石榴食う恥辱(はじ)のバケツに 種子を吐き
それらしき比喩のジョーカー みなしぐり
掌の熱を移して捨てるため木の実
栗を焼く父の悲しさ知るヨセフ
月明にやさしく疼く義眼義歯
月の出の汀に抛る貝釦
独り居の音声入力夜は長い
originは不可算名詞後の月
この秋の眼(まなこ)に 時間が映らない
百均に秋は来にけり紙コップ
虫の夜弟も銀河に加わりて
十月来る岩塩を掘る鑿の音
書架倒れ十月はたそがれの国
秋の澄む人の貌みな横向いて
秋の雲ここより先はどれも帰路
俯いて消ゴム見上げれば秋の雲
ロシナンテ少し休もう秋の雲
ランドルト環が下欠けばかり 秋彼岸
寅丑の鬼門を避けよフロイト忌
秋暁のひかりの素足に履く木靴
秋日向大工のゴーシュは鋸を挽く
トランクのなかから蜻蛉賢治の忌 *宮澤賢治忌=9月21日
赤とんぼ埋められた児に水運ぶ
来た空を 肢(あし)でなぞって去るやんま
墓濯ぐ水の昏さに鬼やんま
野分立つ熟成を待つジビエ肉
雨温(ぬる)く 蟋蟀の蹴る闇の皮膜(かわ)
昼こおろぎゆっくり回る観覧車
蟋蟀(ちちろ)鳴く 危ない8ミリ鑑賞会
弟の虫の形の声を聴く
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