呼吸器に似ていちめんの二季草

月面に来てウリエルは樹のかたち

まばたきをする度
星の散ってゆく
まつげのきわのすみずみと、あお

逆光にまみれ
みぎてを振る友の
しなもんぱいのようなあやうさ

ゆんわりとほどける
らむねびんの影
しがつに捨てたやくそくがある

花びらが自重に落ちていく夜を
さわれずにいるきみの退屈

梨になるための座学のながいこと

ていねいにバーガーの包みを
たたみつつ　
さよならの意味考えている

桃割つてどろどろとした風が吹く

追悼ミサ樹液は白く夏に入る

　幻肢痛

痛みこそ不在の知覚
燃やされた骨と肉にまで
マッピングされていた私

喉の奥子猫が泣いてる場所がある
雨の日の朝ちょっと寂しい

あれはまだ土のかぶったキノコに
見せかけたもぐらの潜望鏡

水切りが視線の先に追いついて
鳥の飛翔を見上げるあなた

透明な傘の雨粒白躑躅

手を振ってバンド解散する立夏

紙スプーンで
ゼリーと木漏れ日を掬う

雪のせいでしたか
海洋図鑑よりずっと
温かかった出目金

サウンドをオフにするたび
ぶるぶると
風に震えやすくなる鼓膜

蒲鉾と向き合ってみることにする

積読のジェンガ崩れて春の塵

指切りの有効期限　夏祓

昼間には幻をみるほうなのに
生家の窓辺でキスをしている

撫でられて
しまえばどこも柔らかく
ピアノは強く弾くほど綺麗

〈ほんとう〉にたどり着けずに
試着室の鏡に雨が匂う土曜

遠蛙ときどき夜を食べている

風薫る嘘をつかない介助犬

アトリエに鍵穴ばかりあいている

傷口とタルトタタンの似たところ

電車には無数の喉が詰められて

まだ青い和音
夏野が濡れている

夏の夜
風は　
鉛筆の匂い

波
鏡
今朝の悲しみ
夏薊

心臓に似た
青い花の覆い尽くす海があって
そこには故人がいる

キャンドルは緋縅蝶を灯している

着膨れて甘い匂いのおじいさん

短夜の本におさまる栞紐

入梅の耳に涙があったかい

生きるのがつらい
菜の花にダイブせよ

はつなつは
空き地の土管の中にある

泣くだけの
肺活量が足りなくて
陽だまりに伏す
水風船

豆という情けのなさよもう寝るよ

霧吹きにサボテン育つタワーです

スクエアの私を父にするメガネ

春の終わりを
極まりながら咲く花の
満開という鏡面世界

うつくしい字を書いている
きみの髪が
烏の羽に見えてくるまで

下り坂ゆけばあらゆる躑躅から、
まひるま、蕊を向けられている

雨の日をゆっくり踊るわたしたち
アイロンの深く冷めてゆくまで

銀シャリまぜた心の俳句じゃし。

ラファに月
白旗だけが風にある

すべりひゆ悲しい音のする楽器

花虻の群れにかくれて会いに行く

春光のいれものめいている校庭

向日葵の眼の一斉のなかに僕

白ぶどうの部屋が一室あいている
岬のように夜をねむれば

発言はすでにヨットに乗っている

傘を忘れたわけじゃなく
ずぶ濡れの勇姿を見せたくて

故障してユリに凭れてみませんか

三日月だけの永遠が欲しいのです

風車は風を伝えます。
私は粉雪歌えます。

睡蓮の池にも雨の夜が来て
たちまち睡蓮はぬれてゆく

片耳に昏い水脈山桜

陽炎の巡回図書館停車中

トープ色の惑星市場罌粟の花

不眠症を
遠く郭公

青セロファン

古古古米と言う時我等生真面目に
少し早口なアイデンティティイ

はつなつの
空腹のあるきびしさに
折畳み日傘やわらかく
反る

墓石を磨くブラシは
花のごとひらいて
朝の中に
佇む

びーどろ　びーどろと
外殻のとれた　じいちゃんが
畑を歩く 

昆虫採集する為
南太平洋の島へ
行くことにした
自分に
途方に暮れている

夕焼ける
ように
毛布をかけられて
あなたに託したい街がある

初夏の陽はすこししめって
さよならのあった
別れのほうが少ない

鼻濁音うすく伸びゆくような朝
たまごは水の声でやぶれる

ピーナッツ
じゃずじゃず砕き
はじかれた夏の濁音
踊らせている

うたうとはうったえること
丹田に
ふるえつづける水鏡がある

星空のように瞳は
傷ついて
テディベアまだ
抱かれるかたち

耳をすませてきこえるでしょう

さあ、風路　そこには、風路

きこえるでしょう

ゆるやかに哀歌は果てる
着水をする水鳥の姿を借りて

ただゆっくりと

あなたを知ってゆくことの

初夏の背表紙、晩夏の栞

泡に見る生まれて消える愉しみよ

こころバッキバキに折れてるけど
生きようかな

風よ吹け
海賊船だ
カッターシャツ

透けてゆく足こそばゆく銀竜草

パルティータ蝶骨に音あおく降る

　　　　　　　　　　　
　　　　　夏

消火器が不吉で電気を点けて寝る

マリオネットは
夢を見る
銀糸と金糸を絡ませながら

月の周りが光って
瞳孔みたい
立ち止まって
雨のすだれの後ろ側

側溝の油汚れは七色で
断ち切るような昼のまばたき

春の潮風
昨日見た海の砂は
　星たちの
ひかるたてがみ

花疲れした君のまばたきに
都の雨がやさしい

水のにおいがするねと
妻が目を覚ます
武蔵野の五月

本当は誰も好きじゃない君の
ステッカーまみれの
ノートパソコン

旅なれた君が
時々つらかった
祈るように割る海塩ウエハース

裏返したら意外と光る

幾時代かがありましたが
未だに戦争ございます
茶色以外に
色も色々増えました

お風呂上がりの炭酸のように
存在のリズムが弾け出す

かえりたい
きもちをおもいだすために
わたし知らない街にきている

雨だったことがあるのね
睡蓮を胎内にふれてきたような
匂いで

みんなして有袋類に媚びている

空っぽの円柱ならぶ
真夜中のコインランドリーが
きみの淋しさ

磨かれた孤独のかたち
八朔を割れば
まぶしい真昼のきいろ

汽水域に棲んで背骨はやわらかい

雲の峰背負ったギターは羽になる

巻き髪のねじれはいびつ熱帯夜

初夏のプリクラ帳に君はいて

慰めにみんな同じと言わないで
逆さ吊りでいるドライフラワー

すもも研究者さみしいストライキ

空よりも
そこに浮いてる雲が好き
母親が好き
菓子パンが嫌い

瞼が　しずかに積雪するように
後悔はどうして眠れない

ピーナッツバターの匂い処女詩集

風の日の越前松島水族館
リボンのゆるい
スプリング・コート

八月の手荷物検査場にプリン

呼吸器に似ていちめんの二季草

まばたきをする度
星の散ってゆく
まつげのきわのすみずみと、あお

逆光にまみれ
みぎてを振る友の
しなもんぱいのようなあやうさ

経血の昏くビル群の空腹

薔薇の咲く体になったころですか

さよならが聴こえないふり夏の雨

喉の奥子猫が泣いてる場所がある
雨の日の朝ちょっと寂しい

黄色とか緑がちゃんと分かるから
夜が終わってよかったと思う

未熟児の体内時計も午後を指す
いじめを許したあとの給食

勉強に明け暮れていた
人だけが探せる花もあるよ
馬より

窓の　水玉の　模様の　影落ちて
未知の　病気の　　　人になる僕

光にも照らしていたい場所があり
今日は私のとこに来ている

手を振ってバンド解散する立夏

洗い髪星眺めつつ診療所

雪のせいでしたか
海洋図鑑よりずっと
温かかった出目金

指切りの有効期限　夏祓

絵はがきの小さな便り夏が来る

撫でられて
しまえばどこも柔らかく
ピアノは強く弾くほど綺麗

〈ほんとう〉にたどり着けずに
試着室の鏡に雨が匂う土曜

傷口とタルトタタンの似たところ

夜景から零れつづける揚羽蝶

恋人が小指から蛇口になっていく

まだ青い和音
夏野が濡れている

夏の夜
風は　
鉛筆の匂い

波
鏡
今朝の悲しみ
夏薊

ラーメンに海苔とけかけて夏の星

離婚届もらいにきました青葉風

いつもより街灯がひとつ多い夜

前髪を海に落としませんでした

雨の日をゆっくり踊るわたしたち
アイロンの深く冷めてゆくまで

はつなつの性別欄に枠いくつ

すべりひゆ悲しい音のする楽器

幾何学が崩れて光る麦畑

夕焼けのリズムで刻む五十音

花虻の群れにかくれて会いに行く

春光のいれものめいている校庭

ソーダ水ぱちぱち朝の窓きらり

どこまでも定規のような先輩を
しずかに照らす夜の自販機

白ぶどうの部屋が一室あいている
岬のように夜をねむれば

発言はすでにヨットに乗っている

三日月だけの永遠が欲しいのです

不眠症を
遠く郭公

青セロファン

スコーンにナイフとフォークが
付いてきて
入刀してみる粉々になる

初夏の陽はすこししめって
さよならのあった
別れのほうが少ない

星空のように瞳は
傷ついて
テディベアまだ
抱かれるかたち

ゆるやかに哀歌は果てる
着水をする水鳥の姿を借りて

かさ　うたう　
　ひらがな　めいて　ゆく
　　せかい

くちびるを桃の産毛にふれあわせ
「ふ」の発音をきみに教えた

祈りには目深に帽子をかぶらせて
電光掲示板に細い雪

側溝の油汚れは七色で
断ち切るような昼のまばたき

春の潮風
昨日見た海の砂は
　星たちの
ひかるたてがみ

舌のピアスちかちか鳴って
本当に
それを彗星だと思ってた

パテだけのサンドウィッチを
天国でも
寝台列車でも
思い出す

旅なれた君が
時々つらかった
祈るように割る海塩ウエハース

誰かが（あなたが）
ふと顔をあげるような
うつくしいに
なれたら

かえりたい
きもちをおもいだすために
わたし知らない街にきている

雨だったことがあるのね
睡蓮を胎内にふれてきたような
匂いで

磨かれた孤独のかたち
八朔を割れば
まぶしい真昼のきいろ

汽水域に棲んで背骨はやわらかい

雲の峰背負ったギターは羽になる

初夏のプリクラ帳に君はいて

ピーナッツバターの匂い処女詩集

ほむらひろしに短歌をください

殺されないかぎりは
生きているという
人を見つけて森だと思う

起きたらジュラ紀、夜のお散歩

八月の手荷物検査場にプリン

紫陽花の首を刈り取る幼き手

秒針をおさえていのちを延ばす夜

月面に来てウリエルは樹のかたち

まばたきをする度
星の散ってゆく
まつげのきわのすみずみと、あお

経血の昏くビル群の空腹

春が終わり、
夏が終わり裸足のきみ
と
安全なエリアで波を聴く

花びらが自重に落ちていく夜を
さわれずにいるきみの退屈

薔薇の咲く体になったころですか

桃割つてどろどろとした風が吹く

帰天者を樹液は追うか五月来る

五月来て異言呟く瀕死体

　幻肢痛

痛みこそ不在の知覚
燃やされた骨と肉にまで
マッピングされていた私

渡せない手紙をゴミに出したとき
大人になるって怖いと思った

制服を脱いで僕らは旅立った
「あなたらしく」の判を押されて

未熟児の体内時計も午後を指す
いじめを許したあとの給食

あれはまだ土のかぶったキノコに
見せかけたもぐらの潜望鏡

刺す前に
自己紹介や意気込みを
聞かせてくれる蚊なら許した

水切りが視線の先に追いついて
鳥の飛翔を見上げるあなた

横でみる川面の光　生きるのは
一人でできるといえばそうだね

光にも照らしていたい場所があり
今日は私のとこに来ている

「ここでいい」の
「ここ」でありたい
近寄れば
すぐに飛び立つ雀であっても

紙スプーンで
ゼリーと木漏れ日を掬う

蒲鉾と向き合ってみることにする

瓶を置く、
造花を入れる、水をやる。
僕たちだけの、日向の中で。

歩き出す他人の足を見て進む
ゼブラゾーンと南京事件

昼間には幻をみるほうなのに
生家の窓辺でキスをしている

性別の泉はふたつきりでなく
蝶が綿毛の影を追い越す

〈ほんとう〉にたどり着けずに
試着室の鏡に雨が匂う土曜

喪主になる訓練をしているような
夕暮れの校庭の棒立ち

ごぼごぼと
急に咳き込むように鳴る
パン焼き器だけがたのしみな朝

万緑の下にごろりとお母さん

金槌で肩叩きする母の夏

肉じゃがに聞かすのにいい旋律だ

電車には無数の喉が詰められて

重力はビールの売り子には
無いの

まだ青い和音
夏野が濡れている

着膨れて甘い匂いのおじいさん

短夜の本におさまる栞紐

生きるのがつらい
菜の花にダイブせよ

父のたましい
金平糖として初夏に食む

距離保ち
背筋伸ばして 餌もらう
入社二日目 カンガルー

豆という情けのなさよもう寝るよ

霧吹きにサボテン育つタワーです

音楽が磨り減らないで
永遠に響く時代に
生きた僕らだ

春の終わりを
極まりながら咲く花の
満開という鏡面世界

にゅうめんのイントネーション
です
諦念は

下り坂ゆけばあらゆる躑躅から、
まひるま、蕊を向けられている

遠景に錠剤ひとつ
投げ入れて
木曜始まりのカレンダー

ラーメンに乗せる卵は半熟で
泣き虫の君、守るのは僕

はつなつの性別欄に枠いくつ

すべりひゆ悲しい音のする楽器

春光のいれものめいている校庭

白ぶどうの部屋が一室あいている
岬のように夜をねむれば

傘を忘れたわけじゃなく
ずぶ濡れの勇姿を見せたくて

さっきから
虹っぽいことばかりして

故障してユリに凭れてみませんか

片耳に昏い水脈山桜

古古古米と言う時我等生真面目に
少し早口なアイデンティティイ

はつなつの
空腹のあるきびしさに
折畳み日傘やわらかく
反る

梨の実を打ち崩しつつ
晩年のツタンカーメン
越えてしまった

再会のあなたの癖をなぞりゆき
みるみる薫る藤棚のかげ

ピーナッツ
じゃずじゃず砕き
はじかれた夏の濁音
踊らせている

うたうとはうったえること
丹田に
ふるえつづける水鏡がある

ただゆっくりと

あなたを知ってゆくことの

初夏の背表紙、晩夏の栞

かさ　うたう　
　ひらがな　めいて　ゆく
　　せかい

おもはゆい水辺で泣いて傘なくす

こどもの火
分けてあげよう
手を出して

泡に見る生まれて消える愉しみよ

弾くればかくれて伏せる裸麦

湿気せんべい
そこにありをり食べりぼり

ネコの手も借りたいほどの毎日に
ネコのおてては胸の下にて

手紙食いあう永久機関にて発電

側溝の油汚れは七色で
断ち切るような昼のまばたき

水のにおいがするねと
妻が目を覚ます
武蔵野の五月

多様性の盾に隠れ、
屍の上で踊る

わするるな。
その屍は、盾を捨てた強者ども

本当は誰も好きじゃない君の
ステッカーまみれの
ノートパソコン

パテだけのサンドウィッチを
天国でも
寝台列車でも
思い出す

この大根はお前のですか

裏返したら意外と光る

幾時代かがありましたが
未だに戦争ございます
茶色以外に
色も色々増えました

春の闇港町行くバスの揺れ

指図された一筆書きと知っている
ひらけばいつも駄目になる箱

お風呂上がりの炭酸のように
存在のリズムが弾け出す

夏に入る切り取り線を手で破く

ふくらんだカーテンが
緩やかにしぼんでく
ちょっとつまんでみる

ときどきは善意の蔓を
時計屋の時計のように
しらんぷりせよ

かかげ持つ白き紫陽花
ここからは
火のことばしか話せぬ荒野

雨だったことがあるのね
睡蓮を胎内にふれてきたような
匂いで

バンジージャンプ今でもずっと

磨かれた孤独のかたち
八朔を割れば
まぶしい真昼のきいろ

春の日よ会話のなかに人は生き

初夏のプリクラ帳に君はいて

慰めにみんな同じと言わないで
逆さ吊りでいるドライフラワー

すもも研究者さみしいストライキ

ノックがあり
それから五十年が経つ

歩道にも傘にも等しく雨あたる
加害性には順序などない

エクセルの行間詰める瞬間に
クラスで一人
ひれのない人

開けたピアスの穴を君が数えたら
恐れは唯の星座になって

髪を撫でて
撫でられるために備わった
あなたのいくつかが抜け落ちる

餃子への正確な鍼灸

オールフリー
人質っぽく生きてきた

殺されないかぎりは
生きているという
人を見つけて森だと思う

いちごみるく
医者らしくない校医待つ

みんな鉛筆を信じすぎてない？

嘘つきのための行動心理学

紫陽花の首を刈り取る幼き手