西瓜、俺って
なんでこんなに
馬鹿なのかな

いのられるための
玉座に降りたって
かせきってどこまでもさびし い

斎場
へ
影を蹴りつけ向かうとき
ちきゅうはひかりまみれの樹海

ちゅもちゅもと園児はつどい
さかみちを
だっくすふんどの足どりでゆく

座り込めば
つぎつぎあざみの咲く
膝
をかかえて祖父を病棟に待つ

手はいつも孤独の器官
分かち合う
ために
花環になるわたしたち

門前で遊ぶ程度の知識得て
着の身着のまま大学を出る

満月のクーパー靭帯を想ふ

祈ること金木犀を灯すこと

寄留者と過客の差分月見草

秋立って老人に増す作話癖

*コルサコフ症候群

酔芙蓉晩年というイリュージョン

日が落ちてゆく
助手席に海の匂いが
漂ってくる

空が私に
私の形を教えにきたみたいに
風を贈る

親の親
子供の子供
明日の明日
一つ向こうは
付き合いやすい

ゴミカゴで
待つカラスらに言うべきか
今日はプラスチック回収日

真っ暗な寝室でピアスを外す
レモンケーキは檸檬のかたち

切り分けた
アボカドの片方にある種だね
水平線が瞬く

青田道夜が来てから家を出て

夢の粉をまぶされて遅くなる手足

弟のヤモリのようにちいさな手

初恋の人の苗字で待つがゆえ
はやく苦しくなるサイゼリヤ

山芋に混ぜられて寝るように泣く

面映く無言で桃のパフェ崩す

棚裏にくすんだ指輪　障子貼る

告白に小舟はゆれたいだけゆれる

桃を剥く
露出してしまえばすぐに
酸化してしまう僕らの血液だった

夏の屋上の正午は白蛇が
横切るような光の破裂

空だけが残されていて
抜け殻の割れ目は小さな光の滝

原爆忌堆肥ポストに骨がある

水母って無の字のポーズ
無無無無無

出血のたびに小鳥がやって来る

桃を剥く母に造物主の気配

定宿の湯船狭くて流れ星

朝焼けの街に金箔貼り直す

雨をたたんで月下の自動ドア

生まれてきたのは私のせい
だから三春駒の
鬣に展く花になりたい

帽子を
投げ捨てて水母に生まれたい

鶏頭花そしてベッドの父を抱く

レジ袋に透ける
カーネル・サンダース
電車を降りてすこし木漏れ日

玉虫ずっと照らされながら鬱

安全ピンの血は乾き
西日さす

爽やかに飲む時ストローはみどり

うさぎ跳びして苺を摘みに

悲しみに高校野球を集合させる

しゃらしゃらと
大根おろしを擦る音で
はぐらかされた夜があったな

八月の薄明るさに起こされて
研ぎ汁の澄むまでのひとりだ

ネクタリン切り分けながら
眩しさに殺される
細胞のいくつか

もう桃はじゅうぶんです
と
泣くきみの
夢のなかでは薄いくちびる

夏藤を離陸のときに思いだす

電柱に話しかけられきりがない

神さまが笑うみたいな春雨に
降られた髪のむやみに若い

鱗粉をくぐった指はもどらない 
わたしの夢へ泣きにくる人

心拍を枕のうらに聞きながら
夢の羽化まで遠いくらやみ

人生を見つめるために
キュウリ噛む

しなやかにあなたが指を操作して
利き手につくりだした小銃

もっとも夜に近いところとして
人は髪を伸ばして
日ごとに洗う

さるすべり
噴き出すように咲き交って
あふれだすのはいつも内側

鬼灯の花が咲くよと夢の兄

眠りの卵形
身体を
夏草
匂う

炎炎と夾竹桃は死のアリア
ゆうべの夢を思い出せない

膨張宇宙の果ては開くわ花ふくべ

蜩に
切り株の
遥かな樹影

孤独なわたしは本を読むし
川沿いを歩くし
空だって見上げる

こんな詩も打つ

地蔵を磨くのは
辞めた方がいいのか

ぺんぎんが夏天に晒している十字

向日葵の来世
のように
トイプーの仔は
窓あかりのもとに丸まる

祖父の訛りに訛る
ああ、
ナナカマドが
淡い葉裏を見せてそよいだ

湿るほど路地裏になる路地裏の
水溜まりに沈んで羽根たちは

会いたさが凪ぐしばらくの、
洗う、干す、畳む、重ねる、
そうして積もる

春陽にサイアノタイプ像をなし
彼らの青い、花時のあお

うつむいた横顔さえもあいまいで
夏を濾過したカーテンの影

祈ってもたったふた文字が難しい
セミのなく日に折ってみる鶴

鳩光る　海は黙する　人は泣く

中島みゆきの[時代]を
繰り返し、
浮き輪の子供が
夕日を見ているように

セミの声に私は溶けて
麦茶の結露が机にたまる
氷がごろんと身じろぎする

天空の赤い月痩せ狐跳ぶ

護符としてタトゥーを纏い海渡る

澤瀉はみんなさんかく田圃に死角

特攻兵こいぬの温みにほほよせて

聖霊花キャラメル工場跡に咲く

左利きの理由も知らずに鶴と書く

雨の日に雨を見つめているという
あなたが素手であることの示唆

残光を織り込んでいる服着つつ
歩行者たちは火星の話

わけもなく混ざりはじめる
死の気配
ただの無邪気な夏の夕べに

川沿いの露天湯
無患子の木陰　
指先でなぞる右胸の痕

訪問者の荻の声

お待ちしておりました。
竜胆のお香を焚きますね。

心霊特集を見た夜は
あなたのいびきが
お守りがわり

夏になると思い出す
窮屈で自由だった僕の世界

白い引っかき傷を浮かべ
入江の空には猫が住んでる

余波の如く
スコーン焼く昼の私の
後ろ姿を思い出せばいい

一人静――と花に名づけた
その人に逢ってみたい夕暮れ

柴犬にしては大きい
でも

百合の花をくぐるほど小さい
わたしのおとうと

ライターが照らす踊り場
theをやたら
daと読みたがった頃の僕たち

今日も、
神さまを裏に隠したように
空はうつくしく

夕立のなごり気だるく
歩くより泳ぐかんじでゆく下り坂

地に足をそんなにつけて
人ならば冷えた踵でひとり歩けと

観覧車　しずかに煙る遠景の
くだりのほうが長かったこと

渇きから順にわすれる
誰だってよかった日々に一面の葦

歯医者で
ドーナツ食べたいとねだる
きらきらラメサンダルゆれる

窓辺に忍び寄る
夕闇の影
子うさぎのように
怯える

銭湯のあとに　夕焼を浴びている

やわらかく
煮た米を食むばあちゃんち

潮溜まりを泳ぐ雲のように
わたしも泳ぐ

いいえ、
すべて薔薇のみている白昼夢

死、という場所から一番遠かった
君から奪われていくの
夏

東京の摩天楼から下にある
東横インを数えるゲーム

秋の暮商店街をスキップで

謝らないと決めて上り月が暗い

夕日ってめっちゃいいよね
ほんとだね
海風がずっと ざわざわしてる

図書室の
｢寂｣を
巻き毛に絡まして
微笑むベティブープの君だ

まどぎわで
犬をなでつつねむるとき
せかいはすべて
こもれびのゆめ

梅雨晴れの
水差しに七色の影

青い瞳の野良猫が持つ小宇宙

来るごとに変わる屏風の開き方

鎮静のくすりを胸に塗るように
水掻き少しひらいて眠る

それなりの暮らしでしたか
じゃがいもも
小さな虚を抱いて静か

宇宙から届いたような西瓜割る

気がついた順にはじまる秋があり
マーラーカオも光のなかま

わっふる、と
口に出すたび胸に咲く
大型犬のようなやさしさ

八朔のゼリー
光を取り込んで
黄色は
向かう色　迎える色

パールグレイの
珊瑚がねむる水底へ
あなたはゆるく睫毛を下げる

金色は内光りして澄む夕座

草の花荷物少なく引越して

電柱が九月の雨に濡れている

アレルゲンは
苺に籠る薄桃色の
記憶

陽炎沸き観覧車が空混ぜる

タイムカプセル掘り出す日
　　　　　　　　　誰も来ない夏

蛍光灯がお喋りで
目蓋の星が眩しくて
やたら鼓動が突き刺して
ねむれないんだ

うっすらと負け続けている
ねむらない大学の守衛室の灯り

闘病中の母が
小さいはるみちゃんが
いないと言う
大きい春美はここにいるよ

細長い渡り廊下の眩しさを
浴びて喜ぶ白い萌え袖

前の子が横を向くたび
襲い来る
ポニーテール
の
スローモーション

死に方や
働き方を説かれても
アイスの棒はいつもやさしい

　白猫の影は黒猫日の盛り

月面のようなパンケーキがじまん

水槽がいちばんあったかい孤独

レジ袋肺のかたちに風を飼う

好き勝手の好き
死ぬまで飼う金魚

もうガムも買わなくなって
わたしたち
目的のあるドライブばかり

君と見る二度目の花火
また僕は
帰省もせずに夏を過ごして

この夏も正しく老いてゆく母が
まばらになった睫毛を憂う

原爆忌顔より先に手を洗ふ

幼子が優しく髪をなでられて
眠りに落ちるように執着

銀メダルばかりかがやく
秋の日に
風のつめたい部位をください

三年を一瞬だったと言う兄が
ふやけたうどん光らせ運ぶ

煮えすぎたライスヌードル
ぷすぷすと
眠りなさいと八月が言う

ハムチーズサンドイッチを
食べる時
軽やかにまだ
私は天使

斎場
へ
影を蹴りつけ向かうとき
ちきゅうはひかりまみれの樹海

ちゅもちゅもと園児はつどい
さかみちを
だっくすふんどの足どりでゆく

家系図も
血流もみな分枝して
いのちは乳白色のようみゃく

祈ること金木犀を灯すこと

海の触り心地なら小鳥に訊いた

プリーツの裾だけが聞く風の声

真っ暗な寝室でピアスを外す
レモンケーキは檸檬のかたち

窓をのりだす向日葵がゆれている

ひと匙のふるりとゆれている晩夏

大学のセブンで手と手を
つないでるふたり眩い
サラダが高い

花束が機内持ち込みできるって
知ったらこの夏をどうしよう

にんげんのすがたがひとつ
眠たげな動物園に響くかみなり

深夜
となりに人がいる
だけで
地球を愛せてしまう

弟のヤモリのようにちいさな手

秋澄んで精神棟に劇の声

秋茄子が何もわからずもがれてく

夕立の上はぞくりと青い空

おもむろに
かばんに押し込むカーディガン
夏のさよなら見れなかったよ

定宿の湯船狭くて流れ星

ポケットに薄荷煙草の薄緑

雨をたたんで月下の自動ドア

花火は
骨
のまま還るから
いなくなって
しまう

マイクロチップを埋め込む鳥の
鱗みたいな
羽は
かつて花びらであった

微笑みのように短い放物線
戻るかたちを彼女は失くす

鶏頭花そしてベッドの父を抱く

わたしをあげたい花いちもんめ

大学生って感じの川の流れだね

吹き替えのような水辺にふる小雨

風のよく飛び込む席で
カフェオレの
とても平らなこおりを混ぜる

もう桃はじゅうぶんです
と
泣くきみの
夢のなかでは薄いくちびる

整列のマカロン
遠い国の夏

たるとたたん
素足で鳩の影を踏む

妹の棺に詰める茹でしらす

鱗粉をくぐった指はもどらない 
わたしの夢へ泣きにくる人

眠りは
死　扇風機の
淡い
波音

痛みの端切れ
自動縫製中
日溜りの少女が遊んでる

方言を解いて
あなたが打ち明ける
記憶に
しゃぼん玉のふくらみ

祈ってもたったふた文字が難しい
セミのなく日に折ってみる鶴

きみの手があたたかいとき
何気なく
ここが火星でもいいかと思う

青田道　かもめ吹かれて古書の街

雨の日に雨を見つめているという
あなたが素手であることの示唆

残光を織り込んでいる服着つつ
歩行者たちは火星の話

向日葵が見ているのは月の奥
と知りつつ見つめる夜の黄色

てにをはを散らして夜の喫煙所

記念碑に初雪として名前降らせる

おんなのこに
花
のつく名をつける親の
剥がれそうなゆうやけのひたい

アルバイトのお金で
してくれたことの
すべてが
夜にひかりはじめた

レンチンの
まぜそばすする
誕生日

耳朶にひかりを纏わせるための
穴があること　朝のつめたさ

観覧車　しずかに煙る遠景の
くだりのほうが長かったこと

銭湯のあとに　夕焼を浴びている

真夜中の高速道路を
バスはクロールで進んでゆく

秋の暮商店街をスキップで

すつぴんの私もすてき春の森

まどぎわで
犬をなでつつねむるとき
せかいはすべて
こもれびのゆめ

教室は棺ひかりを跳ね返す

霧雨は縊死のできない種族です

帰ってきたら
展翅板にも
懐かしい、死

鎮静のくすりを胸に塗るように
水掻き少しひらいて眠る

ゆうれいの名前で呼べば
どこまでも遠く遠くに透き通る髪

電柱が九月の雨に濡れている

私は月影で
眠くないのに
みかんの皮になった

通りすがりの海風と挨拶をかわす

タイムカプセル掘り出す日
　　　　　　　　　誰も来ない夏

雨水は砂場に
しゅんと染みてゆき
やがてどこかの維管束へと

スカーフは
決意のように燃えていて
教室をでる赤いくるぶし

遠泳のひとりは今も太平洋

少年のじゃーねのざらつき秋めく

銀メダルばかりかがやく
秋の日に
風のつめたい部位をください

透明なからだで肯定してほしい
待合室番号で呼ばれて

駅前のガストが無くてぼくたちの
ガストの人も消えてしまった

煮えすぎたライスヌードル
ぷすぷすと
眠りなさいと八月が言う

いのられるための
玉座に降りたって
かせきってどこまでもさびし い

ひまわりの道を
素足であゆみつつ
たがいの死後をかんがえている

斎場
へ
影を蹴りつけ向かうとき
ちきゅうはひかりまみれの樹海

ちゅもちゅもと園児はつどい
さかみちを
だっくすふんどの足どりでゆく

座り込めば
つぎつぎあざみの咲く
膝
をかかえて祖父を病棟に待つ

眼を塞ぐ血に虹見えず荊冠旗

末伏の精霊詰まったサーディン缶

酔芙蓉晩年というイリュージョン

　三鷹跨線橋

再会に安堵するきみ
いま、ここは、
ぼくの夢だとまだ気付かない

サメの手をぎゅっと握って眠る
夜、窓からお月様が見えるね

予備校の窓辺に処女宮
大学へ行ったら
少女じゃなくなる恐怖

カーブミラーの猫背
見るな
ぼくを見るな

遡上していく小さな嘘の群れ

絡繰のそとで出会える青嵐

溺れた無線機まだ発令のままの夏

ないならしかたが
ないならしかたが
ないならしかたが
ないならしかたが

いいかたがだんだん
きつくなっていく
いうひとがだんだん
きづくまで

切り分けた
アボカドの片方にある種だね
水平線が瞬く

人権が嫌いな叔父の茄子おいし

弟のヤモリのようにちいさな手

初恋の人の苗字で待つがゆえ
はやく苦しくなるサイゼリヤ

面映く無言で桃のパフェ崩す

平和って
シュークリームとおんなじで
食べたらすぐに忘れてしまう

告白に小舟はゆれたいだけゆれる

ふくらんだわかめにどんどんのま
れてく部屋からでなきゃ
もう受け入れなきゃ

花器にさえ装飾がある
身体じゅう
至るところを飾りと思う

夏の屋上の正午は白蛇が
横切るような光の破裂

〈まぼろし〉の
死因を知りたくて秋は
ゴッホの耳を持ち歩いてる

出血のたびに小鳥がやって来る

たましいのかたちのランプ
皺がある

雲すべて消えて躁鬱入れ替わる

オムレツに居て
オムレツに帰りたい

火傷した声にそうめん押しあてる

マイクロチップを埋め込む鳥の
鱗みたいな
羽は
かつて花びらであった

微笑みのように短い放物線
戻るかたちを彼女は失くす

亡き人の
LINEアカウントの残る
こーんこーんと叩く地球儀

ところてんになりたてのもの
濡れている

玉虫ずっと照らされながら鬱

乳飲み子の前髪ピンで留めて夏

ここはまだ夜一色だが
それでいい
向こうが確かに夜明けの色だ

手話の手をそのまま繋ぐ炬燵です

この夏を見通せなくて判を押す

月光と亀が一直線になり
石の扉が動き始める

八月の薄明るさに起こされて
研ぎ汁の澄むまでのひとりだ

三つ数えて背に腹を変えている

良い質問ですね身体は無いけれど

指紋増してきてこの家じゃ狭いよ

立つ東京
寝ている京都
夏の果て

舌先にアクサン芽吹くここは巴里

耳鳴りに見つめられててうるさい

事件性のある夕焼け

鱗粉をくぐった指はもどらない 
わたしの夢へ泣きにくる人

くだものを舌で潰してまじないを
あなたはわたしだけの無人島

伴奏もなしに履歴書書けますか？

羊頭よ黙れ狗肉も負けんなや

逢ってきた靴底に月光の澱

あくまでも
パーカッションなえんがわと

川柳はセーヌ川発祥　だけどね

牛乳は現象界に消しましょう

ポッピングシャワー
齧れば
頸椎に
はじけ止まない約束がある

絶滅がこの先ずっとあるだろう
それでも辞書に語彙、隣り合う

春陽にサイアノタイプ像をなし
彼らの青い、花時のあお

祈ってもたったふた文字が難しい
セミのなく日に折ってみる鶴