陽だまりへひたす
二対のてのひらに
プリマヴェーラの白みちてゆく

天をやぶる
雲雀の群れの
それぞれに
とうしんだいの臓器を抱いて

花がひらくとき
の
彩度で語られて
えいがは金のオルガンとなる

とーすたー
ぽゆん、と弾け
きみが来る
火曜はいつもくもりのち晴れ

水槽はさびしく満ちて月に影

絶望の形をしてる人がいて
風が吹きます、水仙の匂い

まだ夏の匂いがしてる
私には全ての靴が大きすぎる

サメたちに感謝してる
でも君ら、ザラザラしてるし
ひんやりだしさ〜

くるぶしに宿る
いくつかの木漏れ日が
私を淡く呼びとめる

鈴をふるたとえば月のない寒夜

まごころを
見せたいけれどがま口を
開けたらレシートが溢れちゃう

呑みに出る
ところを月に見つかった

夕立に誘われるまで揉めあって
夜に紛れたエンブロイダリー

鳥渡り書き手不在のインク瓶

埃を拭われた消化器のように
日照雨がサルビアを光らせる

十月の森に入ればわたしだけ
映っていない静かな鏡

かたわらに
見えないだれか泣いている
アメンボ泳ぐ雨の波紋は

おはよう飴細工

虫の声デモを暴徒と書く仕事

曼殊沙華まであやとりを続けたい

幽霊をたまに洗濯してあげる

木琴の少女のままでいたかった

生命線が長いアスパラガスの花

虫籠の蛙にしつこい火事がある

海の匂いにかまきりが
　ひ
る
　　がえる

全て忘れてところてんひとつまみ

練切に銀箔のせて後の月

秋の蝉靴箱に靴深く入れ

七夕に壊してぶたの貯金箱

誰もいないカーブミラーの中も夏

梨に似た友達を一人知っている

チャーハンを食う
キュビズムをわからないまま

びみょうに泣きたい時間で
できている
泥団子が十五個ならぶ

これからも俳句がすきと君が言う
白桃洗う朝のあかるさ

みらべるのじゃむ
ゆらゆらと煮る
夜長

蓑にくるまれて金箔色のゆめ

陽が射してすこし濁ったシンクに
流すきのうのラーメンスープ

ふっくらと影絵の遊び小鳥来る

くさぶえも
まほうも
ふんいきはいっしょ

カンナから砂浜の足跡続く

お子さまが
シールがあれば買えるよと
おっしゃっている開店直後

ゆるいままに
フレンチトーストほおばって
ことばが起きるまでをくつろぐ

うちがわを
開かれて照るオムライス
泣きそうなままだったね君は

ねむるのがちょっとヘタだから
しおだまりみたいなこのまちが
すき

さみしさの正体として柿をむく

鵙の贄
ペットボトルに水が揺れ

白シャツよ
ふわりふわりと
飛んでゆけ
田舎では高く
石を投げる少年がいて

初乗りのチャリは
blue 
なぎ倒すように止まっては
ポプラの蝉が
笑ってた

上田馬之助という声
を聞いて
さっとそっちを見た
午後の喫茶店

遠ざかりつつひるがえる帆の下に
泳ぎ疲れた前腕がある

車の中にナスがあった。
今日もいい日になると思った。

青い尻尾を追いかけてみると
今日一日の幸福は薫る

人見知りだった夢を見ました
憐憫のように寄ってくる
犬の甘噛み

ほら月見草が開くよ
命とはむせ返るようなものです

海のために
用意してきた比喩たちを
ただ撫でている帰りの電車

桃太郎って
お爺さんは山に行かなくても
始まるくない？
と言う君との登下校

さびしさを海と喩える歌を聴く
わたしの砂漠はわたしの砂漠

喪服を着ている家族が
少し笑い合って歩いてる

プロキオン　色なき風の吹く孤島

月に風カミオカンデに薔薇の花

にわとりのたましいはどこに
いくのかな
チキンバーレル、小さな棺

雨の名の
どれかひとつを降りながら
ただ忘れられてしまいたかった

どうして九月は
宇宙と同じ密度なんだろう

夏草に埋まるバス停日の暮れて

八月のリュック抱えてみんな寝る

右耳に苺が入っているんです
三歳の医師 じょうろを手に取り

唇に張り付く氷　大声を出すなら
出してからのパイン飴

こんなにもひとりぼっちの
　　　　　　　　　　　夜空燃ゆ

ダックススフフフンドがいる

さみしさは
りんごになって降りてくる
あるいはうさぎ、あるいは小舟

ネコジャラシだらけの町は
ロービーム受けて
ほのかに光をふくむ

ところてん吸って未来が少しくる

弾道ミサイル飛ぶ
戦闘ドローン飛ぶ
たんぽぽの綿毛飛ぶ
わたしたちの空

星の化石から
煌めき
わたしから
祈り

父の息が残っていたトロンボーン

流せない涙みたいに
段々と濃くなっていく
飲みかけのお茶

カモノハシのくちばし、
やっぱり湿気ってる？

学校の廊下にかかる刺股の
曲線部分と直線部分

自転車で走る
速さも高さも
蜻蛉と同じ
透き通る羽がわたしにもある

胸に抱く
吾子があの時
つぶやいた
「いいのにおい」の
「の」をしまう箱

きもちいいだろうか
夜に根を張って
だくだくと水浴びている青

垣に花ともだちみんな院進す

気がつけば　季節は秋に
　私の夏は
赤本のなかで　静かにおわった

ふるーとの運指
を
示し合うように
やまいを明かすしょうじょの味蕾

陽だまりへひたす
二対のてのひらに
プリマヴェーラの白みちてゆく

天をやぶる
雲雀の群れの
それぞれに
とうしんだいの臓器を抱いて

花がひらくとき
の
彩度で語られて
えいがは金のオルガンとなる

とーすたー
ぽゆん、と弾け
きみが来る
火曜はいつもくもりのち晴れ

怪獣の夢を見ました蜃気楼

人間を展けば真つ赤虫すだく

まだ夏の匂いがしてる
私には全ての靴が大きすぎる

育児書もそよ風孕む時が来て
夕方五時の秋の古書店

氷菓まだ冷やされていて冷凍庫
きのこパスタの隙間に夏が

冷たい耳たぶを交互に温めて朝

まるまると月のひかりに包まれて
わたしの
どこか
いきをしている

真夜中に近くバイクが轟いて
ねむれなくても生きてていいよ

踏み込めばパリリと割れる薄氷の
関係でしたさよなライオン

どうしても
死にたくなくて生きている
みかんにはまたカビが生えてる

ひとつだけ白い雲ある秋曇り

バファリンを
インドの友と分けあって
今日も世界はとてもやさしい

まなうらの夜が崩れて
事故現場に散らばる
ガラスのような雪

フラスコにふっと彼岸花を挿せば
理科室に咲く赤い幽霊

曼殊沙華まであやとりを続けたい

木琴の少女のままでいたかった

練切に銀箔のせて後の月

ゆるしたい
ときだってあるいわしぐも

流れ星家族になるはずだったひと

他人泣くひかり冷たい映画館

嘆くほど遠退いてゆく水平線

市役所の四足歩行うつくしい

水没のまちにひらがなだけのこる

とうめいな箱を
横切るたび
ネオンテトラの
鈍くなるきらめきの

ドラムセットのいちいんでしたか

これからも俳句がすきと君が言う
白桃洗う朝のあかるさ

治らない傷であふれる秋の海

陽が射してすこし濁ったシンクに
流すきのうのラーメンスープ

龍野西インター過ぎてこれからは
あきらめた数ばかりが増える

かき氷くずしてゆけば
夕闇に
こどもの増える
甘いみずうみ

月は檻
うまれなかったアルビノの
けものを一羽のこらず抱いて

唾液すこしあまい
八月十五日

祖父の命は後数日で
僕は子供に
自転車の乗り方を教えた

区役所を買収しても泣けないよ

夕涼み
メリーゴーランドが燃えている

ねむるのがちょっとヘタだから
しおだまりみたいなこのまちが
すき

湯呑みにうつる電球のすいせい群

坂道にwi-fiひろって
見上げれば
ログイン画面のような半月

蕎麦の花　局長やさしい郵便局

ヘボン式ローマ字で書く君の名の
明るい土地で育った感じ

ブラトップに
海が透けていてここが
あなたに宛てた
追伸となる

会いたいと呟いて
海が鳴らすコントラバスになる

秋うらら
アリスのままで母になる

私
ケーキのいちごが嫌いなんで
ここで
帰ります

「海に行きませんか」
は海に行く理由にならないの
そこに死が横たわって

人事異動
噂を聞いて秋刀魚焼く

ふるさとの海岸線を点々と風車、
まち針抜けばほどけて

夏草に埋まるバス停日の暮れて

右耳に苺が入っているんです
三歳の医師 じょうろを手に取り

リボンをゆらすなかよしの音

卵生のひかりのようで
完璧な時間のようで
コインランドリーにいる

さみしさは
りんごになって降りてくる
あるいはうさぎ、あるいは小舟

ネコジャラシだらけの町は
ロービーム受けて
ほのかに光をふくむ

赤黒いプラム齧れば予告灯

　　　金魚が
跳ぶ

　　　電車に拐われて

仔象のような目をして　
チェリモヤの種が見つめる

父の息が残っていたトロンボーン

白妙のワンピースから逆光に
ひまわり畑が広がっていく

学校の廊下にかかる刺股の
曲線部分と直線部分

海原に百合を手向けて目を閉じる
オルゴールの音が聞こえる

　稲光樹海の奥に白い足

約束をしよう
秋のあなたになる前に

ルビーのピアスないしょばなしで
夏果てて

ぱ　らいそに咲く
　ぱ　ふしぎな花を
　　ぱ　君と手折れば

ぱ

子どもでも大人でもない白クマが
水を抜かれたプールにぽつん

海からの風が一瞬すずしくて
宇多田ヒカルのような儚さ

どこまでが君の本音か分からずに
夏の終わりの朝顔を抜く

追いかけてきて欲しいことは
バレていて
夏の終わりの白いサンダル

白々しい嘘に
騙されるのも悪くない
バスに差し込む朝日を抱いて

秋風を自然遺産に定めます

四月には雪が降る町だからかな
母が私になる夢をみる

青春期
潜ませながら夜は降り
レモンバジルのシャーベット削ぐ

垣に花ともだちみんな院進す

透明な海水満ちる真夜中の
レントゲン室で人魚は眠る

さびしさで食器を作りやわらかく
熟れた桃をそっと並べる

気がつけば　季節は秋に
　私の夏は
赤本のなかで　静かにおわった

冬羽のハクセキレイの去り際の
雪に気づいていたのだろうか

やわらかく熟れたキイチゴを
摘んでいるとき
指先がうしろめたいよ

ふるーとの運指
を
示し合うように
やまいを明かすしょうじょの味蕾

あさがおの
鉢を掲げて
かくめいの序章、
みたいに振り返るきみ

ユーモアは
外付けなのでないですね

人間を展けば真つ赤虫すだく

詩は歌ふやうに花野は泣くやうに

「桔梗を知らんか？トラジのこと
だ」と師の言葉　

　*大木金太郎の回顧より

人に禁忌桔梗に雄蕊先熟

わるぐちがはじまって
飲みかけた水を戻す
点線の位置に

履歴を残さない仕様なのに
いつもここで、
名前を呼ばれる気がする

口紅を塗らなかった日に
使わずに済んだひらがなが
灯る

後ろ手にブーケを隠し持つように
キノコの群れを生やす切り株

低画素のレース動画を消してなお
波にまつわるあなたの手癖

秋灯だ

僕らは世話を「焼く」と言う

猫通り頭を垂れるじゃらし道

静寂を求め家を飛び出す
あ、スマホ忘れた

埃を拭われた消化器のように
日照雨がサルビアを光らせる

十月の森に入ればわたしだけ
映っていない静かな鏡

陰謀論きらきらしくて鳥の街

ＰＡを困らせながら蚯蚓鳴く

流星群を迎えるための数え歌

幸せそうって
あなたが言ってくれるから
ポップな河童みたいに笑う

百日紅
結婚願望ありますか

ラーメンの
湯気は秘密の地図である

リボン解くときの軌道は稲光

可聴音だから冷奴に響く

新涼のシャンプー台に首浮かせ

七夕に壊してぶたの貯金箱

！を階乗と読むひねた口

鯖雲に軍服の強い襟です

水没のまちにひらがなだけのこる

啄木鳥になればわたしの長い舌

チャーハンを食う
キュビズムをわからないまま

しろくまはすすむ
朧に触れるまで

タコパしよ、
冬銀河とか見えるかな

あこがれは
へびつかい座の手に落ちて
ときおり戦わせるカトラリー

赤ちゃんと戻る世界の冷奴

吹き抜けに空理空論吊るされて

ふっくらと影絵の遊び小鳥来る

くさぶえも
まほうも
ふんいきはいっしょ

もっともう
そのくりかえし
モウモウと
そしゃくしてのむ
もっともうそも

骨抜いた鮭に小骨が残ってて
お孫さま見てみなで謝る

ほらはやく月の剥製つくらなきゃ

腹巻きに手を入れしかし
ディストピア

届かないほうから
空は明けてゆき
秘密の鱗のなめらかなこと

うちがわを
開かれて照るオムライス
泣きそうなままだったね君は

さみしさの正体として柿をむく

鵙の贄
ペットボトルに水が揺れ

立秋の手紙は君の肌のよう

手に掬う水に母ある今朝の秋

いのちを月光放電する

残る月
わたしは肺を持っていて
あますことなく機能をつかう

日本式天気記号で話そうよ
（ここで王妃は火にくべられた）

甲状腺ふくれて春はハートがた

案山子叶わなげな事も言う案山子

歯と歯のあいだを
これが声でも野分でも

横たわると流木であった
水流が頬を撫でる
せーので、
手を挙げると帆

意味をクルクル包装してる

ケロイド満ちる腕

遠雷をこわがらないで
ほんとうの雨は
書物の中にだけ降る

陰圧の身体に秋風引き込んで

言葉から言葉を研いでいく昼は
銀箔散らすようにさみしい

全員が同じ口癖いわし雲

海を見て有限を知る金魚鉢

ためいきと吐いた紫煙に月渡る

神さまは言葉を発達させるために
テレパシー能力を奪ったのだろう

歯並びが次第に揃ってくるように
語彙は身体を経て文法へ

許してくれても、良いのですよ？
へえ、そいつはお日さまですな。

盆の月誕生日にも飲む薬

ネコジャラシだらけの町は
ロービーム受けて
ほのかに光をふくむ

転調を聴かせるようにアゲハゆく

どこまでも咲き乱れてる
白薔薇に
蝶は夢から拙く逃げる

まなうらに青く灯って
さかさまの鍾乳洞が東京だった

深い闇を抜け濃い闇となる

父の息が残っていたトロンボーン

割り箸が左に逸れて割れるから
甘い言葉は控えめにする

アライグマの緑茶屋さんの経営は
当然苦しくコンサルを呼ぶ

仏壇に犬の骨壺鵙一声

枝付の蔕あればこそ吊るし柿

りんごあめランプに似てる
似てなくね

胸に抱く
吾子があの時
つぶやいた
「いいのにおい」の
「の」をしまう箱

パンクした自転車を押す帰り道
雲の解像度高いかも

羽田発徳島ゆきは欠航です　神の
怒りがもうすごいのです

それはそれは大きくたしかでも
ろかつたぼくを遺構として語り
部は

血族に振り回されている嫁と
踊り続けている孫娘

終電に間に合うように振り切った
会話の先がゲル状になる

もう旅はやめてしまった
秋になると
正方形の手紙がとどく

彼岸まで耐えようと
呪文を唱えたのに
ため息と制汗剤のぷしゅー

絶望の形をしてる人がいて
風が吹きます、水仙の匂い

くるぶしに宿る
いくつかの木漏れ日が
私を淡く呼びとめる

冬
換気を教わった
小学校の窓へと
（被害妄想）
言葉が入ってくる

好きな子が結婚をする。
しゅん、かんに、
ぼくに届いた便りは葡萄。

人の目を
盗んで進む
カレンダー

夜はいい
飛び越えられる
星ぐらい

手と闇に違いは無くて虫当たる

始めから私のものじゃないような
気がし続ける体で今日も

十月の森に入ればわたしだけ
映っていない静かな鏡

陰謀論きらきらしくて鳥の街

夕焼けは夕焼けの子を食うだろう

虫籠の蛙にしつこい火事がある

ママが死ぬ
イメージで眼を潤ませる子役の
今日は風が強くて

ハッピーデーの幟が
風に揺れている
　きみはどうしてるかなと思う

満月の裏面に計算をする

曼珠沙華喉からの風邪許しつつ

ワンピース脱ぎ捨てるとき
いきものの
骨格あらわなる一人部屋

しっとりとあまいあぶらを
垂らしつつ
茎は鋏によわく抗う

かき氷くずしてゆけば
夕闇に
こどもの増える
甘いみずうみ

てのひらで無花果わけた徒情け

手に掬う水に母ある今朝の秋

ひぐらし聞いたら
しばらくは息がやわらかい

あなたにも怖い木目があったなら
話してもいい埋葬のこと

「海に行きませんか」
は海に行く理由にならないの
そこに死が横たわって

並べると
背骨にみえるマシュマロを
焼いて溶かしてうまれるけもの

お腹から鳩の鳴いてる声がして
デーデポッポー下血している

白鷺の
ゆわえた髪を
振り解くような
身震い

速やかに音を立てずに自転車と
並んで飛んだ熊蜂の顔

かたちより香りのために持ち帰る
すずらんすずらん
笑わせないで

言葉から言葉を研いでいく昼は
銀箔散らすようにさみしい