ご挨拶 - なぜ口語なのか

 自らを言語で表現しようとする時、それは自らが考えるときの言語でなければならない。言語がなく考えることはできない。考えるときの言語は物心ついたころから口語である。フランス語で考える人はフランス語、英語で考える人は英語での表現が本来である。言語には、匂い、臭い、湿度、温度、体温、生理、憎しみ、悲しみ、生い立ち、先祖、社会、その人を存在させるに至ったすべてが内包されている。ですから、口語の品詞による、詩、俳句、短歌、川柳、アフォリズム、を提案したい。ご自身のサーバーとして一般投稿のみのご利用の方も、新人賞、奨学生をお考えの方もふるってご投稿戴けますようお願いいたします。


目次
1. 奨学生選考結果
2. 新人賞・奨励賞選者評
3. 選者総評(翌月15日締切日の翌営業日に掲載します。)
 1)2020年5月選者総評
4. サイト概要
 1) サイト閲覧のみの方
 2)会員登録なさる方
 3)一般投稿なさる方
 4)奨学生投稿なさる方
 5)コンクール投稿なさる方
 6)月間投稿ランキング
 7)年間累計投稿ランキング
 8)月間佳作数ランキング
 9)年間累計佳作数ランキング
 10)月間投稿佳作一覧
 11)過去の作品検索
 12)結果発表
5. 2020年度 口語詩句賞 応募要領
6. 2021年度前期 口語詩句奨学金応募要領


1.  奨学生選考結果
  ・ 選考結果   

2. 新人賞・奨励賞選者評
  ・ 林 桂
  ・ 西躰かずよし
  ・ 秋亜綺羅
  ・ 杉本真維子
  ・ 龍 秀美
  ・ 選考結果   


3. 選者総評(提出順)

1)2020年5月選者総評(提出順)

◎林 桂

 ●加藤美紀●
木造アパートのベランダに
産着と小さなこいのぼり

どうか健やかに

*「どうか健やかに」はあまりにもストレートな言葉で、イメージが広がってゆかないとは言える。しかし、小さな木造アパートから始まる若い夫婦とその子どもの暮らしを思えば、祈りに似たストレートな言葉こそ相応しいのだろう。

 ●ひかるちゃん●
ベランダから見える
画用紙ほどの

それでも晴れは幸せ

*画用紙ほどの空は、ビル群に切り取られた小さな四角い空のことだろう。その四角が真っ青に染まっている。その小さな幸せ。

 ●春町美月●
くちなしの花びらみたいに
ひんやり白い足の甲

*「ひんやり白い足の甲」という言い回しでは自分の足ではないだろう。誰のか。人の足の甲を見つめるというのは、日常的なアングルにはそうそうなさそうだ。身を横たえている人か。「くちなしの花びらみたいに」という比喩と相まって、動きをとめた足が眼前に投げ出されていそうである。

 ●白シャツ●
指通りのいいさらさらとした黒髪を
高く結び
毛先が小さく揺れていた四月

*「作者」の若き日の自画像だろうか。若く美しい髪をポニーテールに結び、四月、入学の晴れやかな日の一こまのように感じられる。「わたしが一番きれいだったとき」なのかもしれない。(最後に作者を参照したら十五歳。現在の自画像でしたね。訂正)

 ●細村星一郎●
人形に名前をつけた
夏だった

*幼い日の自画像か。夏休み、人形の一人遊びのをしているのか。名前をつけるとは友だちをつくることだろう。「萍の繁殖のさま調べては孤独にをりしかの夏休み」(久葉尭)。

 ●山田洲作●
暑い
とかげが青い

*炎暑。瑠璃蜥蜴もじっと動かないまま。無風だろうか。

 ●春町美月●
結局
カラスアゲハを、
あの大きな黒い蝶を、
捕まえられたのだっか?

*「カラスアゲハ」を更に「あの大きな黒い蝶」と言い換え、畳みかけている。その蝶に巡り会った強い印象は何時までも残っているが、その結末は記憶に残っていないのだ。その後の捕まえた記憶の無い印象だけならば、恐らく捕まえられなかったのだろうとは思うのだが。

 ●宇田リンゴ●
ぽむぽゆるるるる—串団子

*「ぽむぽゆるるるる—」が串団子の形に見えてくるから不思議。よくぞこんな言葉を発明(?)したものだ。

 ●イシバシオサム●
ふふふつり ふふふ ふつりと
ひるさがり

*これも摩訶不思議な作品。「ふつり」は何かが切れるさまの表現と思われるが、何が切れたともしれない。暑い昼下がりの中、何かが切れたことはたしかなのだろう。

 ●うすしか●
ほっとくと鳥になっている子供

*「子供」の本性を言い止めているように思う。ちょっと眼を離して、ひとりにしておけば、子供は何にでも変身する。

*五月は投稿数が減り、少し寂しい月になりました。自粛生活の中では、日常的な素材も限られて、書くのが難しい状態が生まれているのだろうか。六月は新たな刺激の月となって、多くの佳作が生まれることを願っています。


◎龍秀美

俳句や短歌などの定型は強いけれども、それだけに縛られることもあるでしょう。口語詩句ならではの自由な発想をできるだけ尊重したい。以下、印象に残った作品を挙げてみました。

藁を食む
馬の口が描く軌道は
メビウスの輪
作者 春町 美月
──目に浮かぶ図像から鮮やかな意味を取り出してしまうテクニック。

カボチャに性別をたずねますか
そういうことです わたしたちも
作者 江沼翠子
──自然としての人間は存在としても等価なことを再認識させてくれる。

自分の連続性は
記憶が担う
記憶も記録もない私は
どこからも続かない
作者 眠りねずみ
──人間の脳・意識という不確かなものに拠っている私たちの危うさ。

カーネーション
カーネーション
三拍子かな
母の日は
作者 ひかるちゃん
──どんなものにもリズムがある。カー/ネー/ションというワルツのリズムの楽しさを発見。

ピーマンの空洞だけが頼りです
作者 合川秋穂
──ひょいと体をかわされてしまうような意外性と楽しさ。何もないという価値もある。

もういない人の眉毛の長さなど

定規で測ってみる五月
作者 真鶴
──非在空間での「定規で測る」という具体的な所作が新鮮。そのとき、亡き人と一体化できる。

つぎつぎと死ぬ金魚鉢洗う夜は
作者 亀山こうき
──軽い後悔と共に消えていく小さな希望の数々。死ぬのはだれか。

無口だが動作がやたらと
やかましい
黙っているのに
「お父さん、うるさい」
作者 加藤 美紀
──言葉にならない言語はたくさんある。動作、目つき、息遣い。むしろそれらの雄弁さ。

ふふふつり ふふふ ふつりと
ひるさがり
作者 イシバシオサム
──ふつりと途切れるのは意識か。眠い昼下がりにぴったりの擬音の面白さ。

ほっとくと鳥になっている子供
作者 うすしか
──美しい一行。子供はそういうもの。

座標からあしの一本迷い出て
傾くものはついに倒れる
作者 西春奈
──誰も否定できない数学の確かさから、それでも“あし”が出てしまう時がある。数字と身体の関係はまだ謎だ。


◎西躰かずよし

今月も様々な作品が並んだ。目に留まった作品について少し。

ピーマンの空洞だけが頼りです          合川秋穂

 ピーマンというちっぽけなものの空洞だけをたよりにせざるを得ない書き手の屈折とユーモア。

遮断機が降りる
小さな流れ星                  細村 星一郎

 たとえばこれは父親にかたぐるましてもらっている子どもが詠んだような視点から書かれているようにも見える。遮断機の向こうのちいさな流れ星。それをみるちいさなまなざし。

ていねいに印刷された夜の音           音無 早矢

 夜の音という言葉を、ていねいに印刷されたとイメージしやすい言葉で修飾することで夜の音そのものを表現することに成功している。

ゆるやかな自殺
のための喫煙所
準急ですら止ま
らない駅                     髙良真実

 世界の不条理についての記述。ぎりぎりの心情をうかがわせるような改行。

ほっとくと鳥になっている子供           うすしか

 ほっておくと鳥になってしまうという危うさの描写によって、子供という不安定な存在をうまく表現している。

静かなる帝王切開夏の月              亀山こうき

 帝王切開と夏の月という言葉の組合せ。塚本邦雄や藤原月彦の耽美的な世界にも通じるような言葉を用いて表現することは、口語では難しくもあるがうまくまとめている。

水曜日に生まれて
それがあたしには
とてもふさわしいことのように
思えるの                      春町 美月

 水曜日に生まれたというとりとめもないことを自身にふさわしいことと思うのはある種の開き直りだろう。そしてそれが、自身をささえることも、さびしくすることもあるだろう。

なで肩に生まれて月になる話             阿部 圭吾

 月になることがささやかな希望のようにも読める。宮沢賢治のよだかの星にも通じるような。


◎野木京子

 一瞬立ちどまり、考えさせられた詩に、今月は魅かれることが多かったように思います。よい詩が多く、選びながら大きな刺激を受けています。
佳作として選んだなかで、特に心に残った作品を以下に。

父は記憶を
おかきの缶に入れて
頭の中にしまっている
最近蓋が開きづらい           春町 美月
  *記憶は物質ではないので形がない。それを固いブリキ缶に例えている面白さ。高齢の人の物忘れは、記憶をなくしたのではなく、頭の中にちゃんとあるのに蓋が固くて開かないだけなのだと言う、心根の優しさ。

匣に仕舞われて
あの娘にも忘れられた。
それでも、私の顔は笑っている      羽星二
  *何のことだろうと立ち止まりました。おひなさまのことですね。来年の桃の節句まで、真っ暗な箱の中で微笑みを浮かべている顔。それは不気味ではなく、けなげで、いじらしい。再会を楽しみにして、暗闇の中でも流れている時間がある。

木の皮をはがして夏の箱に入れる     細村 星一郎
  *上のおひなさまの「匣」は物質として存在する箱だが、この詩の箱は、どこにも存在しない、だけど世界のどこかにあるかもしれない、その季節の薫りや気配をしまってある箱。「はがして」に、時間の推移という無慈悲さが描かれてもいる。

今は
お湯の中に
ふわふわと浮いたような
地獄   白シャツ
  *災害のとき、人は必死に逃げる。ときには泥だらけになりながら。コロナ禍は、思いもかけない大きな災害で、地獄であるはずなのに、人は家の中で静かに過ごしている。「今は」で始まり、恐ろしいのはこれからだ、と暗示しているようだ。

久方の夜に眺める黒い月    井脇 浩之
  *新月を見ることはできない。見ることはできなくても、確実に夜空に存在はしている。見えないけれども存在するものを見つめている視線。

夢の中何度も殺したきみと会える      たかせ
  *愛憎相半ばする。二重の意味で受け取ることができたので面白かった。断念するために夢の中で幾度も否定した「きみ」に、現実で会えることの喜び。あるいは、否定し、忘れたはずの「きみ」に、夢の中だけでは会うことができるという喜び。「会える」のは現実世界なのか、夢幻世界なのか、合わせ鏡のような二つの世界。

キラいな人は
助けてくれる人
かも・・
あなたでなくて大事な人を         桜咲
  *嫌いな人は私のことを助けてくれないだろうし、助けてほしくもない。でも、人の縁は巡り巡って、その嫌いな人が、私の大事な人を助けてくれる日があるかもしれない。なかなか深い人間肯定と思う。嫌いを「キラい」とカタカナにして、嫌いの重力を軽くしているのもよかった。

こどもの泥玉砕いて夕飯         うすしか
  *遊びの時間は終わったよ、と泥玉を無慈悲に砕いて、飯を食う現実の時間に戻るという意味か。黄金の幼少時代に幕を下ろして現実を生きていくという、断念の気配も感じられる。

水田を泳ぐ合鴨たちよ

ひと夏の命にするのは私です       西春奈
  *生きることの残酷さが描かれている。有機農業である合鴨農法。稲が実ると合鴨は食肉処分される。私は神でもないのに、鴨たちの命運を決定している。生きるとはきれいごとではすまない。

水の中から
絹ごし豆腐すくう
おじさんの手のひら            春町 美月
  *水、なめらかな豆腐、おじさんの無骨な手が順々に見えてくる映像詩。そして、水温と、豆腐の感触と、おじさんの体温も感じる、広がりのある味わい。

我が弟のお下がりを着こなす息子
うっかり誰だかわからなくなる       加藤 美紀
  *息子は母親である自分のものだと思っていたのに、成長したら自分の手を離れてしまった。もはや、誰だかわからない存在になりつつあるのだ。

畑打てば真っ二つの石の断面よ       長谷川柊香
  *「真っ二つの」のところで、かきーんという音が聞こえるようだった。


◎杉本真維子

今月選んだ作品のなかには、情景描写の域を出ないものもいくつかあった。それでも、その一歩先がうっすらと見えているものは、期待を込めて佳作に入れることにした。
「青いスカートの下からのぞく/イカみたいな足首」「コンビニの袋はたぶん生きている/野良コンビニの袋とかいる。」「全裸で猫を洗ってた/どうするの/春が戻ってきたら」「木の皮をはがして夏の箱に入れる」「今からだが半分虹の中にいる」「一目見て可哀想というけど/うちの犬は/自分の車椅子を/とても気に入ってますよ」「感情を押さえるように鮎を獲る」「工作のセロファン/お三時のゼリー/教会のステンドグラス/懐かしい色つきの光」「転んで/痛くない。/と言い聞かせられた少女が/痛かった!/とおじいさんに怒ってる」「逸る獅子となって語幹//互換/はやく、はやく」「アセトアルデヒトとの/たたかいがおわらない」「誰にも会わない日に/目を閉じて歯を磨く/口中の、ブラシとの境/微かに私はいる」「選べなかった未来を想う/包丁でカブを切る刹那」「暑い/とかげが青い」「水銀は毒だと父が言い/硝子は危険と母が言った/今も水銀式体温計が/少しこわい」「逆再生みたいに 雨あがる」「榎本は牡蠣食う/腹を下しても食う//くらい目が少しかがやく」「読まずに食べる手紙は禁断の味/とヤギがいう」「隣の家のオカメインコ/桃色の頬をして/年がら年中/グリュグリュ/何か呟いていた」

「全裸で猫を洗ってた/どうするの/春が戻ってきたら」は、重い冬を脱いだ春の解放的な気分のなかに、後に引けない、というかすかな緊張感がよぎる。むきだしの命を感じさせる。「工作のセロファン/お三時のゼリー/教会のステンドグラス/懐かしい色つきの光」は、色つきの光は幼年期ならではのもの、という気づきが新鮮だった。これらの言葉の先にあるものもぜひ書いてほしい。「誰にも会わない日に/目を閉じて歯を磨く/口中の、ブラシとの境/微かに私はいる」は、意外と共感を得る作品ではないかと思う。こんなふうに小さく「私」は隠れている。「暑い/とかげが青い」は、コントラストが美し。とかげの青さが際立つ。「水銀は毒だと父が言い/硝子は危険と母が言った/今も水銀式体温計が/少しこわい」は、家族という関係の危うさと、言葉の力。「榎本は牡蠣食う/腹を下しても食う//くらい目が少しかがやく」は、唐突に知らない固有名を出されることで、くらっと眩暈のようなものが起こる。新しい手法ではないが、このときの眩暈は詩の大事な力になる。「隣の家のオカメインコ/桃色の頬をして/年がら年中/グリュグリュ/何か呟いていた」は、地味ながら、グリュグリュというオノマトペが強く印象に残った。過去形がさりげなく効いている。


◎秋亜綺羅

口語詩句は、ことばが大好きになれる、新しい文学の形です。幼かったころ、絵も描けないのにクレヨンをもらって、いろんな色を並べるのが楽しかったですよね。そんな弾むような気持を並べてもらえば、素敵な文学になると思います。俳句とか、短歌、現代詩、小説とかに分類されてしまった世界にこだわらない、新たな実験を期待しています。
5月の投稿作品で、気になった作品たちを紹介します。

ミミズだって
オケラだって
見たことない人
増えてきた

絶対なんて絶対ないというひと
否定を否定するひと
私は
どうやって生きよう

好きの反対が無関心だったら
嫌いの反対は
誕生日ケーキとかかな

「まるでうなぎの寝床だな」
のたとえが
てんでイメージできない

生き返ったら
知らない奴が
友人代表で泣いてた
知らない奴が

あと一歩って
自分の歩幅も知らないくせに

楽しいですよね。今月も、いい作品がたくさんありました。コロナ疲れに負けず、じめじめ、暑さにも負けず、ぜひ書き続けてもらいたいと思います。
とてもうれしく読ませてもらっています。


◎中山俊一

落雷にあわせてパフェを崩してく 
合川秋穂

崩れ落ちてゆくような哀しみを想像させるが、テーブルの上にあるパフェといういかにも幸せそうな食べ物が更にその哀しみを浮き彫りにしている。哀しみのなか自分の機嫌を取るためにパフェを注文したのだろうか。それともパフェを注文したときは幸せな気分で、落雷のような哀しみが突然やってきてテーブルの上のパフェを食べることなくただ崩しているのだろうか。なんとなく後者な気がしている。窓際の喫茶店、突如哀しみに打たれる姿が目に浮かんだ。

汗かいてマスク縫ってる
不思議な初夏  
加藤美紀

マスクを縫うという言葉は既に聞き慣れた言葉ではあるが、詩として改めて提示されたときその違和感、異様な響きに驚きがあった。マスクが冬の季語として使われるように、冬を連想させるその言葉のなかに、汗かいて や 初夏 という言葉が並べれると、この違和感がどんどんと増幅されてゆく。この静かな作業のなかに潜んでいる異常性がこの詩に輝きを与えている。


◎浦歌無子

「ソーシャルディスタンス」というほんの数か月前までは一度も聴いたことがなかった言葉が耳慣れたものとなり、人との距離にこんなにも気をつけなくてはならない日常が来ようとは思いもしなかった今、個人的なことで言えば、故郷との物理的な距離をこれほどまでに遠く感じたことはありません。けれど、物理的な遠さが心理的な遠さにつながるかというとそういうわけでもなく、逆に近づくこともあります。しかもそれは、この世に限ったことではない(亡くなった人との心的な近さ)、などなど距離に関して考えることが以前より増えました。
 そして、この場も距離を越えて、言葉に人に景色に出会える場所であるということを今まで以上に感じています。

ヘルメットからぽろぽろと夏の星       細村 星一郎

身近なものと遠いもの、別次元の組み合わせによって立ち現れた異空間に惹かれました。
「ヘルメット」を脱いだとたん、たくさんのちいさな星たちが零れ落ち、ホタルのようにまたたきながら漂って、あたりをやわらかく照らしている映像が浮かびます。

無知から生まれる恐怖。
そんなものに怯えるなら
明日のご飯を考えなさい。          加藤悠

恐怖心に打ち克つために「明日のご飯」を「考え」ることの有効性を信じている<私>の力強い言葉に励まされます。

皐月の空は
サイダーみたい
今年の空は
真っ白な天井                白シャツ

これまでは弾けるサイダーのように感じていた「皐月の空」が、現在の世界状況により、「真っ白な天井」になってしまい、そこに閉じ込められたように感じている<私>のいらだちや不安が伝わってきました。

ブロッコリー食べるたび
私のことを忘れようとしてね         たかせ

裏を返せば、「ブロッコリー食べるたび」に「私のことを」思いだしてねということ。忘れるためには思いださなければならないのだから。
屈折した強い思い。人の感情の複雑さは、やっかいでいとおしいです。

ピーマンの空洞だけが頼りです        合川秋穂

おかしみを感じるとともに、ちいさな「ピーマン」、しかも「空洞だけ」を「頼り」にしなければならない心のありように胸を衝かれます。

こどもの泥玉砕いて夕飯           うすしか

衝撃度で言えば、5月の作品のなかでのいちばんかもしれません。
本来こどもの楽しい遊びのひとつであろう「泥玉」が、「砕いて夕飯」にされるという不穏さ。口のなかに残る泥の後味にくらくらします。

火葬するように送られて
MRI                   加藤 美紀

実感のこもった比喩です。実際にMRIを取ったときの不安感を思いだしました。

アスファルトにこびりついた
チラシと排ガス
父に手をひかれ母を見舞った道        春町 美月

甦る記憶。不安な心で五感がとらえたものは、その不安を補強するかのようなものばかりだったのでしょう。書かれていない感情が痛いほど伝わってきます。

つぎつぎと死ぬ金魚鉢洗う夜は         亀山こうき

いろいろな読みができる作品だと思います。
鉢を洗っているあいだに金魚がつぎつぎと死んでいっているととらえると、<私>の行為が狂気じみたものにも見えてきますし、死んでしまった金魚に思いを寄せつつ金魚鉢を洗うことで、金魚だけではなくどこか遠いところの“死”をも弔っているかのようにも思えてきます。

しゃぐり
しゃぐり

土を踏みしめ森の奥              春町 美月

オノマトペが秀逸。生い茂った木に光が遮られ、湿った土がいつまでも乾かない薄暗い「森の奥」へ入ってゆくようすが伝わってきます。

読まずに食べる手紙は禁断の味
とヤギがいう                 春町 美月 

「手紙」が読まれなかった世界は、読まれた世界とは違う世界。失われた言葉のとりかえしのつかなさを思うと、それは確かに「禁断の味」なのでしょう。

祈らずに遠吠えで済ます            合川秋穂

「遠吠え」が祈ることの代わりに置かれていること、「済ます」という動詞の選択に、ユーモアと切実さとを同時に感じます。

大人ぶる十三歳みたいな金柑           村上 陽香

ころんとしてかわいいけれど、すこし苦みのある「金柑」、鮮やかかつなるほどと思える比喩でした。

他にもたくさんの心動かされる出会いがありました。
今月も心してそして楽しく読ませていただいています。



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5. 2020 年度 口語詩句賞 応募要領

・ 2020年度 口語詩句賞応募要領公開しました。


6. 2021年度前期 口語詩句奨学金応募要領

・ 2021年度前期 口語詩句奨学金応募要領公開しました。



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