陰影のメソッド
侍という薔薇飾る正月

簡単に言えたらそうしてる
鑿を打つ金槌の音だけ響く
アトリエに満ちる光束

うまく生きてるねと
composition
あんぽんたんな雪ダルマ

水晶のように固まるプライドを
胸のしこりとして生きる違和感

冷水の中で水切りする花の
生かされていることの常態

死んだ母の誕生日だったなあと
ふと思い出す
冬の洗濯物の冷たさ

父の肩ぐるまで
星を掴めた、あの時

この世のどこにもなくて
マフラーの中に
白い息とあるもの

ツワブキが咲いている
冬かもな
陽が照ると春なんだけどな

君の掌をこぼれ柘榴は神代の火

芋煮を遠く浅瀬に酔の手を浸す

ぽにゅぽにゅと
うさぎの耳
を揉みながら
もくれんの花ひらく日を待つ

叱られて
ちんまりしゃがむ
いもうとの
しょうにゅうどうのような沈黙

親友とわかれて
坂をくだる日の
あっぷるぱいのような夕暮れ

むぼうびに背中をあずけ
きみといる日々へ
射し込む萌黄のひかり

おとうとの冬
の
こどうを聴きながら
かむぱねるらのようにねむった

ふたりから
いつか
ひとりになる日々も
ぽたーじゅだけで生きのびてみる

しおかぜに吹かれて
春をまっている
つぼみのような ちわわのあたま

春の手の皴やわらかく言いなおす

ばあちゃんのいない
二度目の正月

冬の陽はレモンイエロー君と僕の
背中をすっぽり包み込んでる

空っぽの車両に冬陽の差し込んで
つり革の輪をくぐり抜けている

こんな時だからの猫の子の動画

生類に淋しみの令寒の雨

月光を凍らせ束ねて献花台へ

人間になって身体が重いです
春木漏れ日で胸も痛むし

紙を切ることも下手くそ冬の星

朝の落葉集めて心臓の匂い

銀色はさびしいですか白長須鯨

カーテンにくるまって
わざと影を揺らして
君を待つじかん

ほつれた藍、
しまわれたくない光が
タンスの上で
踊る

スキャンダル、脱税、
賭博、死体遺棄
種無しぶどうを冷やす休日

生きるには不器用で
死には少し届かない
不正脈を抱いて

密やかな太陽ひとつ抱えつつ
渡るペデストリアンデッキ

ずっとずっと鎖編みのような日常

教室でいちばんまぶしい席にいる
打ち上げにぜったいに来ないひと

リノリウムに冬の陽跳ねる一月尽
渡り廊下にずっといるのです

満足バーに草彅剛を
起用した理由がわかる

生きてきたから

輪郭をもたないぼくに射し込んだ
平田オリザの演劇だった

言うことを聞いてやらない
はつ冬の雲雀が落ちてくる枯野原

円周率のつづく無限よ惜しみなく
ピアスホールに静寂が満ちて

血液がひどく体温であることの
眠たさに手を洗いつづける

かじけ猫・
日記に晴れと書く理由

柴犬は耳の中まで
柴犬で私夜空に消えちゃいそうだ

靴底に嫌という字のおんなへん

年の朝
煮しめのアクの抜けぬ味

飛び立つ時の烏の羽の音が良い
たった一人で生きていくような

体育館より声援を聞く今川焼

息白くここは夜空が透きとおる街

月光が廊下を照らすボストンの
地下鉄の自販機の痛み止め

ホットケーキに押し返されて
てっぺんのバターがすべり落ちる
春愁

夕立に駅は打たれて
浴槽で孵るおもちゃの
つやめきを持つ

泣き顔に見惚れていれば
右利きのあなたに刺しやすい左胸

もみの木よ
ちいさくはやく揺れなさい
澱んだ銀河を磨かなければ

お薬のまわり甘くて冬深む

役割が何より大事なものなので
兎を愛でて鶏を食う

つまらないくらいに
海が広がっていました
僕は高校生です

みそ汁があるよのメモを裏返す
おかえりなさいだけでいいのに

神経の翳りパイプ椅子を組む

黒い空に雨が滲んで
シアン、マゼンタ、イエロー。

靴紐のゆるみをそっと感知して
信号はまだ赤を続けた

２０階ビルの窓塗る夕焼けを
誰も見てないこんなにいても

知らぬ間に糸はほつれる
さよならを
言えた別れの方が少ない

泣いていたせいで主題のわからな
い映画はすばらしく透明で

嘘をちりばめたものから光るから
あなたたちには夜を教える

空が剥がれるように降る雪の日に
わたしが母を産む夢を見る

駅前に灯がともるまでうつ伏せた
鏡が夜を買い占めている

またひとつ書店が消えて海風は
鳥の名前を知らずに運ぶ

鍋を囲んで　蝉の静けさ

花の春煎茶ほうじ茶玄米茶

七日粥葛根湯を先に飲む

オカリナのトリルに挑む春隣

果実に手をあてていなさい
夜は夜

スカートに海が欲しくて襞よせる

勉強は好きでも課題は嫌いだし
猫を食べても食べられたくない

光らない充電器寒夜部屋寂し

端っこに寄せた単語帳
ロールケーキは夜光る

骨壺に珊瑚をあなたには海を

人だから大体のことは想像の
回廊をゆくグレイハウンド

大学は夜も開いていて
お互いに
教室の静けさが好きだった

月明かりに影と踊って帰る

銀紙で夜を包んでゆく作業

透明な身体になれば哀しみは
消えるのかクラゲに尋ねたい

スコーンを温めなおす
金色の記憶を夜へ転写するごと

引き出しに冬の切手を入れておく

雪うさぎ最初の口づけの淡さ

銀のクリップ深海にふりつもる

自画像に大きく傷をつけて冬

鼻の下にできもののある人として
売店でコーンポタージュを買う

ロッカーは荷物がないと無機質で
だけど確かに僕のロッカー

ストーブの香りを吸って白夜月

翅を捥げば大人になれるから

耳鳴りも無く
とつとつと
みかん剥く

生まれつき火影を自認する蜥蜴

海豚とキスする人を見ている真昼

羊みな耳標を持って冬茜

月冴えて二段ベッドに木の梯子

花束をほどけば寒月の欠片

薬局のヘアカラー売り場に並ぶ
雫の形に結われた髪よ

鼻よりも頬出て冬帽の赤子

上履の替えどきわからん春隣

私だけ街に幽閉されている

なあ母さん、
あとどれくらい餅がある？

まだまだあるよ、よう食べんさい

写真に撮れば
消えるような三等星
今日は最後の登校日

捨てられた写真の束の
老人は笑顔
生活のキャパシティ

浮寝鳥戦争に布使われて

父のこと

わざと悲しく話す僕

歩幅が大きいから春かもしれない

マフラーを絆創膏のように巻く
誰より自分に優しくあれ

ポケットに
パンつっこんでみるコート

本日は手抜きりょーりと母がいう
花火きこえる音の間が夏

涙腺に似た働きの糸蜻蛉

人はみな孤高を信じてみたいもの
街に一つの学習塾よ

すすきだと思っていたのは
荻でした。
そうですか、
そう言うことばかりです。

同じくらい幸せじゃないで
いてほしい　
中央分離帯のさびしいみどり

ゆきぼたる自分の体全部嫌

バイバイ
林檎三個分くらいの重みで
好きだったよ

「あ」
と声漏れて
ばら撒く
マッチの匂い

かじかんで手は初夢になりました

麦の芽に
不眠の私
過眠の君

ひやしんす
すきのかわりにいうすてき

赤ちゃんをとりに出かける眠る山

花柄の幽霊がいる冬の海

妹のせいでいまでも兄の顔

調理室柚子を刻んでいて孤独

ことごとく菜の花泳げそうなほど

余韻とは脳へしずかに降りる鈴‌
足をすりあわせて靴を脱ぐ

からくりのように
失くなるものばかり
点滴の日は雪がしずかだ

おろしたての
パフスリーブのふくらみに
ひかりをいれて象を見にゆく

空想の庭から逃げたマルチーズ

路面電車に雪だるまを積んで

バラードはきらいマイ水筒の白湯

延びる日暮れの
寂しさよ
西へ歩こう
紺に染まろう

春の雪うたた寝の子の髪ゆたか

描かれて永遠のくちづけ冬三日月

彗星を浴びた向日葵から枯れる

くびすじは世界樹に似て桜まじ

椿落ちるたびに地動説は狂う

ニューロン発火
鳳仙花種子しゅぱぱ

かわいい春だといいな
匙が届いたパフェの底

晴れときどき天使のはしご大試験

雪国の祖母の眠りの雪積る

枯葉の森へ落下し続ける
小さな魂のようなもの

雪降りの父の揚げ耳パンが好き

インク壺陰画星石捕鯨船

霧雨の夢で毎回思い出す
星を見たら眩しがる人

月光の中に溶け出すくるしみを
鳥に例えて飛ばしてみる

　　隣の月は観測者

大往生だね。
誰が決めるの。
母の直観。
息子がステージ４。

愛おしい子
うるさい子
いらない子
わすれた子
お母さん、さようなら

読みかけの
本をぱしんと閉じてみる
栞にしたい
夕焼けだった

洗車機の
泡がガラスを覆ってく
故郷は今日大雪予報

本当は大丈夫ではないけれど
それ以外には言葉を知らない

あたしだって
母さんみたいに不安なく
産んでおうちにいたかった
日本死ね

息継ぎを故意に行う寒椿

縄文時代を
生きている我が祖先

雨に打たれながら
坂道を駆けて行く

ゆでたまご
両手にぞろぞろ乗せながら
方舟めいた
祖母の手のひら

震えだす
手をあたためた
ミルクティー飲めば
くびすじほどのぬるさで

うつむいたあなたの
木陰におさまれば
すこしやさしく見える過去問

夕虹を描く
クレヨンの筆圧で
きみと渡ってゆく歩道橋

ブロッコリーのつぼみ
をまとう
きみといて
三月だって怖くはないさ

ランドセル捨てられないよ
まだ
ふたの裏に
満点シールがあって

夢語るそれぞれに
前を向いていて
ひまわりばたけのような教室

インパクトドライバーを
壊してしまった
私の孤児が強すぎて

天秤を傾けた蝶
その皿へ広がる花野

さらに傾く

淡雪と錯視する午後、
擦り切れたフィルムを壁に
うすく映して

ストーブの灯油の香かすか
味噌を溶く
ふわとわたしが透け揺らぐ湯気

セロリもセリ科というのなら
私は君でもいいはずなのに

雪だって
海になりたかったかもしれない

鼓動を速く　
さも知らないように
船を漕ぐ

私の魂は日々汚れるから
せめて冷たい風にあたってみる

台所で生姜をおろす時
アメリカの大統領が決まる

君を想う自分が好き
君を通して
初めて
私は私を愛せたの

鈴蘭の
毒で
眠る
白金のような娘

大量生産の小ネジ
継ぎ足しの接着剤
同規格のハンドル

私は交換可能部位

少し気が重い
雨は悪くないのに

町おこしで母が食べていた秋刀魚
意地張らないで
一緒に食べればよかったな

旅立ちの
ホームに佇み二人きり
スノードームのように
雪は舞い積む

翅脈のような
霜の窓
白鍵を沈めきれない
小指

転調は
転生
あとがきは
あわゆき

光の束が
野辺にほぐれて
名もない花の
音楽の時間

触角に露
夜ごと
架けかえられる
草の橋

青を青とだけよび愛した母の
青いハンカチたずさえる春

春吹雪あおむ銀波の菜切り研ぐ

駆け抜ける
死んだ馬の見る夢に
無限に続く草原を置く

透き通るきれいなものを丁寧に
穢す悪魔の助手をしている

部屋の片づけをする
紅茶を淹れる
あなたを忘れる

食卓に一人残されて

騒ぐコーラ

願うとき人は無防備　三重県の
剣道部ってとくにそうなる

幽霊に花を手渡すようだった
両手で雨を確認すれば

お日様の香りと同じ天花粉

傘さして何から自分を守ってた　
でもそんなことが大事だった

音もなく降り積もった雪の上を
もっきゅもっきゅ鳴らして歩く
雪平線

カラシニコフ銃を抱いて
小麦畑で眠る
電波の揺籠
飛行機の叫び声
両親の面影

百人でこの世の桃を食い尽くす

からっ風福神漬けはいりません

特売の 肉は小分けに 冷凍庫
死にたくたって 明日は来るから

二人でも家族写真
福寿草の近さ

昼寝から覚めたのにひとの骨格

若気の至り中年の迷い
年寄りの冷や水
打ち上げは居酒屋で

小さなミカン一つ
野鳥と分け合う
タワーマンション
八階に独り

大きくてふわふわの犬に出会うと
なんだか得した気分になる

うちのガジュマル
根を暴れ出し
大地に帰ると言って
聞かないのでございます。

月曜朝七時
「熱出た。来れるー？」
娘の切実
じいじの幸せ

マフラーを別れの匂いが踊らせる
遠くで春が手を振っていた

ねこ、やわらかいねこ
ふわふわとぐにゃぐにゃと
油断させておいて、凶暴

着ぐるみじゃないと言わされ森敦

私たち、確かに一緒に居たんだ

海の底が見える図書室

街のショーウィンドウ
反射するのは
いつだって僕の神様だった

梅干しの右を殴った形です

クロッカスの幼さ
ふっくらさせた花びら眺めて
そらはどんどん遠くなる
青だね

はるが来たら何したいとか
孤独のうちに考えて
すべてすっぽかせば春

わたしは
何処までもわたしという人間で
苦しくなるまで
コーンスープを啜る

わたしにいもうとは居ない
あのミルクの匂いになりたい昼

　　　　溶けかけの
　かき氷みたいな歩道だね

また戦争らしいと
馬が泣いて来る

人それぞれの十字架に
雪が降ってるよ

少年のまま老いて
海を見ている

思い出に住むひとに
雪だね、と言ってみる

子熊のように
肩にもたれていた君は
光芒に濡れて鍵盤を弾く

思い出だけがきれいな街で
ため息みたいな深呼吸ひとつ

喫茶店のモーニング
がま口から
ときどきお小遣い
おばあちゃんに会いたい

友とザリガニハンター
七歳の夏

小春日の縁側
日光浴のボンタン

割れたランタン提げて
ランタン買いにゆく
夜が明けたらさかなのように

花野とは
たましいだけでゆくところ

かがやきというかがやきを
奪われて
なんてすずしい西洋葡萄

まぼろしの砂丘に
いつかあらわれる
返せなかったままのバレッタ

ニッキの木きりりと嚙る
きみに尾が
わたしに羽があったゆうぐれ

天啓はブーツを鳴らして来る

包丁は確かな殺意で不確かに
「刃物のようなもの」と呼ばれる

ポテトにケチャップ要りません
失礼いたしました
人生楽しいですか？

死の予感はなく銀河は広すぎる

金平糖がうつくしいので
こくり躰におさめては鏡台を覗く

心の底が破けて
悲しみさえ溜まらない
仰ぐと
点眼薬みたく降ってこないか　涙

眠る前にあくびをすると
私の中の神様が出ていく
空っぽになって眠るのだ

夕闇の藍の境界ドレープの
僕らを包む夜はやさしい

夕暮れにまどろむ
私は私の身体を漂う

鴉が一羽こちらを見てる
ねえ
"Nevermore"って
鳴いてみせてよ

ブルーベルの花言葉
笑うように泣いた
絞めるように首を手で包む

公園にすごい猫背の神がいて
あらゆる鳩を許さなかった

柚子をもらった
傷を付けると良い香りがする
君もそうだろうか

テーブルのコーヒーカップに
手を伸ばす君の背と背凭れとの
隙間

せめて美しくないと
所詮生きて死ぬための場所なのに

いままでの生き方が
そうだったから
配膳ロボに道を譲った

ママお空行くの嫌だと四歳児

冷水の中で水切りする花の
生かされていることの常態

あふれ出る
ことばに名札をつけ
空を匂う

たえまなく、
レモンの輪唱をきく
わたしは、私を捨てに行く

ぬけがらの毛布のすきまを
埋めてみて
わたしは保温される白米

親友とわかれて
坂をくだる日の
あっぷるぱいのような夕暮れ

おとうとの冬
の
こどうを聴きながら
かむぱねるらのようにねむった

ふたりから
いつか
ひとりになる日々も
ぽたーじゅだけで生きのびてみる

夜を縫う糸になるからまたあとで

春の手の皴やわらかく言いなおす

ばあちゃんのいない
二度目の正月

冬の陽はレモンイエロー君と僕の
背中をすっぽり包み込んでる

空っぽの車両に冬陽の差し込んで
つり革の輪をくぐり抜けている

冬すみれ　初診予約は半年後

月光を凍らせ束ねて献花台へ

溜息を手繰つてゆけば冬菫

霜柱踏むわからないことに慣れ

紙を切ることも下手くそ冬の星

朝の落葉集めて心臓の匂い

冬の雨は胎内で聞く母の声

銀色はさびしいですか白長須鯨

とおせんぼだけが上手な影だった

ずっとずっと鎖編みのような日常

教室でいちばんまぶしい席にいる
打ち上げにぜったいに来ないひと

リノリウムに冬の陽跳ねる一月尽
渡り廊下にずっといるのです

輪郭をもたないぼくに射し込んだ
平田オリザの演劇だった

円周率のつづく無限よ惜しみなく
ピアスホールに静寂が満ちて

血液がひどく体温であることの
眠たさに手を洗いつづける

声小さいから何回でもさよなら

柴犬は耳の中まで
柴犬で私夜空に消えちゃいそうだ

飛び立つ時の烏の羽の音が良い
たった一人で生きていくような

息白くここは夜空が透きとおる街

ふたつめの信号変わり冬の星

ゴミ袋、二羽のカラスに漁られて
いる　犬のうんこときれいな
食器の店

寒天煮ると私だけの海になる

夜泣きする児を胎内に戻す冬

つまらないくらいに
海が広がっていました
僕は高校生です

落ち椿母になれない機能持ち