなんか
しにづらくってきまずい
なんかいぬがぽかぽかだし

苦手なら大砲撃たなくていいよ

すり鉢に胡麻を
ろりろり鳴らしつつ
なべて童謡めく懐古談

クッキーの角までふくれ花明かり

こすれてはふくらむ
春の便箋に
ことばは小川の加速度をもつ

搭乗のゲート
しずかに連なって
朝陽に
風切り羽のやさしさ

やわらかい諦めがあり
飛行機は
ゆきを見つめて速度を落とす

越境を終えた翼のようにして
青い器におくカトラリー

鳴り出せば減速し出すオルゴール

あの冬きみは帰省をやめた

風光る日傘も正六角形の影

もう着ない服のように覚えていて

亀の沈黙を思わず
鯨の見る空の
まぶしさを思わず

思い出の
皮を剥かれて
死ぬイチジク

流れのまま
ずうっとあなたが好きです、
と伝えて揺れの収まる
鞦韆

黒山羊は手紙を食べたことにして
ひとりの夜に何度も開く

春の雨胸を濡らせばあたたかく

犬ふぐりスコーン焼けば誰かくる

こみゅしょうの砦のマスク水芭蕉

ほたる燈まけるせんそう手に灯す

今もこの空のどこかで
不妊虫が飛んでいる
ただそれだけで
世界が輝いて見える

ツチノコの餌にとっとけ紅生姜

蝶葬の国に存在しない冬

金星はときおり人の目を借りて
焼きそばを焼く人を見ている