ご挨拶 - なぜ口語なのか

 自らを言語で表現しようとする時、それは自らが考えるときの言語でなければならない。言語がなく考えることはできない。考えるときの言語は物心ついたころから口語である。フランス語で考える人はフランス語、英語で考える人は英語での表現が本来である。言語には、匂い、臭い、湿度、温度、体温、生理、憎しみ、悲しみ、生い立ち、先祖、社会、その人を存在させるに至ったすべてが内包されている。ですから、口語の品詞による、詩、俳句、短歌、川柳、アフォリズム、を提案したい。ご自身のサーバーとして一般投稿のみのご利用の方も、新人賞、奨学生をお考えの方もふるってご投稿戴けますようお願いいたします。


目次
1. 奨学生選考結果
2. 新人賞・奨励賞選者評
3. 選者総評(翌月15日締切日の翌営業日に掲載します。)
 1)2020年8月選者総評
4. サイト概要
 1) サイト閲覧のみの方
 2)会員登録なさる方
 3)一般投稿なさる方
 4)奨学生投稿なさる方
 5)コンクール投稿なさる方
 6)月間投稿ランキング
 7)年間累計投稿ランキング
 8)月間佳作数ランキング
 9)年間累計佳作数ランキング
 10)月間投稿佳作一覧
 11)過去の作品検索
 12)結果発表
5. 2020年度 口語詩句賞 応募要領
6. 2021年度前期 口語詩句奨学金応募要領


1.  奨学生選考結果
  ・ 選考結果   

2. 新人賞・奨励賞選者評
  ・ 林 桂
  ・ 西躰かずよし
  ・ 秋亜綺羅
  ・ 杉本真維子
  ・ 龍 秀美
  ・ 選考結果   


3. 選者総評(提出順)

1)2020年8月選者総評(提出順)

◎林桂

 ●春町美月●
居眠りしてる人の
手から切符が落ちかけてて
念力でなんとか知らせようとする

*幼い頃、「念力」という存在を知ると、自分にその力が備わっているかどうか試した経験は誰にもあるだろう。

 ●西春奈●
死んでから
自重を知るかのようでいて
羽虫は部屋の四隅に積もる

*飛ぶために進化した軽い羽虫の身体は、死して部屋の四隅に吹き寄せられている。風ともない住人の起こす生活の空気の動きのために。

 ●春町美月●
水泳バッグを蹴り蹴り歩いた
あの時のうなじの熱を
今なら孤独と呼ぶだろう

*夏休みに学校のプールに通う。出席カードも配られる。水着やタオルを入れた透明なバックを手に。しかし、誰もが楽しい訳でもない。バッグを蹴り蹴り通った作者もその一人だろう。うつむき加減のうなじに容赦なく夏の太陽は注ぐ。太陽が炙り出したのは「孤独」だったと今にして気づく。 

 ●ベロニカ●
あの日の今日
誰かのかわりに今、水を飲む

*8月6日投稿作。あの日は広島に原爆が落とされた日である。いま、水を飲める意味を自らに問う。

 ●はすた●
あの朝も
こんな
晴れやかだったのか
一輪車に乗る少年
ひとり

*これも8月6日作。あの朝は昭和20年8月6日。原爆投下には、天候がよいことが必要だったのである。自転車で遊ぶ晴天下の子どもは現在の姿。こうした日常に原爆はふいに投じられた。

 ●西春奈●
原爆がただの遠くの雲だった
祖母は米のことだけ語る

*きのこ雲を見ても、その意味がすぐに分かった人は少なかったろう。日々の食糧こそ大きな課題として、庶民は生きていた。作者の「祖母」も、そのひとりだったのだ。

 ●春町美月●
小説を読んでるうちに
日が暮れて
薄闇の部屋は
ニベア缶の青

*気がつけば薄暮の中で小説を読了したのである。視線の近くに置かれ、暮れ残るように色彩を保っている「ニベア缶」が印象鮮明に時の経過を告げている。

 ●春町美月●
最近シュークリームに似てきた父

*「シュークリームに似てきた」の比喩に思わず笑う。ふわふわの体の中にある優しい内面も感じさせる。あわせて「シュークリーム」なのであろう。

 ●板倉萌●
おばあちゃんのように生きたい
家族のために一生懸命
働いてくれたね

*過去形で語っているから、「おばあちゃん」は亡くなているのだろう。動物の子育て番組を見て感動するのは、その親の私無の姿である。なぜ子育てをするのか。分かっているのかいないのか。しかし、彼らは一心であり、一途である。この「おばあちゃん」の姿にも重なってくる。

 ●佐々木祐輔●
歩道の真ん中
きいろいヘビの背中を歩く

*「きいろいヘビ」は路面に引かれた黄色いラインであろう。それが巨大なヘビになり、その上を歩く冒険をする。子どもは日々こんな想像の冒険の中に生きているのかもしれない。

 ●細村星一郎●
八月が終わる
卵に黄身ふたつ

*西東三鬼に「広島や卵食ふ時口ひらく」の句がある。この1編はどこかそれを思わせる。割った卵に偶然二つの黄身が入っていたというだけではある。しかし、遠くで心に響き、沈潜してゆく不安のごときものの存在を感じさせる。

 ●春町美月●
疊の上に
脚をにゅうにゅう投げ出して
台所のトウモロコシのこと
考えていた

*「にゅうにゅう」の独特のオノマトペに惹かれる。幼い子どもの人目を気にしない、所在なげな様子と読める。萩原朔太郎の猫、中原中也のぶらんこのような独自のオノマトペの効果を連想する。作者にとって、幼年期は黄金の時間だったろう。

・仕上げに、作者名を調べながら記入していて、その半数に近い作品が春町美月氏であったことに驚いている。多作もさることながら、好調な月だったと思われる。また、8月6日の一連の投稿作は、今までに無かったもので、印象深く残った。


◎龍 秀美

今月の作品には主観が中心だった現代詩が、他者と共感できるようになっているのを感じました。暑さ寒さの体感や音や味などの五官が大きな役割を果たしています。
印象に残った作品を挙げてみました。

噛みころすときに
かすかに味のするあくび
遅れてひびく雷
作者 髙良真実
──あくびの味、雷の音。五官と脚韻が効いている。

斜めに突き刺さった私が取れない
作者 笹生あい
──方向や動きが「私」という存在の印象を強く訴えています。

心が折れる音を聞いた

なかなかでかい音だった
作者 加藤 美紀
──心理的なものを音という実態とその量で表しました。

あの日の今日
誰かのかわりに 今、水を飲む。
作者 ベロニカ
──体感としての追悼。こういうかたちの祈り。

外は光と蝉の声に満ちていて
私は寒くて乾いた部屋にいる
幸福な幽霊みたいに
作者 春町 美月
──コロナが見せてくれる現代人のあり方。

ぼつぼつと
生きるカメにも
にじむあせ
作者 十三間
──無言の亀にも人知れぬ苦労あり。

西瓜もぎ
子どもの頸をすげ替える
作者 西春奈
──スイカはちょうど子どもの首の重さなのか。身体感覚が見せてくれる幻想。

泣き終わったあとの
バスタブが広い
作者 うすしか
──誰もが納得のいく感覚の発見。

月の夜の喧嘩の作法教えをり
作者 亀山こうき
──定型のしとやかさの中に新鮮な思考をねじ込む。

いーよ、いーよ、いーよ
うーん……
許可と思案を繰り返す
ツクツクホーシ
作者 春町 美月
──そうか、ツクツクボウシは許可と思案をしていたのか!知らなかったなぁ。

行かれましょう。
更けるまでに謳歌
浅き宵、
転がしても転がしても
作者 来栖 優
──転がされるのは我が身か賽の目か、はたまた運命か。

八月が終わる
卵に黄身ふたつ
作者 細村 星一郎
──小さな驚きに、ふいに気づく微細な宇宙の巡り。

手を上げた方も痛いと
泣きながら主張するやつ
返り討ちにす
作者 弐号
──言い訳、へ理屈の多い世の中を一刀両断。


◎西躰かずよし

 作品から夏という季節が垣間見えるものが多くあった。生きていることと地続きの場所で作品は生まれるのだから、当たり前かも知れないけれども。俳句、詩といったジャンルを越えて、惹かれる作品があった。特に印象にのこったものについて。

扇風機だけが音である
世界に
たったひとつの祈りはあった     音無 早矢

「扇風機の回る音だけの世界」と書かず、「扇風機だけが音である世界」と書くことで、それは興味深いものに変わる。そこにだけ祈りが存在するのであるが、だからこそ祈りは切実なものとなる。「たったひとつの」という説明を加えるかどうかは判断が分かれるかも知れないが、これはこれで成立していると思う。

友人と云うには遠い人の自死     ベロニカ

 「友人と云うには遠い人」という言い方は、その人との関係を読者に自由に想起させるような効果を生む。読み手は、仕事の同僚、親戚、同級生、学校の先生と、それぞれに遠い人を想起する。この作品がリアルに感じられるのはその言い方にあるだろう。読み手はそれぞれが想起した人の死にばったりと出会うことになるのである。

寝転がる波に巻かれて
サンダルは
私の知らない青さまで行く      伊丹真

寝転がる波、サンダル、私の知らない青さ、それぞれでは単なる感傷の断片にしか見えないが、通して読むと、そこに、みずみずしい物語が展開される。私の知らない青さまで行くことは、作者の願望のようにも読める。

小説を読んでるうちに
日が暮れて
薄闇の部屋は
ニベア缶の青            春町 美月

 ものに語らせる方法は俳句ではスタンダードであるが、短詩のなかにそうした技法を取り入れたかのようにも見える。読者は作品に導かれて、人物の動作から、その日の移ろい、部屋の様子、そして最後にニベアの缶の青へと行き着く。そのとき「ニベアの缶の青」は、作者のアンニュイな一日を映しだす鏡ともなるのである。

一時停止線の白さ夏の果       亀山こうき

 俳句は3音でいろんなことができるので「一時」という説明的な言葉をあえて入れる必要があるのかとも感じられるかもしれないが、一時停止線とまで書き切ることで、あの白線が思い浮かぶということがあるだろう。より具体的に書くこと(たとえば先の「ニベア缶の青」とまで書くことのように)で白や夏の果てという言葉が生きたものとなっている。

八月が終わる
卵に黄身ふたつ           細村 星一郎

「八月が終わる」というつぶやきの後に、二つの黄身を見たときの驚きが置かれる。この驚きは二つの黄身の卵を割ったという非日常性のみに由来するのものではないだろう。非日常性を介することで、卵は単なる食料としてのそれではなく、ふたつのいのちという側面を与えられるかのようである。季節の終わりと、卵といういのちの終わりに同時に出会ってしまったときのような驚きが、ここには表現されているように思う。


◎野木京子

今月もよい詩が多いです。刺激を受けつつ、楽しみつつ、皆さんに併走し続けています。
特に心に残った作品を以下に。

枝を拾って名前を書く
刺すための形をしている         藤色

*愛情と憎しみが波のように寄せては返す。二行目を読んでどきりとする。〝刺すための形〟をしているのであって、刺す道具ではない。〝形〟という一文字に、断念も隠れているようだ。

心が折れる音を聞いた
なかなかでかい音だった         加藤 美紀

*ユーモラスな感じもあるけれど、心が折れる実感がともなっていて、かなり痛い。したたかに打ちのめされたあと、ひとりで苦笑している映像が見えるようだ。

あの朝も
こんな
晴れやかだったのか

三輪車に乗る少年
ひとり                 はすた

*8月6日の投稿。広島平和記念館で三輪車の展示を見たことがある。三歳だったその子は、被爆し、全身にやけどを負い、その夜亡くなった。三輪車に乗る小さな子を「少年」と呼ぶのは、自己の投影でもあるからだろう。

道端の死をそっと跨ぐ季節        伊丹真

*あちこちに転がっているセミの死体を、人々は無造作に、あるいはおずおずと跨ぎ越す。セミの死体という小さな存在から、「死」という大きな概念につなげた。

夏期講習
行きと帰りで
小麦色                 桜咲

*海やプールで楽しく遊んだかのような小麦色の肌。猛暑で、大変だった行きと帰り。ユーモラスでありながら、ちょっとほろ苦くて淋しく、でもこれも夏の良い思い出で、ほんのりした気持ちになる。

夢の引き出しを
閉め忘れていたみたい
枕に頭を乗せただけで
夢が溢れ出た              板倉萌

*夢は、寝ていないときはいったいどこに隠れているのだろう。脳の奥に秘密の引き出しがあって、そこに隠れているのだろうか。飛び出すタイミングをねらって、夢はいつも引き出しのなかで、うずうずしている。

カムパネルラが
川に流された夜の
橋を踏む大勢の足音が
耳に残ってる気がする          春町 美月

*宮沢賢治『銀河鉄道の夜』は最初から最後までどこも印象的だが、カンパネルラが溺死したらしい最後の場面も、心に刺さる。生と死の境界を渡る橋の上で、ジョバンニが走る足音も響いている。

蝉しぐれ今日も明日も蝉しぐれ
おなじものなどなにもないのに      金澤 春栞

*そういえばそうだな、と読者は発見する。蝉しぐれは、昨日も、去年も、まつたく同じに聞こえた。でも、去年のセミはずいぶん前に死んでいるし、昨日のセミだってもう死んでいるかもしれない。同じに思えても、わたしたちは変化のただなかにいる。

透明な
一本の樹になりたいよ
いつか
ふたたび
空へ還ると               佐藤 美貴子

*大きな樹木は、地下世界から、地表を通り、空へと幹を伸ばしている。透明な樹木は、境界を越え、時間も越えて存在している。人間も、未生から生まれ出て、現世を過ぎて、やがて天上世界へ返っていく。人間だって境界を越え、時間を超えていく。

後ろ向きねと言われましても
僕の目はどうしたって前に
ついているわけでして           佐々木佑輔

*誰の言葉だったっけ。ボートを漕ぐとき、前に進むためには後ろを向かなければならない、と。だから後ろ向きはそれほど悪くはない。じりじり遅い歩みであっても、少しずつ確実に前に進んでいる。


◎秋亜綺羅

新型コロナの夏と、終戦記念日についての投稿が多かったような気がする。35文字という制限を不自由と考えないで、少ない言葉で素敵な詩を編んでほしい。言葉が好きでたまらないという人の詩句は、ユーモアたっぷりで、開かれている。

  空の青さに飛び込んで
  溺れて消えてしまいたい

  久しぶり
  と五歳児に言われて口籠る
  時間の感覚が一致してるか

  九十歳のおじいさん
  「いやあ四十肩に
  なっちゃって」
  と半世紀さばよむ

  虫 金魚 ハムスター
  墓は大概 アイスの棒

  人間という
  いずれ死ぬ病

  いいね、から
  進まぬ
  恋の物語

  月間佳作数三位が
  嬉し過ぎて
  髪を切ることにした

 とか、楽しい。言葉を軽く積むことができるのは才能なんかじゃなくて、時間をかけて何度も考える推敲だ。即興かなと感じるものほど、吟味されていることが多いものだ。
 いっぽう、言葉の並べ方の才能なのだろうか、意味が完全には分からないけれど、不思議で捨てがたい作品もあった。

   きょうという
   解かれていない
   問いのため
   壊れた帽子屋
   うごきはじめる

   秋燕棺に煙草入れて去る

   柔らかい時計
   追いかけない仲間
   踊らない椅子
   赤いクレヨン

   焼きプリンの底に
   夏を追い払う
   月が潜む

   人の優しさに
   触れたら死にたくなる
   雲とまじって
   消える飛行機

 など。巧みなのだと思う。よく、抒情詩というと近代詩のように思われがちだけれど、新しい抒情を、若い詩人たちは創り出しているのだと確信する。
 ほかにも紹介したい作品は多かった。
たくさんの人のたくさんの投稿を期待しています。とても楽しく読ませてもらっています。


◎中山俊一

金魚に指かませてにやける父 
             長谷川柊香

 父の父じゃない顔というのは、子にとって何か強烈なインパクトを持って降りかかる。当たり前のように父にも幼少期は存在するが、子にとってそれが浮き彫りになる瞬間には恐怖にも似たようなものを感じる。この句にはその生々しさが伝わってくる。絵面としての可愛さに自虐的な行為ににやける父というアンバランスな加減が良い。

遠くで雷
自転車をこぐ足が
何かの瞬間で
つりそうな恐怖
        桜咲

 遠雷は夏の季語として古くから詩歌に使われてきた言葉である。この言葉には何か不穏な予感がある。黒い雨雲がこちらに迫ってくる中で懸命に自転車を漕ぐ少女の姿が目に浮かんだ。
 この詩の面白さは、遠雷の恐怖より足がつりそうなことに恐怖を抱いている肉体的なリアリティにある。しかも、それがさらっと表現されているから良い。実体験に基づく迫力だなと思わせてくれる。
 また、この詩が【遠くで雷自転車をこぐ足がつりそうな恐怖】であれば佳作には残らなかっただろう。【何かの瞬間で】というのがポイントで、既に差し迫った状況のなか遠雷以上のひりついた瞬間が来ることを想像させるからだろう。


◎杉本真維子

「電灯の下/檸檬を剥き居り/微かに霧散する、命」
一個のレモンの孤独と、それを剥く一個の命の孤独が、電灯の下に照らし出されている。不可視のうちに噴き上がるレモンの飛沫が生々しく、生命のエネルギーを露出させている。
「LINEより/狼煙をあげたい/私がここにいることが/ありありと伝わるように」
ストレートにこう言ってみることも必要だと思えた。「LINE」と「狼煙」という一見かけ離れた言葉の接合に意表を突かれた。
「途中まで/わたしも一緒に乗って/送ってくから/茄子の牛は大きめにした」
亡き父への親しみと、それゆえの深い哀しみが伝わるが、そこに〝大きめの茄子〟というユーモアが加えられ、奥行きが生みだされている。盆の送迎のための往復が、言葉の往復の道を切り拓き、そこに亡き父と子の交流がたしかにある。
「やりきれない/巻き貝の残響よ/通り過ぎてく/船ばかりです」
ジャン・コクトーの「耳」(「私の耳は貝の殻 海の響きを懐かしむ」)をどこか彷彿させる。さびしさが際立ち、印象に残った。
「あの日の今日/誰かのかわりに 今、水を飲む。」
言うまでもなく、「あの日」とは原爆の日のことだろう。こんなふうに、私たちの喉は、身体は、「あの日」を直接感じることができる。私たちはもっと自分の身体の力を信じてもいい。
「扇風機だけが音である/世界に/たったひとつの祈りはあった」
自分の胸のなかの「祈り」は自分でもなかなかわからないものだ。それがあるとき、ふとわかる。何気ない、日常のなかで、目覚めるようにわかる。その瞬間をうまく切り取っている。
そのほかの佳作は以下のとおりです。来月もお待ちしています。
「宿題に/慌てる子もない/八月の三十一日/旗振り当番」「向日葵や喪服の群れとすれちがう」「へその緒を切ったら/痛いのはだれだ」「送り盆/茄子の牛で帰る父/茄子好きだから/食べてるんじゃないかな」「最近シュークリームに似てきた父」「昭和三年広島生/原爆の話/「もう思い出せない」/と思い出さないように話す」「そっと大きな雪玉を/転がすように/まるく生きたい」「鬼灯が実は手花火してました」「枝を拾って名前を書く/刺すための形をしている」「病室と反対側の/ランドリー/違う顔した/夜景を見ている」「シャーペンの/シャーは昨日も聞きました。」


◎浦歌無子

今月も多くの心動かされる作品と出会うことができました。
特に印象に残った作品より。

熱帯夜
ふたりの間で交わされた言葉が
ふたりとも望んでいない方向へ
舟を押す               春町 美月

「舟」はどこに向かおうとしているのか。言葉が導いてしまう未来がある。「ふたりとも」が「望んでいない」というところに、一度放たれた言葉のとりかえしのつかなさを思います。

扇風機だけが音である
世界に
たったひとつの祈りはあった      音無 早矢

日常の身近なものから奇跡を見出した瞬間が描かれているように思いました。

カーテンを開けた時
誰かの朝になりたくなった       佐々木佑輔

窓の向こうに晴れわたったすがすがしい朝が広がっていたのでしょう。まっすぐですこやかな願いに、こちらの心にも光が差し込まれるようです。

乗せてくれライダー
君のエンジンと替われるくらい
泣きじゃくるから           伊丹真

発想のおもしろさ。最初の呼びかけもいいですね。泣くという行為が苦しいばかりではなく、先へ進むための原動力になるかのようで、泣きたい気持ちを抱えた人たちが励まされるような作品だと思います。

ばちんと
初めて電球が切れて
この町での暮らしが
部屋を照らした            佐々木佑輔

「電球が切れて」、部屋の中も外もいつもの表情と違って見えたのでしょうか。窓の外から「この町」の灯りが部屋に入ってきたのか、部屋の中にある「この町」で得たものが光を放っていたのか、はっきりとはわかりませんが、「この町」で大切な時間を過ごしていることが静かに伝わってきて、気持ちの輪郭がやわらかくなるような一篇です。

解いた折り鶴を戻せなくなる     長谷川柊香

「解いた折り鶴」はもう鶴ではなく、紙は折り目のついていなかったときに戻ることもできない。その紙を前にした<私>の内面がじわじわと伝わってきます。

音だけの花火をきいて迎え盆     ベロニカ

「音だけ」というのが目には見えないけれど、自分の心のなかに確かに存在している彼岸の人と重なります。

きょうという
解かれていない
問いのため
壊れた帽子屋
うごきはじめる           佐藤 美貴子

「きょう」が「解かれていない問い」であるという比喩の鮮やかさ。『不思議の国のアリス』の、時間が止まったため延々とつづけられているお茶会のなかで時を語っていた「壊れた帽子屋」が、お茶会を抜け出しその答えを見つけにいこうとしているのでしょうか。アリス番外編の帽子屋物語がはじまるかのようで惹かれました。

ダメージに無垢の名をつけ
わたくしの
桃の表皮を
そっと剥くのだ           佐藤 美貴子

「無垢」と「剥く」。音と意味の響き合い。桃はダメージを受けやすい果物、ほんのすこし触れただけでも傷んでしまう。自分の傷を癒そうとする繊細な手つきがイメージされました。

蝉しぐれ今日も明日も蝉しぐれ
おなじものなどなにもないのに    金澤 春栞

今日鳴いている蝉は明日にはもう死んでいるかもしれない。同じように聞こえてきても明日の蝉しぐれは今日とは違う蝉しぐれ。この世の誰もが一回限りの生を生きている。

植物の名前覚えてる
ひとになる
世界を燃やしても許されるから    真島

どこかぎこちない言い回しで書かれた「植物の名前覚えてる/ひとになる」ことが「世界を燃やしても許される」ことにつながる詩のなかの論理に惹かれます。

好きな歌を
君に教えてしまうとき
窓を開いて聞く風の音        桜望子

自分の「好きな歌」は大切な秘密のひとつ。「君」に秘密を明かすことのおそれと喜びが伝わってきて、震える想いがまぶしく感じられました。




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5. 2020 年度 口語詩句賞 応募要領

・ 2020年度 口語詩句賞応募要領公開しました。


6. 2021年度前期 口語詩句奨学金応募要領

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